ワンガヌイ国立公園

ワンガヌイ 国立公園

ニュージーランド北島の中央部、マナワツ・ワンガヌイ地方に広がるワンガヌイ国立公園は、1986年に設立されました。この公園の範囲は、ニュージーランド国内で3番目の長さを誇るファンガヌイ川（全長290キロメートル）の雄大な流れに沿って広がっています。ただし、川そのものは国立公園の指定区域には含まれていません。

伝承と歴史

ファンガヌイ川には、古くからマオリの人々に受け継がれる数多くの伝承があります。その一つに、トンガリロとタラナキ（現在のタラナキ山）がタウポ湖畔のピハンガを巡って争った物語があります。タラナキは、この三角関係を解消するため、ピハンガの傍を離れるべきかルアペフに助言を求めました。その結果、タラナキ山はピハンガの側を離れ、西へと移動したとされています。ファンガヌイ川は、この旅の際にタラナキが流した涙で満たされたという伝説が残っています。

ファンガヌイ川は、マオリがニュージーランドに上陸した約600年前から彼らの歴史と深く結びついています。この川は北島の重要な交通網として機能し、マオリはカヌーを用いて現在のウェリントン、ワイカト、タウポ、ベイ・オブ・プレンティといった各地へ移動する際に利用していました。

ヨーロッパ人のこの地方への本格的な入植は1840年代に始まりました。宣教師たちはファンガヌイ川沿いの渓谷に多くの村や礼拝堂を建てました。1891年には、河口のワンガヌイと上流のタウマルヌイを結ぶ定期船が就航し、人や物資、郵便の輸送を担いました。しかし、1920年代に道路網が整備されると定期船の役割は終焉を迎えましたが、これを契機にファンガヌイ川流域における観光業が発展するようになりました。

生態系

ワンガヌイ国立公園はファンガヌイ川流域を中心に南北に広がり、高低差があるため非常に多様な生態系が見られます。

植物相

公園の森林では、クノニア科のカマヒやクスノキ科のタワが主要な樹木として多く見られます。森の奥深くには、高さ20メートルにも達する巨大なシダ植物ママクが繁茂しています。また、常緑樹であるリム、マキ科のミロやトタラなども生育しています。標高の低い湿潤な森林では、マキ科のカヒカテアやマタイ、ヤシ科のニカウなどが優占しています。低地にはフトモモ科のラタも自生しています。

乾燥した場所では、低木のレッドビーチやシルバービーチが見られ、急斜面にはセンリョウ科のアスカリナ・ルキダやフクシアなども自生しています。

国立公園の生態系にとって、移入種（外来種）は深刻な問題となっています。特に、フジウツギ属、アカシア、ヤナギ、スイカズラ、オニグルミなどが大きな影響を与えています。ハリエニシダやレイケステリアも軽度ながら問題視されています。

動物相

ファンガヌイ川流域には、人の立ち入りが困難な場所が多く存在しており、これが野鳥のサンクチュアリとなると同時に、外来種の侵入をある程度防ぐ役割も果たしています。公園内で一般的に見られる鳥類としては、ニュージーランドオウギビタキ、ニュージーランドセンニョムシクイ、ハイムネメジロ、ニュージーランドヒタキ、ニュージーランドコマヒタキ、ニュージーランドミツスイ、ニュージーランドバト（ケレル）、エリマキミツスイ、シロモフアムシクイなどが挙げられます。その他、ミドリイワサザイ、キガシラアオハシインコ、ニュージーランドハヤブサも比較的一般的に観察できます。

ワンガヌイ国立公園は、絶滅危惧種であるキタジマキーウィにとってニュージーランド最大の生息地の一つです。また、アオヤマガモは川の急流地帯に生息しています。

ファンガヌイ川には、18種類の魚類および甲殻類が生息していることが確認されています。ニュージーランドオオウナギ、フクロヤツメ、ノーザンコウラ（ミナミザリガニの一種）、ブラックフラウンダー（カレイの一種）などが豊富に見られます。さらに、ミゾクチコウモリやツギホコウモリといったコウモリ類も生息しています。

公園の豊かな生態系に対する最大の脅威は、ニュージーランドに人為的に持ち込まれた哺乳類です。ヤギ、ブタ、鹿、ポッサム、オコジョ、ネズミなどが挙げられますが、特にポッサムはその雑食性ゆえに生態系への影響が最も懸念されています。

アクティビティ

ワンガヌイ国立公園では、ニュージーランドで人気のトレッキング（トランピング）をはじめ、多様なアウトドア活動を楽しむことができます。公園内には、アテネ・スカイライン・トラック（6～8時間）、アテネ・ヴューポイント・ウォーク（1～2時間）、ブリッジ・トゥー・ノーウェア・ウォーク（約1.5時間）といった日帰りコースから、マンガプルア/カイワカウカ・トラック（約40km、2～3日）、マテマテアオンガ・トラック（約42km、3～5日）といった複数日を要する長距離コースまで、様々なトレッキングルートが整備されています。

生態系保護のため、公園内ではブタ、ヤギ、鹿の狩猟が推奨されています。狩猟許可証を取得した場合は、特定の期間（10月1日から4月30日まで）に狩猟を行うことが可能です。

トランピングや狩猟に加え、全長290キロメートルのファンガヌイ川を利用した活動も人気です。カヌーやカヤックでの川下り、ボート、釣り、ジェットボートなどが楽しめます。ニュージーランド政府が指定する9箇所の主要トレッキングルート「グレート・ウォークス」の一つである「ワンガヌイ・ジャーニー」は、珍しくトレッキングではなく、タウマルヌイからピピリキまでの145キロメートルをカヌーやカヤックで下るユニークな水上ルートとなっています。

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