ヴェイグリーノーブル

ヴェイグリーノーブル：凱旋門賞の栄光と種牡馬としての成功

ヴェイグリーノーブル (1965年 - 1989年) は、アイルランドで生まれ、イギリス、アイルランド、フランスで活躍した競走馬です。1968年の凱旋門賞優勝という輝かしい実績を残し、種牡馬としても大きな成功を収めました。その生涯は、決して平坦なものではありませんでした。

誕生と生い立ち

1965年5月15日、アイルランドのクリーボーイ牧場で、退役軍人ライオネル・ホリデーによって誕生しました。父はウィンストン・チャーチルが所有した名馬ヴィエナ。7勝を挙げたものの、大レースでの勝利には届きませんでした。母ノーブルラッシーも競走馬として2勝を収めた馬でした。興味深いことに、ヴェイグリーノーブル誕生の前年、ホリデーはヴィエナとの交配で奇形の仔馬を産ませた経験から、二度とヴィエナを自身の繁殖牝馬に交配させないと決意していました。しかし、すでにノーブルラッシーとの交配は決定済みだったため、やむを得ず交配が行われたのです。ヴェイグリーノーブルはこのような経緯で誕生しました。

ホリデーはヴェイグリーノーブル誕生の同年12月に亡くなり、息子ブルック・ホリデーが牧場と競走馬を相続しました。しかし、ヴェイグリーノーブルは臆病な性格で、近親に活躍馬が少なかったことからクラシック登録を見送られ、その才能が隠されたまま、競走馬としての道を歩み始めることになります。

競走馬時代の活躍

1967年、ニューキャッスル競馬場でデビュー。最初の2戦は2着に敗れましたが、10月にはアスコット競馬場のサンドウィッチステークスで12馬身差の大差勝ちを収め、その潜在能力の高さを見せつけました。続くオブザーヴァーゴールドカップでも、ゴール直前で進路を妨害される不利を克服して7馬身差で勝利を飾りました。この年の成績は4戦2勝。2歳フリーハンデではペティンゴに次ぐ2番手の評価を得るまでになりました。

年末には相続税の支払いのため、ニューマーケットのセリ市に出品されました。激しい競り合いを制したのは、アメリカの形成外科医ロバート・フランクリンでしたが、アメリカの富豪N・B・ハントとの共同所有という形で落札が確定しました。

ハントの意向により、ヴェイグリーノーブルの目標は凱旋門賞に定められ、フランスのエティエンヌ・ポレ厩舎へ移籍しました。1968年、移籍初戦のギシュ賞とリス賞を連勝。しかし、サンクルー大賞では3着に敗れ、ハントの怒りを買います。この結果を受け、騎手はウイリアムスンに交代されました。

サンクルー大賞での敗戦からの巻き返しを図り、シャンティ賞ではプール・デッセ・デ・プーランとイスパーン賞の優勝馬ゼダーンらを破り優勝。そして凱旋門賞へ。サーアイヴァー、リベロ、ルチアノなど強豪がひしめく中、1番人気に推されたヴェイグリーノーブルは、4番手からレースを進め、直線で力強く抜け出し、2着のサーアイヴァーに3馬身差をつけて圧勝しました。

ワシントンDCインターナショナルからの招待もありましたが、左回りコースへの不安から辞退。競走馬生活継続の意見もありましたが、陣営は凱旋門賞優勝を最後に競走馬を引退させ、種牡馬としての道を歩ませることを決定しました。

種牡馬としての成功

種牡馬となったヴェイグリーノーブルは、500万ドルのシンジケートが組まれ、ケンタッキー州のゲインズウェイ・ファームで繋養されました。その産駒はヨーロッパで活躍するものが多く、イギリスでは1973年と1974年にリーディングサイアーに輝き、フランスでも上位にランクインしました。日本にも、ゲイメセン、ミシシッピアン、エンペリーなど、多くの産駒が輸入され、日本の競馬界にも貢献しました。

1989年4月19日、種付けを終えた直後に心臓麻痺で急死。24歳でした。その偉大な功績は、ゲインズウェイ・ファームに埋葬されたその遺体とともに、後世に語り継がれることでしょう。

主な産駒

エンペリー (英ダービー、日本輸入種牡馬)
ダリア (キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス2回)
ジェットスキーレディ (英オークス)
エクセラー (パリ大賞典、ロワイヤルオーク賞、サンクルー大賞、ハリウッドゴールドカップ、ジョッキークラブゴールドカップ、カナディアンインターナショナルステークス)
ゲイメセン (サンクルー大賞、日本輸入種牡馬)
ミシシッピアン (グランクリテリウム、日本輸入種牡馬)
* ノーブルビジュー (ニュージーランドリーディングサイアー4回)

ヴェイグリーノーブルは、その競走馬としての才能、そして種牡馬としての成功によって、競馬史に名を刻んだ偉大なサラブレッドでした。彼の血統は、現在も世界中で活躍する多くの名馬に受け継がれています。

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