ランボルギーニ・LM002

ランボルギーニ LM002

LM002は、イタリアの高級自動車メーカー、ランボルギーニが1986年から1993年にかけて製造、販売したオフロード性能を持つ4輪駆動車です。

概要

このモデルは、堅牢な鋼管スペースフレームを骨格とし、外板には軽量なFRPパネル、ドア部分にはアルミ素材を採用した複合構造のボディを備えていました。パワートレインには、当時のランボルギーニのフラッグシップスーパーカーであったカウンタック5000QVに搭載されていた5.2リッターV型12気筒「クアトロバルボーレ」エンジンを基本としながらも、様々な環境での使用を考慮した改良が加えられています。具体的には、ガソリンの質が良くない地域への対応、砂漠のような過酷な条件下での使用を想定した強化型エアクリーナー、酷暑地帯での性能維持のための大型ラジエーターなどが装備されました。この改良されたエンジンは、最高出力450PS/6,800rpm、最大トルク51.0kgm/4,500rpmを発揮し、車両総重量約2.7トンという巨体を最高速度206km/hまで到達させる能力を持っていました。

駆動システムには、副変速機付きトランスファーとZF製5速マニュアルトランスミッションを組み合わせたフルタイム4WDが採用されました。燃費効率を考慮し、状況に応じて後輪駆動での走行を選択することも可能でした。足元には、パンクしても一定距離の走行が可能なピレリ製の専用ランフラットタイヤ（「スコルピオ」サイズ325/65VR17）が装着されています。室内空間は、独立したシートが4席設けられ、後部には荷物スペースや、オプションで追加2名分の座席としても使用できるスペースが備わっていました。また、燃料タンクは290リットルという大型トラックに匹敵する大容量を誇りました。

一方、外観の武骨さとは対照的に、インテリアは極めて豪華な仕上がりでした。座席やトリムにはふんだんに本皮革が使用され、エアコン、高品質なオーディオシステム、厚みのあるカーペットなどが標準装備されるなど、当時の高級サルーンに匹敵、あるいはそれ以上の快適性とラグジュアリーさを実現していました。このLM002は、現在のプレミアムSUVというカテゴリーの概念を先駆けた存在として評価されています。生産は1993年に終了し、総生産台数は328台と非常に希少なモデルです。

開発経緯

LM002の開発の源流は、1970年代後半にアメリカのモビリティ・テクノロジー・インターナショナル（MTI）からの依頼を受け、ランボルギーニがアメリカ軍向けに試作した高機動プロトタイプ「チーター」に遡ります。「チーター」はリアミッドシップにエンジンを搭載する設計で、1977年のジュネーブモーターショーで披露されました。

その後、ランボルギーニは「チーター」を民生用に転用する計画を進め、1981年のジュネーブショーではプロトタイプ「LM001」を発表しました。このモデルは「チーター」と同様にリアミッドシップレイアウトを採用していましたが、エンジンはアメリカン・モーターズ（AMC）製の5.9リッターV型8気筒に変更されていました。

さらなる改良として、ランボルギーニ製V型12気筒エンジンをリアに横置き搭載したプロトタイプ「LMA」を経て、エンジンを車両前方に縦置き配置する設計に変更されたモデルが登場しました。これが「LM002」として1982年に発表され、最終的に1986年から市販が開始されることになります。

LMシリーズのプロトタイプとしては、LM002の後にフォルクスワーゲン製3.6リッターターボディーゼルエンジンを搭載した「ランボルギーニ LM003」、そしてマリーニ・ランボルギーニ製のパワーボート用V12エンジンを搭載した「ランボルギーニ LM004」が存在しました。

モデルとバリエーション

LM002

1982年の発表当初は、4,754ccのV型12気筒エンジンを搭載していましたが、1986年の市販開始以降は、カウンタック5000QVと共通の5,167cc V型12気筒（4バルブ）エンジンが採用されました。

LM002 エステート

「LM002 ブルネイ」とも呼ばれるこの特装車は、1989年にブルネイ王国のハサナル・ボルキア国王のために製作されました。イタリアのトリノにあるボディショップで架装が施され、後部を延長して室内空間を拡大し、ハイルーフ化によって居住性を向上させました。定員は7名に変更されています。当初は白に塗装されていましたが、後にライトグリーン、最終的にはシルバーへと塗り替えられました。

LM002 アメリカーナ

「LM002 アメリカン」の通称で知られるこのモデルは、1992年の北米国際オートショーで最終仕様モデルとしてお披露目され、60台限定で販売されました。主にアメリカの排出ガス規制に対応するため、ディアブロとほぼ同様の電子式燃料噴射装置を備えたエンジンが搭載され、最高出力は492PSに向上しています。外観では、専用のボンネット、バンパー、デカール、OZ製ホイールが与えられ、インテリアにも特別な手が加えられています。

モータースポーツ活動

LM002 エヴォリツォーネ (1988年)

「LM002 パリダカール」とも呼ばれるこの車両は、過酷なパリ・ダカールラリーへの参戦を目指して開発されたレース仕様車です。合計2台が製作され、白い車両はランボルギーニのファクトリーが手掛け、オレンジ色の車両はスイスのレーシングチームが製作しました。WRC世界チャンピオン経験者であるイタリアの伝説的ドライバー、サンドロ・ムナーリがステアリングを握る計画もありましたが、残念ながらプロジェクトは実現しませんでした。1987年のファラオ・ラリーでデビューする予定でしたが、スポンサーの撤退により不参加となり、翌1988年のギリシャで開催されたラリーではマリオ・マヌッチがドライブしましたが、マシントラブルでリタイアに終わりました。これを最後にワークスとしてのラリー活動は終息しましたが、その後も数台のプライベーターがLM002でダカールラリーに挑戦しています。しかし、いずれの車両も完走に至らず、リタイアという結果に終わっています。

関連項目

ランボルギーニ・チーター
ゼネラルモーターズ・ハマー
* ランボルギーニ・ウルス

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