ルサ2世

ルサ2世：衰退からの再興を試みたウラルトゥ王

ルサ2世（Rusa II）は、紀元前685年頃から紀元前639年頃までウラルトゥ王国を統治した王です。彼の時代、ウラルトゥはアッシリア帝国との戦いに敗れ、領土の一部を失い、朝貢を強いられるなど、衰退の一途をたどっていました。さらに、北東部ではキンメリア人やスキタイ人といった騎馬民族の侵入に悩まされ、国家の存亡が危ぶまれる状況でした。

苦境からの脱却：国際情勢の変化

ルサ2世が王位を継承した当時、ウラルトゥを取り巻く状況は非常に厳しいものでした。しかし、幸運にもアッシリア帝国で内紛が発生し、状況は好転します。新たに征服したメディア人による反乱はアッシリアに深刻な打撃を与え、紀元前680年にはアッシリア王センナケリブが暗殺されるという事件まで起きました。暗殺者たちはウラルトゥ領内に逃げ込み、アッシリアは自国の問題で手一杯となり、ウラルトゥに対する圧力を弱めざるを得なくなりました。この機を捉え、ルサ2世はウラルトゥの復興に力を注ぐことになります。

外征と内政：国家再建への道

ルサ2世は、ウラルトゥの主神であるハルディの信仰を復活させるため、アッシリア王サルゴン2世によって破壊されたムサシルに代わる新たな宗教都市をヴァン湖の近くに建設しました。これは、信仰の力を借りて国民の結束を高め、国家の再建を図るための政策でした。

また、ルサ2世はアッシリアに対する優位を確立するため、アナトリア半島への交通の要衝であるユーフラテス川地方への遠征を数度行いました。しかし、これらの遠征は成功したとは言えず、ウラルトゥ本国に近いシュプリア国でさえ独立の動きを見せるなど、国内の統制も不安定な状況でした。

一方、ルサ2世はトランスコーカサス地方での活動も積極的に展開しました。既にウラルトゥによって建設されていたエレブニの近くに、新たにテイシュバ神の名にちなんだテイシュバニ市を建設しました。また、アルメニア共和国からは、フラズダン川からクアルリニ市に水路を引いた事績を記したルサ2世の碑文が発見されています。これらの事業は、灌漑設備の整備や都市建設を通じて、地域の経済発展と安定化を図ることを目的としていました。

覆せなかった衰退：年代特定と後継者問題

ルサ2世の努力にもかかわらず、ウラルトゥの長期的な衰退傾向を覆すことはできませんでした。アッシリア側の記録など比較資料が極端に少ないため、ウラルトゥ自身が残した碑文から各王の事績を知ることはできても、その年代を正確に特定することが難しくなっています。ルサ2世以後の王位継承の順番については混乱が見られ、研究者によって見解が大きく異なっています。ルサ2世の次の王となったのは、息子のサルドゥリ3世の他、エリメナ、ルサ3世の3人が候補として挙げられていますが、エリメナについては血縁関係がない可能性も指摘されています。

ルサ2世は、衰退しつつあったウラルトゥ王国を立て直そうと尽力した王でしたが、その努力もむなしく、王国は徐々に衰退の道を辿りました。彼の治世は、ウラルトゥ王国の盛衰を考える上で重要な時期であり、彼の業績は後世に語り継がれています。

参考文献

Пиотровский Б. Б. Ванское царство (Урарту), Издательство Восточной литературы, Москва, 1959
（日本語訳）『埋もれた古代王国の謎 幻の国ウラルトゥを探る』（ボリス・ボリソヴィッチ・ピオトロフスキー著　加藤九祚訳　岩波書店） ISBN 9784000001601 (4000001604)
Меликишвили Г. А. Урартские клинообразные надписи, Издательство АН СССР, Москва, 1960
Арутюнян Н. В. Биайнили (Урарту), Издательство Академии наук Армянской ССР, Ереван, 1970

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