アルフレード・カゼッラ

アルフレード・カゼッラ（Alfredo Casella, 1883年 7月25日 - 1947年 3月5日）は、イタリアの作曲家、ピアニスト、指揮者、音楽指導者として多岐にわたる才能を発揮しました。彼の活動は、20世紀初頭のイタリア音楽界に大きな影響を与え、特にバロック音楽の巨匠ヴィヴァルディの作品復興に尽力したことで知られています。

生涯

トリノに生まれたカゼッラは、1896年にパリ音楽院に入学し、ピアノをルイ・ディエメ、作曲をガブリエル・フォーレに師事しました。パリでは、作曲、ピアノ演奏、指揮と幅広い分野で活動し、音楽家としての基礎を築きました。第一次世界大戦中にイタリアへ帰国後は、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院でピアノを教え、後進の育成にも力を注ぎました。

1923年には、ガブリエーレ・ダヌンツィオやジャン・フランチェスコ・マリピエロとともに、近代イタリア音楽を普及させるための音楽団体「イタリア新音楽協会」を設立。ピアニストとしては、ソロ活動だけでなく、室内楽奏者としても活躍しました。

第二次世界大戦中には、国際音楽祭の運営委員として、同時代の最先端の音楽を積極的に紹介する一方で、ムッソリーニに音楽劇を献呈するなど、政治的な側面も持ち合わせていました。戦後は、ファシズムへの協力について自責の念を抱き、晩年には『平和のための荘厳ミサ曲』を作曲しました。

ヴィヴァルディ復興への貢献

カゼッラの最大の功績の一つは、20世紀におけるヴィヴァルディ作品の復興です。1938年には、シエーナの貴族グイード・キージ・サラチーニ伯爵の協力を得て、キジアーナ音楽院にヴィヴァルディ研究機関を設立。1939年には、エズラ・パウンドを巻き込んで「ヴィヴァルディ週間」を組織し、自ら指揮してオペラや宗教曲を蘇演しました。この活動がきっかけとなり、ヴィヴァルディ作品は世界的に再評価されるようになりました。

1947年には、ヴェネツィアにアントニオ・ヴィヴァルディ研究所が設立され、カゼッラの功績はさらに広がりました。その後、古楽器演奏の隆盛とともにヴィヴァルディは再び脚光を浴び、現代においてもその人気は衰えることを知りません。

教育者としての側面

カゼッラは教育者としても優れており、カステルヌオーヴォ＝テデスコやゴッフレド・ペトラッシなど、多くの著名な音楽家を育てました。また、クラシックピアノ音楽の校訂版も多数手がけ、その指使いやフレージング、ペダリングには、カゼッラ独自の解釈が反映されています。校訂作業は没年まで続けられ、未完部分は弟子のアルベルト・アゴスティによって引き継がれました。これらの校訂版は、現在も多くの音楽家に利用されています。

作風

レスピーギ、マリピエロらとともに「80年世代」と呼ばれたカゼッラは、オペラ偏重だったイタリア音楽界において、器楽曲の作曲に力を注ぎました。パリ時代には、ラヴェルらと交流し、フランス近代音楽の影響を受けたほか、ストラヴィンスキーの『春の祭典』初演にも立ち会いました。また、マーラーやシェーンベルクなど、同時代のウィーンの音楽にも傾倒し、初期作品には後期ロマン派から表現主義的な無調音楽まで、幅広いスタイルが見られます。

帰国後は、ストラヴィンスキーの新古典主義音楽への転向に影響を受け、イタリア新古典主義音楽の旗手となりました。レスピーギのように歌謡性や叙情性にこだわることはなく、またマリピエロほどポリフォニックではありません。成熟期の作品には、屈折した響き、乾いたユーモア、そしてほの暗い情熱が漂う、独自の世界観が表現されています。また、リズミカルな作品や、全音階による平易な旋律も特徴的です。

主要作品

カゼッラの作品は多岐にわたりますが、以下に主要な作品を挙げます。

交響曲

交響曲第1番 Op.5
交響曲第2番 Op.12
交響曲第3番「シンフォニア」 Op.63

管弦楽曲

狂詩曲イタリア Op.11
組曲ハ長調 Op.13
戦争の記録 Op.25bis
交響組曲「甕」
英雄的哀歌 Op.29
ピアノと管弦楽のためのパルティータ Op.42
ローマ協奏曲 Op.43
スカルラッティアーナ Op.44
ヴァイオリン協奏曲 Op.48
三重協奏曲 Op.56
チェロ協奏曲 Op.58
管弦楽のための協奏曲 Op.61
パガニニアーナ Op. 65
ピアノ、ティンパニ、打楽器と弦楽のための協奏曲 Op. 69

室内楽曲

チェロソナタハ短調 Op.8
チェロソナタハ長調 Op.45
ピアノ三重奏のためのソナタ Op.62
ハープソナタ Op.68
フルートとピアノのための《シチリアーナとブルレスカ》
弦楽四重奏のためのセレナータ

ピアノ曲

パヴァーヌ Op.1
シャコンヌ主題による変奏曲 Op.3
トッカータ Op.6
サラバンド Op.10
夜想曲
悲しき子守唄 Op.14
舟歌 Op.15
…風に Op.17-1, Op.17-2
9つの小品 Op.24
ソナチネ Op.28
音詩《A Notte Alta》Op.30
Deux Contrastes Op.31
グラツィオーソ（ショパンを讃えて）
アンチ・グラツィオーソ
Inezie Op.32
子どものための11の小品 Op.35
2つのイタリア民謡
バッハ主題による2つのリチェルカーレ
シンフォニア、アリオーソとトッカータ
リチェルカーレ
Studio Selle Terze Maggiori
6つの練習曲 Op.70

その他

オペラ3作
声楽曲
バラキレフのピアノ曲『イスラメイ』の管弦楽編曲

アルフレード・カゼッラ国際作曲賞

ダッラピッコラ作曲賞が廃止されたのと入れ替わるように、アルフレード・カゼッラ国際作曲賞が創設されました。

結論

アルフレード・カゼッラは、作曲家、ピアニスト、指揮者、教育者として多方面で活躍し、20世紀のイタリア音楽界に大きな足跡を残しました。特にヴィヴァルディ作品の復興への貢献は特筆に値し、彼の活動は今日の音楽界にも大きな影響を与え続けています。

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