パラマーラ朝

パラマーラ朝：インド中西部の興亡

パラマーラ朝は、9世紀初頭から14世紀初頭にかけて、インド中西部のマールワー地方を支配したヒンドゥー王朝です。ラージプートの王朝の一つとしても知られています。首都はダールに置かれました。

成立と独立

9世紀初頭、マールワー地方は、デカン地方を支配していたラーシュトラクータ朝の王ゴーヴィンダ3世によって獲得されました。ゴーヴィンダ3世は、この地域の統治をパラマーラ族の族長ウペーンドラに任じ、これがパラマーラ朝の始まりとされています。

当時、北インドにはプラティーハーラ朝が存在し、デカンと北インドの間に位置するマールワー地方は、ラーシュトラクータ朝とプラティーハーラ朝の間で争奪の地となっていました。パラマーラ朝もラーシュトラクータ朝の封臣として、不安定な支配を維持しながら戦いに明け暮れる日々を送っていました。

10世紀後半、シーヤカ2世の時代になると、プラティーハーラ朝は衰退し、ラーシュトラクータ朝は南インドのチョーラ朝との争いに忙殺されていました。シーヤカ2世は、この機に乗じてプラティーハーラ朝のマールワー領を奪い、西方ではマヒー川以西まで勢力を拡大し、マールワー全域を支配下に置きました。

さらに、ラーシュトラクータ朝がチョーラ朝との戦いに苦戦している最中、クリシュナ3世の死後、コーッティガ・アモーガヴァルシャが即位すると、シーヤカ2世は反旗を翻しました。パラマーラ朝はラーシュトラクータ朝と交戦状態に入り、972年にはその首都マーニヤケータに迫るほどの勢いを見せつけました。この出来事は、カリヤーニのチャールキヤ朝の創始やタイラ2世の台頭を促すことにもなりました。結果として、パラマーラ朝はタープティ川以北の領土を獲得し、ラーシュトラクータ朝からの独立を達成しました。

ボージャの治世と最盛期

11世紀初頭に即位したボージャ王は、パラマーラ朝の最盛期を築いた偉大な君主として知られています。彼は領土を拡大し、デカンのコンカン地方、グジャラート南部のラータ地方、ラージャスターンのメーワール地方の都市チットールガルなどを支配下に置きました。コーンカン地方のシラーハーラ朝を封臣とし、チットールガルを支配したことで、グジャラートのチャウルキヤ朝、ラージャスターンのチャーハマーナ朝に対して優位に立つことができました。

また、11世紀初頭にアフガニスタンのイスラーム王朝であるガズナ朝が侵攻してきた際には、他のラージプート諸王朝と連合して対抗しました。ボージャ王は、治世中に建築事業を盛んに行い、河川にはダムを建設し、自身の名を冠したボージェーシュヴァラ寺院などを建立しました。彼は文芸の保護にも力を注ぎ、自らも詩作を行うなど、文化的な側面でも大きな功績を残しました。その才能から「詩人王」とも呼ばれ、クシーラスヴァーミンやサーヤナといった著名な学者からも「文典家」として高く評価されました。

衰退と滅亡

しかし、ボージャ王の治世末期には、チャウルキヤ朝とチェーディのカラチュリ朝の連合軍に敗北し、マールワーは両王朝によって分割されることになりました。ボージャ王の死後、パラマーラ朝は一時的に後期チャールキヤ朝の支援を受けてマールワーの支配を回復しましたが、12世紀半ばから後半にかけてチャウルキヤ朝の侵攻を再び受け、マールワー全域を奪われてしまいました。

パラマーラ朝の一族はマールワーを捨て、東へと逃れ、王朝は主系と傍系マハークマーラに分裂し、ボーパールとヴィディシャーの周辺地域を支配する小国へと変貌しました。その後、傍系マハークマールのヴィンディヤヴァルマンが、首都ダールをチャウルキヤ朝から奪還し、13世紀前半に主系と傍系を統合しましたが、かつての勢力を取り戻すことはできませんでした。

13世紀初頭にデリー・スルターン朝の奴隷王朝が成立すると、1233年にはシャムスッディーン・イルトゥトゥミシュがウッジャインやヴィディシャーを占拠しました。さらに、1250年には再び奴隷王朝のギヤースッディーン・バルバンの侵攻を受け、同時期にチャウルキヤ朝やデカンのヤーダヴァ朝の侵攻も重なり、チャウルキヤ朝によってダールが略奪されるなど、王朝の立て直しは困難を極めました。

パラマーラ朝はその後も細々と存続しましたが、1305年にデリー・スルターン朝のハルジー朝の攻撃を受け、ウッジャインやマーンドゥーなどの拠点を次々と失い、最終的にはダールも陥落し、パラマーラ朝は滅亡しました。

パラマーラ朝の歴史は、興隆と衰退を繰り返すインドの王朝の典型的な例を示しています。その文化的な遺産は、今日のインドにも色濃く残っています。

参考文献

小谷汪之『世界歴史大系 南アジア史2―中世・近世―』山川出版社、2007年。
サティーシュ・チャンドラ 著、小名康之、長島弘 訳『中世インドの歴史』山川出版社、2001年。

関連項目

* ラージプート

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