ロン・ターコット

ロン・ジョセフ・モレル・ターコット(1941年7月22日-)は、カナダ・ニューブランズウィック州出身の伝説的な騎手です。カナダ競馬の殿堂とアメリカ競馬の殿堂の両方に名を連ね、その卓越した騎乗技術で数々の栄光を手にしました。特に、史上最強馬の一頭と謳われるセクレタリアトの主戦騎手として広く知られています。

ターコットのキャリアは、1959年にトロントのウインドフィールズファームで育成騎乗者としてスタートしました。しかし、すぐに騎手に転向し、類まれな才能で頭角を現します。1962年と1963年にはウッドバイン競馬場のリーディングジョッキーを獲得。若くして才能を開花させました。さらに、名馬ノーザンダンサーの初勝利時の騎手も務めています。

1965年、アメリカ・プリークネスステークスでトムロルフに騎乗し優勝、一躍アメリカでもその名を広めます。その後、メリーランド州ローレルパーク競馬場を拠点とする調教師、ルシアン・ローリンとの強力なコンビを組み、アメリカでの活動を本格化させました。そして1972年、リヴァリッジに騎乗しケンタッキーダービーとベルモントステークスを制覇、三冠騎手となりました。

翌1973年には、後に「ビッグ・レッド」の異名で知られるようになるセクレタリアトとタッグを組み、ケンタッキーダービー、プリークネスステークス、ベルモントステークスを全て制覇するという偉業を達成しました。クラシック三冠を制したのはもちろんのこと、2年連続でのケンタッキーダービー制覇は、1901年と1902年に優勝したジミー・ウィンクフィールド以来の快挙であり、2年間に5つのクラシックレースを制したのもターコットが初めてでした。

これらの功績から、1974年には競馬関係者として初めてカナダ勲章を授与されるなど、その功績は高く評価されました。しかし1978年、ベルモントパーク競馬場での競走中、落馬事故によって頭部を強く打ち、左半身不随の重傷を負ってしまいました。この事故により、ターコットは惜しまれつつも騎手としてのキャリアに終止符を打ちました。

彼の輝かしいキャリアは、通算20281戦3032勝、うちGI級競走62勝という驚異的な成績で締めくくられました。引退直後にはアメリカ競馬の殿堂入りが発表され、翌年には模範騎手に贈られるジョージ・ウルフ記念騎手賞を受賞しました。さらに1980年にはカナダスポーツ選手の殿堂入りも果たしています。

弟のルディ・ターコットも騎手として活躍し、兄弟揃ってカナディアンインターナショナルチャンピオンシップステークス（現在のカナディアンインターナショナルステークス）を制覇するなど、競馬界に大きな足跡を残しました。ロン・ターコットの生涯は、類まれな才能と不屈の精神、そして一瞬の過ちによって人生が大きく変わる可能性を示す、感動と教訓に満ちた物語と言えるでしょう。彼の功績は、これからも競馬史に刻まれ続けることでしょう。

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