ル・アーヴル襲撃

ル・アーヴル襲撃：七年戦争におけるイギリス海軍の奇襲作戦

1759年7月3日から2日間、七年戦争の最中にイギリス海軍はジョージ・ロドニー少将の指揮下、フランスのル・アーヴルに対して大胆な艦砲射撃を敢行しました。この作戦の目的は、フランスがイギリス本土への侵攻を企図し、そのためにル・アーヴルに集結させていた多数の輸送用はしけを破壊することにありました。

襲撃の背景：フランスのイギリス侵攻計画

1759年の夏、フランスのショワズール公爵によるイギリス侵攻計画は、大西洋沿岸や英仏海峡に面したフランスの主要な港湾都市、すなわちブレスト、ル・アーヴル、ロシュフォール、トゥーロンなどで着々と進行していました。フランス陸軍もダンケルク、サントメール、オーステンデ、リール、ヴァンヌといった地域に兵力を集結させていました。特にル・アーヴルはセーヌ川に面しており、部隊の移動が容易であったため、ショワズール公爵はここをスービーズ公の指揮下にある侵攻部隊の主要基地として位置付けていました。

イギリスは、フランスが遠征軍を輸送するために多数の平底船をル・アーヴルで準備しているという情報を掴んでおり、これに対抗するための対策を講じる必要に迫られていました。

砲撃の開始と被害

ロドニー海軍少将が率いるイギリス艦隊は、7月2日にスピットヘッドを出港し、ル・アーヴルへと向かいました。この艦隊は、旗艦である60門艦アキレスのほか、50門艦4隻、フリゲート5隻、スループ1隻、そして爆弾を搭載したケッチ6隻で構成されていました。ただし、ケッチ6隻は到着後すぐにオンフルールへと向かい、狭い川で錨を下ろしました。

翌日、イギリス艦隊による砲撃が開始され、50時間以上にわたって3千発以上の砲弾がフランスの平底船、補給物資、そして町に向けて容赦なく撃ち込まれました。ロドニー提督はフリゲート数隻と共に年末までル・アーヴル港近くに留まり、数多くの戦利品を鹵獲しました。

フランス側も砲台や塹壕に身を隠しながら応戦しましたが、砲撃による損害は甚大でした。町には火災が発生し、住民は逃げ惑う事態となりました。

襲撃のその後と七年戦争の帰趨

ル・アーヴル襲撃での勝利は、イギリスの指導部に一時的な安堵感をもたらしましたが、フランスの侵攻計画が完全に頓挫したわけではありませんでした。フランスは甚大な損害を被ったものの、計画を縮小しながらも侵攻の機会を窺っていました。しかし、1759年夏にフランスのトゥーロン艦隊がジブラルタル海峡から出撃したものの、8月のラゴスの海戦でイギリスに拿捕され、さらに11月にはブレスト艦隊がキブロン湾の海戦で大敗を喫したことで、フランスのイギリス侵攻計画は最終的に放棄されることとなりました。

ル・アーヴル襲撃を含む一連の勝利は、「奇跡の年」と称される1759年におけるイギリスの躍進を象徴する出来事となりました。

参考文献

McLynn, Frank (2015). From The Armada to Hitler. Crux Publishing Ltd. ISBN 9781909979314
Russell Frank Weigley, The age of battles, p.226
McLynn, Frank (2011). 1759: The Year Britain Became Master of the World. Random House. ISBN 9781446449271
Schumann, Schweizer, Matt & Karl (2012). The Seven Years War: A Transatlantic History War, History and Politics. Routledge. ISBN 9781134160686

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