ルノー・21
ルノー・21（Renault 21、通称R21）は、フランスの自動車メーカー、ルノーが1986年3月から製造・販売を開始した前輪駆動の中型乗用車です。先代モデルにあたるルノー・18の後継として位置づけられました。
基本的なデザインは、イタリアの著名なデザイン会社であるイタルデザイン・ジウジアーロが手掛けました。発売当初のボディタイプは4ドアセダンのみでしたが、その数か月後にはステーションワゴン仕様の「ネヴァダ」（イギリスでは「サヴァナ」の名称）が追加されました。先代モデルのルノー・18が室内空間の狭さを指摘されることがあったため、ルノー21ではホイールベースを約200mm延長し、同クラスでも有数の広い室内空間を実現しました。
このモデルの技術的な特徴として、搭載されるエンジンによって横置きと縦置きの両方のレイアウトが存在した点が挙げられます。これは、当時のルノーが2.0Lを超えるエンジンの高トルクに対応できる強度を持つ横置き用ギアボックスの開発が間に合わなかったためとされています。このエンジンレイアウトの違いにより、縦置きモデルと横置きモデルではホイールベースにも約60mmの差異が生じていました。エンジンルームは、縦置き・横置きいずれのレイアウトにも対応できる設計となっていました。
エンジンは全て直列4気筒SOHCを採用しており、仕向け地やモデルに応じて多様なバリエーションが存在しました。ガソリンエンジンは1.4Lから2.2Lまで幅広い排気量が用意され、特に2.0Lにはターボチャージャーを搭載した高性能版も設定されました。ディーゼルエンジンも1.9Lや2.1L、さらに2.1Lターボディーゼルがラインナップされていました。
ルノー21は、フランス本国のみならず、トルコのオヤック・ルノー、コロンビア、中国、アルゼンチン、チリ、台湾、ベルギー、イランなど、世界各地の多くの生産拠点で組み立てが行われました。また、ルノーが当時アメリカン・モーターズ（AMC）と提携していた関係から、1986年後半には北米市場で「ルノー・メダリオン」として販売されました。しかし、1987年8月にルノーがAMCをクライスラーに売却したことに伴い、メダリオンはクライスラー傘下の新ブランド「イーグル」へ移行し、「イーグル・メダリオン」として引き続き販売されることになりました。
1989年6月には大規模なマイナーチェンジが実施され、「フェイズ2」と呼ばれる後期型に移行しました。この時期、アウディ・80やプジョー・405といった強力なライバル車種が登場し、販売競争が激化していた状況に対応するための改良でした。フェイズ2では、ヘッドランプ周辺（ターボモデルを除く）、テールランプ、インストルメントパネル中央の空調操作部などのデザインが大きく変更されました。さらに、この改良に合わせて5ドアハッチバックモデルがラインナップに加わったほか、ビスカスカップリングを用いた四輪駆動システム「クアドラ」を搭載したモデルも追加されました。特に5ドアハッチバックモデルは、フランス国内市場においてセダンの販売台数をすぐに上回り、主力車種となりました。
1992年4月にはグレード名称体系が見直され、従来のTXやTXEといった呼称に代わり、下位から「プリマ（Prima）」「マネジャー（Manager）」「アリゼ（Alize）」といった新しい名称が導入されました。この時期、一部のガソリンエンジン（1.7L、2.0L 12V、2.0Lターボ）には排出ガス規制に対応するための三元触媒が装着されています。
ステーションワゴンの「ネヴァダ」は、1993年5月に単に「ルノー・ネヴァダ」と改称されました。セダンおよび5ドアハッチバックモデルは1994年に生産を終え、後継モデルとなるルノー・ラグナへと世代交代しましたが、ステーションワゴンのネヴァダはラグナのワゴンモデルが登場する1995年9月まで引き続き生産されました。
ルノー21の累計生産台数は約209万6千台に上り、その内訳はセダンが約168万4千台、ワゴンが約41万2千台となっています。
日本市場へは、当時の正規輸入代理店であったJAXを通じて導入されました。日本に正規導入されたのは全て4ドアセダンボディで、主なモデルは2.2Lエンジンに4速オートマチックトランスミッションを組み合わせた「TXE」と、2.0Lターボエンジンに5速マニュアルトランスミッションを組み合わせた高性能モデル「ターボ」が販売されました。さらに、2.0Lターボエンジンに5速マニュアル、ビスカスカップリング式四輪駆動システムを搭載した「ターボクアドラ」も少数ながら日本に導入されています。
ルノー21に関する特筆すべき逸話として、チェコスロバキア（後にチェコ共和国）の初代大統領を務めた劇作家のヴァーツラフ・ハヴェル氏が、大統領公用車としてこのモデルを選んだことが挙げられます。1989年のビロード革命の最中、当時のポルトガル大統領マリオ・ソアレス氏は、チェコスロバキアの民主化を支持する意を示すため、ハヴェル氏へルノー21 TSE一台を寄贈することを手配しました。この車両は、ハヴェル氏が大統領に就任した1989年12月にようやくプラハに到着しました。ハヴェル氏は、この贈り物を非常に喜び、従来の権威を示すような大型リムジンではなく、排気量1.7Lの前輪駆動という比較的平凡な中型セダンであるルノー21を、自身の公用車として積極的に使用したことで知られています。
車名である「21」は、フランス語で「vingt-et-un（ヴァンテアン）」と読まれます。
開発と特徴
基本的なデザインは、イタリアの著名なデザイン会社であるイタルデザイン・ジウジアーロが手掛けました。発売当初のボディタイプは4ドアセダンのみでしたが、その数か月後にはステーションワゴン仕様の「ネヴァダ」（イギリスでは「サヴァナ」の名称）が追加されました。先代モデルのルノー・18が室内空間の狭さを指摘されることがあったため、ルノー21ではホイールベースを約200mm延長し、同クラスでも有数の広い室内空間を実現しました。
このモデルの技術的な特徴として、搭載されるエンジンによって横置きと縦置きの両方のレイアウトが存在した点が挙げられます。これは、当時のルノーが2.0Lを超えるエンジンの高トルクに対応できる強度を持つ横置き用ギアボックスの開発が間に合わなかったためとされています。このエンジンレイアウトの違いにより、縦置きモデルと横置きモデルではホイールベースにも約60mmの差異が生じていました。エンジンルームは、縦置き・横置きいずれのレイアウトにも対応できる設計となっていました。
エンジンは全て直列4気筒SOHCを採用しており、仕向け地やモデルに応じて多様なバリエーションが存在しました。ガソリンエンジンは1.4Lから2.2Lまで幅広い排気量が用意され、特に2.0Lにはターボチャージャーを搭載した高性能版も設定されました。ディーゼルエンジンも1.9Lや2.1L、さらに2.1Lターボディーゼルがラインナップされていました。
グローバルな生産と展開
ルノー21は、フランス本国のみならず、トルコのオヤック・ルノー、コロンビア、中国、アルゼンチン、チリ、台湾、ベルギー、イランなど、世界各地の多くの生産拠点で組み立てが行われました。また、ルノーが当時アメリカン・モーターズ（AMC）と提携していた関係から、1986年後半には北米市場で「ルノー・メダリオン」として販売されました。しかし、1987年8月にルノーがAMCをクライスラーに売却したことに伴い、メダリオンはクライスラー傘下の新ブランド「イーグル」へ移行し、「イーグル・メダリオン」として引き続き販売されることになりました。
モデルの進化
1989年6月には大規模なマイナーチェンジが実施され、「フェイズ2」と呼ばれる後期型に移行しました。この時期、アウディ・80やプジョー・405といった強力なライバル車種が登場し、販売競争が激化していた状況に対応するための改良でした。フェイズ2では、ヘッドランプ周辺（ターボモデルを除く）、テールランプ、インストルメントパネル中央の空調操作部などのデザインが大きく変更されました。さらに、この改良に合わせて5ドアハッチバックモデルがラインナップに加わったほか、ビスカスカップリングを用いた四輪駆動システム「クアドラ」を搭載したモデルも追加されました。特に5ドアハッチバックモデルは、フランス国内市場においてセダンの販売台数をすぐに上回り、主力車種となりました。
1992年4月にはグレード名称体系が見直され、従来のTXやTXEといった呼称に代わり、下位から「プリマ（Prima）」「マネジャー（Manager）」「アリゼ（Alize）」といった新しい名称が導入されました。この時期、一部のガソリンエンジン（1.7L、2.0L 12V、2.0Lターボ）には排出ガス規制に対応するための三元触媒が装着されています。
ステーションワゴンの「ネヴァダ」は、1993年5月に単に「ルノー・ネヴァダ」と改称されました。セダンおよび5ドアハッチバックモデルは1994年に生産を終え、後継モデルとなるルノー・ラグナへと世代交代しましたが、ステーションワゴンのネヴァダはラグナのワゴンモデルが登場する1995年9月まで引き続き生産されました。
ルノー21の累計生産台数は約209万6千台に上り、その内訳はセダンが約168万4千台、ワゴンが約41万2千台となっています。
日本市場での展開
日本市場へは、当時の正規輸入代理店であったJAXを通じて導入されました。日本に正規導入されたのは全て4ドアセダンボディで、主なモデルは2.2Lエンジンに4速オートマチックトランスミッションを組み合わせた「TXE」と、2.0Lターボエンジンに5速マニュアルトランスミッションを組み合わせた高性能モデル「ターボ」が販売されました。さらに、2.0Lターボエンジンに5速マニュアル、ビスカスカップリング式四輪駆動システムを搭載した「ターボクアドラ」も少数ながら日本に導入されています。
逸話
ルノー21に関する特筆すべき逸話として、チェコスロバキア（後にチェコ共和国）の初代大統領を務めた劇作家のヴァーツラフ・ハヴェル氏が、大統領公用車としてこのモデルを選んだことが挙げられます。1989年のビロード革命の最中、当時のポルトガル大統領マリオ・ソアレス氏は、チェコスロバキアの民主化を支持する意を示すため、ハヴェル氏へルノー21 TSE一台を寄贈することを手配しました。この車両は、ハヴェル氏が大統領に就任した1989年12月にようやくプラハに到着しました。ハヴェル氏は、この贈り物を非常に喜び、従来の権威を示すような大型リムジンではなく、排気量1.7Lの前輪駆動という比較的平凡な中型セダンであるルノー21を、自身の公用車として積極的に使用したことで知られています。
車名について
車名である「21」は、フランス語で「vingt-et-un（ヴァンテアン）」と読まれます。
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