ルリオーストラリアムシクイ

ルリオーストラリアムシクイ（学名: Malurus cyaneus）は、スズメ目オーストラリアムシクイ科に属する鳥類で、オーストラリア南東部に広く分布する固有種です。その美しい姿とユニークな生態から、多くの人々に愛されています。

分類

ルリオーストラリアムシクイは、オーストラリアとニューギニアの低地に生息するオーストラリアムシクイ属12種のうちの一つです。ムラサキオーストラリアムシクイと近縁で、これら2種は「青いムシクイ」として知られています。

1777年、キャプテン・クックの航海に参加した博物学者ウィリアム・アンダーソンが、タスマニア沖で最初の標本を採集しました。当初はセキレイの仲間として分類されましたが、後に現在のオーストラリアムシクイ属に再分類されました。

かつては「Superb Warbler（豪華なムシクイ）」と呼ばれていたこともありましたが、1920年代には「ミソサザイ」を意味するWrenやFairywrenという名前が使われるようになりました。また、一夫多妻制に見えたことから「Mormon Wren（モルモン教徒のミソサザイ）」と呼ばれることもありました。

アボリジニの部族は、この鳥をWaatji pulyeriやDeeydgunなど、それぞれの言葉で呼んでいました。

オーストラリアムシクイ類は、かつてはヒタキ科やウグイス科に分類されていましたが、現在では独立したオーストラリアムシクイ科に分類されています。近年のDNA分析により、ミツスイ科やホウセキドリ科と近縁であることが示されました。

亜種

現在、以下の2亜種が確認されています。

M. c. cyaneus：タスマニア亜種。タスマニア島およびバス海峡諸島に生息し、大陸亜種よりも大きく、色が濃いのが特徴です。オスはより濃い瑠璃色をしています。
M. c. cyanochlamys：大陸亜種。タスマニア亜種よりも小さく、色が薄いです。クイーンズランド州のオスは、冠羽、耳羽、後頚が淡い銀青色です。

進化の歴史

鳥類学者のリチャード・ショッデは、ルリオーストラリアムシクイとムラサキオーストラリアムシクイの共通祖先が南部に起源を持つと発表しました。過去に、南西部（ムラサキ）と南東部（ルリ）に分かれました。氷河期には、ルリオーストラリアムシクイはタスマニア島に分布を広げ、海水面の上昇により孤立し、現在の亜種に分化したと考えられています。

形態

ルリオーストラリアムシクイは、全長14cm、体重8-13gほどの小さな鳥です。オスはメスよりもわずかに大きく、尾は比較的短いです。くちばしは先端が細く、基部が幅広くなっています。

性的二型が顕著で、繁殖期のオスは鮮やかな光沢のある青色の羽毛を持ちます。一方、メス、若鳥、繁殖に参加しないオスは灰褐色です。オスは、繁殖期以外にはエクリプスと呼ばれる非繁殖羽に換羽します。

鳴き声は、社会的なコミュニケーションやなわばりの誇示に重要な役割を果たします。オスは独特のさえずりを行い、外敵に対しては警戒声を発します。

分布と生息地

ルリオーストラリアムシクイは、オーストラリア南東部の湿潤な環境を好みます。まばらな灌木地、森林地帯、草原、ヒース、家の庭など、下層植生が発達した場所で見られます。都市部にも適応しており、シドニー、メルボルン、キャンベラの郊外でも普通に見られます。

外来種のランタナやブラックベリーが、隠れ場所を提供していることもあります。他のオーストラリアムシクイ類とは異なり、都市環境から利益を得ています。

生態

ルリオーストラリアムシクイは活発で、地上や下層植生で絶えず採餌します。短い距離を軽快に飛び跳ね、長い尾を立ててバランスを取ります。群れで行動し、なわばりを守り、子育てを協力し合います。

主な天敵は、カササギフエガラス、モズガラス類、ワライカワセミ、フエガラス類、カラス類、モズツグミ類、そして外来種のアカギツネ、ネコ、クマネズミなどです。外敵が巣に近づくと、'Rodent-run'ディスプレイを行い、注意を惹きつけます。

食性

主に昆虫食で、アリ、バッタ、カメムシ、ハエ、ゾウムシ、幼虫などを捕食します。小さな種や花、果実も食べます。地上や2m以下の灌木の中で、跳び回りながら採餌します。冬にはアリが重要な食料となります。

求愛ディスプレイ

オスは、求愛時に様々なディスプレイを行います。'sea horse flight'と呼ばれる独特の飛翔や、青い耳羽を大きく見せる'face fan'ディスプレイが知られています。また、繁殖期には黄色の花びらをくわえてメスに見せます。

ルリオーストラリアムシクイは社会的な一夫一婦制ですが、浮気性でもあります。つがいは生涯同じですが、オスもメスも他の個体と交尾を行います。若鳥の中には、群れ外のオスが父親である場合もあります。

繁殖

繁殖は春から晩夏にかけて行われます。ドーム状の巣を、密な植生の中に作ります。1回の産卵で3〜4個の卵を産み、約14日間抱卵します。孵化した雛は、群れ全体で給餌や世話を受け、約40日後には巣立ちます。

若鳥は、兄弟の世話をしたり、外敵を追い払うなど、ヘルパーとして群れに残ることもあります。また、マミジロテリカッコウなどの托卵の宿主になることもあります。

文化的な描写

ルリオーストラリアムシクイは、オーストラリア野鳥観察保護協会のエンブレムに使われています。また、かつては切手にも描かれていました。

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