ラルフ・ネヴィル (初代ウェストモーランド伯)

初代ウェストモーランド伯ラルフ・ドゥ・ネヴィルの生涯

初代ウェストモーランド伯ラルフ・ドゥ・ネヴィル（1364年頃 - 1425年）は、中世イングランドの激動期を生きた貴族です。父はネヴィル・ドゥ・レビィ男爵ジョン・ドゥ・ネヴィル、母はパーシー男爵ヘンリー・ドゥ・パーシーの娘モード・パーシー。彼は、後のヨーク朝の王となるエドワード4世とリチャード3世の曽祖父にあたります。

生い立ちと爵位

ラルフは、イングランドのダラムのレビー城で誕生しました。1388年に父の跡を継ぎ、ネヴィル・ドゥ・レビィ男爵となります。1397年にはリチャード2世の命により訴追派貴族の裁判に関与し、ウェストモーランド伯に叙爵されました。1402年には、ヨーク公エドマンド・オブ・ラングリーの死によって空席となっていたガーター騎士団の一員に選ばれています。

政変期の立ち回り

1399年、リチャード2世の従弟ヘンリー・ボリングブルック（後のヘンリー4世）がクーデターを起こすと、ラルフはボリングブルックに寝返ります。その後はヘンリー4世に忠誠を誓い、義理の叔父にあたるノーサンバランド伯ヘンリー・パーシーとその息子ホットスパーの反乱には加担しませんでした。1405年には、ヨーク大司教リチャード・スクループとトマス・モウブレー（婿の一人であり、ノーフォーク公ジョン・モウブレーの兄）の反乱を鎮圧する功績をあげます。1415年7月には、イングランドに留まり、ノーサンバーランドでスコットランド軍と戦いました。

後見人としての活動と晩年

1417年、ヨーク公リチャードの後見人となったラルフは、1424年に娘セシリー・ネヴィルをリチャードと婚約させます。しかし、翌年にラルフは死去。長男ジョン・ネヴィルが既に亡くなっていたため、ウェストモーランド伯位は孫のラルフ・ネヴィルが継承しました。また、別の息子リチャード・ネヴィルは遺産相続と婚姻関係を通じてソールズベリー伯となり、ネヴィル家はさらなる繁栄を迎えます。

ネヴィル家の家族構成

ラルフは二度の結婚をしています。最初の妻マーガレット・スタフォードとの間に9人の子供をもうけ、二番目の妻ジョウン・ボーフォートとの間には14人の子供を授かりました。

マーガレット・スタフォードとの子供たち

モード・ネヴィル：モーレィ男爵ピエール・ドゥ・モーレィと結婚。
アリス・ネヴィル：トーマス・グレイ卿、ギルバート・ランカスター卿と再婚。
フィリッパ・ネヴィル：ダクレ男爵トーマス・ダクレと結婚。
ジョン・ネヴィル：ネヴィル卿、ケント伯トマス・ホランドの娘エリザベス・ホランドと結婚。ウェストモーランド伯ラルフ・ネヴィル、ネヴィル・ドゥ・レビィ男爵ジョン・ネヴィルの父。
ラルフ・ネヴィル卿：メアリー・フェラーズ（ロバート・フェラーズ卿の娘）と結婚。
エリザベス・ネヴィル：修道女。
アン・ネヴィル：ギルバート・アンフレヴィル卿と結婚。
マーガレット・ネヴィル：スクロープ・オブ・ボルトン男爵リチャード・スクロープ、ウィリアム・クレッソナーと再婚。
アナスタシア・ネヴィル

ジョウン・ボーフォートとの子供たち

レディー・キャサリン・ネヴィル：ノーフォーク公ジョン・モウブレー、トーマス・ストレンジウェイズ卿、ボーモント子爵ジョン・ボーモント、ジョン・ウッドヴィル卿と再婚。
レディー・エレノア・ネヴィル：ブルクハーシュ男爵リチャード・ル・デスペンサー、ノーサンバランド伯ヘンリー・パーシーと再婚。
リチャード・ネヴィル：ソールズベリー伯。
ロバート・ネヴィル：ダラム司教。
ウィリアム・ネヴィル：ケント伯。
エドワード・ネヴィル：バーガベニー男爵。ウスター伯リチャード・ド・ビーチャムの娘エリザベス、ジョン・ハワードの妹キャサリンと再婚。
アン・ネヴィル：バッキンガム公ハンフリー・スタフォードと結婚、次にマウントジョイ男爵ウォルター・ブロントと再婚。
セシリー・ネヴィル：ヨーク公リチャードと結婚、エドワード4世、リチャード3世の母。
ジョージ・ネヴィル：ラティマー男爵。ウォリック伯リチャード・ド・ビーチャムの娘エリザベスと結婚。
ジョン・ネヴィル：早逝。
カスバート・ネヴィル：早逝。
トーマス・ネヴィル：早逝。
ヘンリー・ネヴィル：早逝。
ジョウン・ネヴィル：修道女。

ネヴィル家の繁栄と薔薇戦争

ラルフとその息子リチャードの代でネヴィル家は多くの貴族と姻戚関係を結びました。しかし、後の薔薇戦争では、ネヴィル家は敵味方に分かれて戦うことになります。エレノア、リチャード、セシリーの子孫は、パーシー家、スタンリー家、イングランド王家と姻戚関係を結び、現在に至っています。

参考文献

海保眞夫『イギリスの大貴族』平凡社、1999年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
トレヴァー・ロイル著、陶山昇平訳『薔薇戦争新史』彩流社、2014年。

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