ラ・ヴァルス

舞踏詩『ラ・ヴァルス』

『ラ・ヴァルス』（仏: La Valse）は、モーリス・ラヴェルが1919年から1920年にかけて作曲した管弦楽曲です。フランス語で「ワルツ」を意味するこのタイトルが示す通り、19世紀末のウィンナ・[[ワルツ]]へのオマージュとして構想されました。ラヴェルの親友であるピアニスト、ミシア・セールに献呈されています。

作曲の経緯

ラヴェルは以前からオーケストラのためのワルツを作曲する構想を持っていました。1906年には、ヨハン・シュトラウス2世への敬意を込めた交響詩風のウィンナワルツを作曲する計画を明かしています。1914年頃には『ウィーン』という題名の交響詩も考えられていましたが、第一次世界大戦の影響で未完に終わりました。1912年の作品『高雅で感傷的なワルツ』はオーケストラによるワルツを実現していますが、元々はピアノ曲として作曲されたものをバレエ音楽として編曲したものです。

第一次世界大戦中、ラヴェルは健康を害し、さらに母親の死という不幸に見舞われました。そのため、1917年に完成した『クープランの墓』を除き、3年間新作を発表することができませんでした。『ラ・ヴァルス』は、ラヴェルが創作活動を再開するきっかけとなった作品です。

1917年、バレエ・リュスの主宰者セルゲイ・ディアギレフは、ラヴェルに新しいバレエ音楽の作曲を依頼しました。ラヴェルはこれを了承しましたが、作曲はすぐには進まず、『ラ・ヴァルス』は1919年から1920年にかけて作曲されました。完成後、ラヴェルは2台ピアノ版をディアギレフに聴かせましたが、ディアギレフは「バレエの絵」であるとして受け取りを拒否し、これがきっかけで二人の仲は悪化しました。

初演

まず、1920年10月23日にウィーンで、アルフレード・カゼッラとラヴェル自身の演奏により、2台ピアノ版が初演されました。その2ヶ月後、1920年12月12日には、パリでカミーユ・シュヴィヤール指揮ラムルー管弦楽団によって、管弦楽版が初演されました。当初のバレエ音楽としての初演は定かではありませんが、1928年10月にはアントウェルペンの劇場とイダ・ルービンシュタインの舞踊団によって上演された記録が残っています。パリ・オペラ座での初演もルービンシュタインの舞踊団によって行われましたが、その正確な日付は1928年11月20日または1929年5月23日とされています。

曲の概要

ラヴェルは初版に次のような標題を添えています。「渦巻く雲の中から、ワルツを踊る男女がかすかに浮かび上がってくる。雲が次第に晴れ上がり、A部では、渦巻く群集で埋め尽くされたダンス会場が現れ、その光景が少しずつ描かれる。B部では、フォルティッシモでシャンデリアの光がさんざめく。舞台は1855年ごろのオーストリア宮廷である。」

この標題が示すように、曲はまず低弦のトレモロによる混沌とした雰囲気で始まり、徐々にワルツのリズムとメロディが姿を現します。ワルツらしい形を整えた後、新しい主題が現れ、ワルツの雰囲気を積み重ねていきます。しかし、展開が進むにつれてワルツのリズムは徐々に崩れ始め、テンポも乱れていきます。転調を繰り返し、リズムを破壊しながら進み、冒頭の主題が変形されて再現された後、最後の2小節で強引に終止します。

演奏時間

演奏時間はおよそ12分です。

編成

フルート3（3番はピッコロ持ち替え）、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラ[[ファゴット]]、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ、大太鼓、小太鼓、タンバリン、トライアングル、シンバル、カスタネット、クロタル、銅鑼、グロッケンシュピール、ハープ2、弦5部で構成されています。

編曲

ラヴェル自身による2台ピアノ版とピアノ独奏版があります。また、グレン・グールドによるピアノ独奏版（ラヴェル自身の独奏版をさらに編曲したもの）も存在します。

脚注

注釈

出典

外部リンク

ラヴェル作曲『ラ・ヴァルス』の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

もう一度検索