リアンダー級フリゲート

リアンダー級フリゲート：多用途性を追求した英国の主力フリゲート

リアンダー級フリゲートは、イギリス海軍が1960年代から1990年代にかけて運用したフリゲート艦級です。12型フリゲートの発展型として、その汎用性と多機能性から、イギリス海軍だけでなく、多くの国々でも運用されました。ここでは、リアンダー級フリゲートの設計、装備、近代化改修、そして各国の運用状況について詳しく見ていきましょう。

開発の背景

第二次世界大戦後、イギリス海軍は艦隊護衛艦の必要性を認識し、12型フリゲートを開発しました。しかし、従来のフリゲートは艦隊行動に随伴できる速力を持たない艦が多かったため、12型をベースに、より汎用性を高めた艦隊護衛艦の開発が決定されました。これがリアンダー級フリゲートの誕生につながります。設計は、既存の12型フリゲートをベースに、ニュージーランド海軍が作成した改設計案を参考に、1960年2月に基本設計が承認されました。

設計の特徴

リアンダー級フリゲートは、12型フリゲートの設計を踏襲しつつも、いくつかの点で改良が加えられました。主な変更点は以下の通りです。

船体構造: 12型が長船首楼型であったのに対し、リアンダー級は上甲板が艦尾まで全通する遮浪甲板型となりました。これにより、艦内容積が増加し、より多くの装備を搭載することが可能になりました。
上部構造: 12型では前後に分割されていた上部構造物が、リアンダー級では一体化され、艦全体のシルエットが大きく変化しました。
船体の拡大: 全長は0.7メートル延長され、基準排水量は70トン増加しました。また、後期建造艦ではさらに幅が0.6メートル拡大され、基準排水量はさらに50トン増加しました。
燃料タンク: 12型では燃料タンクとバラストタンクが別々であったのに対し、リアンダー級では兼用とされ、スペース効率が向上しました。

主機関と電源

主機関は、初期建造艦では12型と同じY-100型ギアード・タービンが搭載されましたが、後期型ではY-136型、幅広型ではY-160型に更新されました。これにより、優れた加速性能を発揮し、特にタラ戦争ではその機動性が活かされました。電源構成は、タービン発電機2基とディーゼル発電機2基で、出力は初期建造艦で合計1,900キロワット、後期建造艦では2,500キロワットに強化されました。

装備

C4ISR

リアンダー級フリゲートには、アナログ式のJYA戦術状況表示装置が搭載されました。また、新開発の統合通信システム（ICS）が採用されました。対空捜索用として、早期警戒用の965M型レーダーが装備された点が特徴です。ソナーは、初期型では177型ソナー、後期型では184型ソナーに更新され、可変深度ソナーとしてカナダ製の199型ソナーが搭載されました。電子戦装置は、初期型では12型の装備を踏襲していましたが、後期型では電波探知装置がUA-8/9に、電波妨害装置が667型に更新されました。

武器システム

対潜兵器として、リンボー対潜迫撃砲が1基に削減された代わりに、ウェストランド ワスプ中距離魚雷投射ヘリコプターを搭載・運用するための航空艤装が設置されました。艦砲は12型と同じ45口径11.4cm連装砲ですが、砲射撃指揮装置（GFCS）はMRS-3に更新されました。個艦防空ミサイルとしては、シーキャットGWS-22が搭載されました。

近代化改修

リアンダー級フリゲートは、1970年代以降、その艦隊における重要性から、近代化改修が行われました。改修は3つのバッチに分けられ、それぞれ異なる特徴を持っています。

バッチ1: アイカラ対潜ミサイルを搭載するための改修が行われました。船首楼甲板の艦砲を撤去し、アイカラの単装発射機を設置しました。
バッチ2: 対水上火力強化のため、エグゾセMM38艦対艦ミサイルが搭載されました。シーキャット個艦防空ミサイル発射機を2基または3基搭載したバッチ2A/2Bがあり、バッチ2Aには後に曳航ソナーが追加され、バッチ2TAとなりました。
バッチ3: 22型フリゲートに準じた装備を搭載するための改修が行われました。個艦防空ミサイルがシーウルフに換装され、レーダーも967/968型に変更されました。また、電波探知装置がUAA-1に更新され、エグゾセMM38艦対艦ミサイルが搭載されました。ソナーは2016型に換装され、リンボー対潜迫撃砲は短魚雷発射管に換装されました。

各国での運用

リアンダー級フリゲートは、イギリス海軍以外にも、多くの国々で運用されました。

インド: 幅広型船体を基にした国産フリゲート「ニルギリ級」を建造し、イギリスからの退役艦も導入しました。
オランダ: リアンダー級に準拠した「ファン・スペイク級」を建造し、後にインドネシア海軍に譲渡しました。
オーストラリア: リバー級護衛駆逐艦の一部がリアンダー級に準じた設計となっています。
ニュージーランド: 原型艦と幅広設計の2隻を新規に建造し、後にイギリス海軍の中古艦も導入しました。
チリ: 幅広型船体を基にした「コンデル級」を建造し、後にイギリス海軍の退役艦も導入しました。これらの艦は、エクアドルへ譲渡され運用されました。
エクアドル: チリ海軍から譲渡されたコンデル級フリゲートを現在も運用しています。
パキスタン: イギリス海軍から中古艦を受領しました。

まとめ

リアンダー級フリゲートは、その汎用性と多機能性から、イギリス海軍の主力フリゲートとして長年にわたり活躍しました。また、その設計は多くの国々で参考にされ、各国の海軍で運用されました。その実績は、現代のフリゲート設計においても重要な教訓となっています。

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