ワンツー・どん

『ワンツー・どん』：子供たちの音楽への扉を開いた教育番組

『ワンツー・どん』は、1974年4月10日から1996年3月11日まで、NHK教育テレビジョンで放送されていた小学校1年生向けの音楽教育番組です。この番組は、単に音楽を教えるだけでなく、子供たちが音楽を楽しみ、創造性を育むことを目的としていました。1991年度からはステレオ放送も開始され、より豊かな音響体験を提供しました。

番組の概要

1973年度まで、小学校向けの音楽教育番組は、低学年向け『うたいましょうききましょう』、中学年向け『みんなの音楽』、高学年向け『音楽教室』と、学年別に分かれて放送されていました。しかし、1974年度に番組編成が変更され、『ワンツー・どん』は1年生向け、『うたって・ゴー』は2年生向け、『笛はうたう』（後に『ふえはうたう』に改題）は3年生向けとして、1年生から3年生を対象にした3つの音楽番組がスタートしました。

『ワンツー・どん』は、前番組の『うたいましょうききましょう』から浅井正子さんが続投し、『なかよしリズム』に出演していた飯野修実さんが加わって始まりました。歴代の出演者には、ザ・ワイルドワンズの鳥塚しげきさんや、『ステージ101』や『おかあさんといっしょ』で活躍した田中星児さんなど、著名な人物も名を連ねています。

番組は、東京放送児童合唱団を中心とした子供たちの合唱と、歌のお兄さん・お姉さんが中心となって音楽遊びを繰り広げるスタイルで展開されました。そのため、音楽遊びのために制作されたオリジナル曲が多く、バンブーダンス用の「イルカはざんぶらこ」は学校で活用されたり、循環式のケンパ遊びができる「まいごのカンガルー」、テクノポップのアレンジに伝統的な手合わせ遊びを取り入れた「宇宙人のテレパシー」などが人気を集めました。また、「だれにだっておたんじょうび」は幼稚園や保育園でバースデーソングとして定着し、「地球はみんなのものなんだ」は小中学校の合唱曲として広く歌われました。

さらに、クニ河内さん、石川晶さん、中川ひろたかさんなどの「リズムのおじさん」が、楽器紹介や楽典の学習をゲーム形式で展開し、子供たちが楽しみながら音楽の基礎を学べるように工夫されていました。これらの要素が組み合わさることで、『ワンツー・どん』は、音楽の楽しさを体感できる番組として、子供たちの心を捉えたのです。

22年の歴史と終焉

『ワンツー・どん』は、22年間にわたりリニューアルを重ねながら放送されました。しかし、1996年度に1・2年生向けの新番組『まちかどド・レ・ミ』が開始されることになり、『うたって・ゴー』とともに、惜しまれつつも番組は終了しました。

1・2年生が分離し、『ワンツー・どん』と『うたって・ゴー』が並立した22年間は、1・2年生共通番組だった前番組『うたいましょう ききましょう』の19年間や、『まちかどド・レ・ミ』と『ドレミノテレビ』を合わせた10年間よりも長く、その人気と影響力の大きさを物語っています。

また、番組末期には『ワンツー・どん まほうのリズム』がハイビジョン制作されるなど、技術的な進化にも対応していました。

放送時間と番組構成

放送時間は、日本標準時で、別の時間帯に再放送も行われていました。番組は、歌やリズム遊び、楽器紹介、楽典学習などを通して、子供たちが音楽の基礎を楽しく学べるように構成されていました。

出演者

どんくん

番組のマスコットキャラクターである「どんくん」は、ビーバーのような姿で親しまれました。オープニングでは「イエーイ、どんくんです」というセリフとともに登場し、出演者たちとの掛け合いや歌に参加しました。声は、伊東永昌さん、潘恵子さん、大和田りつこさん、篠原恵美さんが担当しました。初期にはカミナリ小僧のような姿をしていましたが、その後、現在のビーバーの姿に変わりました。

カウントバッファローズ

石川晶さんが率いるバンド「カウントバッファローズ」は、番組中のほとんどの楽曲の伴奏を担当しました。石川さんを含むリズムセクションに、金管・木管楽器の担当者が加わり、多彩な音楽を奏でました。石川さんが降板した後も、バンドは「ドン・ポップス」と名を変え、番組終了まで演奏を続けました。

歌のお兄さん・お姉さん、リズムのおじさん

番組には、飯野修実さん、浅井正子さん、吉川朋江さん、山崎睦子さん、鳥塚しげきさん、大和田りつこさん、レオナルド、田中星児さん、笠原あかねさん、春口まさ子さん、稲村なおこさん、あまのみちこさん、渡辺香理さんなどが、歌のお兄さん・お姉さんとして出演しました。また、工藤勉さん、石川晶さん、クニ河内さん、山本直喜さん、伊藤昌明さん、石山実さん、上柴はじめさん、中川ひろたかさん、早川史郎さんなどが、リズムのおじさんとして出演し、番組を盛り上げました。

主な楽曲

番組のテーマソングには、「地球はメリーゴーランド」、「ワンツー・どん」、「げんきななかま」、「太平洋が笑ったら」などがありました。挿入歌には、オリジナルの楽曲のほか、童謡なども歌われました。

『ワンツー・どん』は、子供たちが音楽に親しみ、その楽しさを知るための入り口として、長く愛され続けた教育番組です。番組から生まれた数々の楽曲は、今でも多くの人々に歌い継がれています。

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