ヴォルタースドルフ軌道

ヴォルタースドルフ軌道（ドイツ語: Straßenbahn Woltersdorf）は、ドイツ東部のブランデンブルク州に位置するヴォルタースドルフ市で運行されている路面電車です。かつて東ドイツ時代に製造された2軸車が長く運行を担っていたことで知られており、その歴史を今に伝えています。2025年現在、軌道の施設はヴォルタースドルフ軌道有限会社が所有していますが、実際の列車の運行業務はシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道|シェーンアイヘ_リューダースドルフ軌道有限会社（Schöneicher-Rüdersdorfer Straßenbahn GmbH、SRS）に委託されています。

歴史

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ドイツの首都ベルリンの郊外にあたるヴォルタースドルフとその周辺地域は、労働者の居住地や行楽地として発展し、人口が急増しました。これに伴い、ベルリン方面とこれらの地域を結ぶ公共交通への需要が高まり、乗合馬車や蒸気船などが利用されるようになります。こうした状況の中、1905年頃から鉄道駅とヴォルタースドルフを結ぶ路面電車の建設計画が具体化しました。複数の案の中から経路が決定され、1912年にはベルリン Sバーンのラーンスドルフ駅（S-Bahnhof Rahnsdorf）からヴォルタースドルフへの路面電車の建設が認可されました。そして、1913年 5月17日、電動車4両と付随車6両の計10両の電車で営業運転が開始されました。

開業後、延伸計画も検討されましたが、1917年のミュッゲルゼー屋外プールへの延伸計画は資金不足で実現せず、1929年の大規模延伸計画も資金難や運河の橋梁建設の困難さから断念されました。結果として、ヴォルタースドルフ軌道の路線長は開業時の5.6kmのまま維持されることになります。一方で、駅や線路の整備、新型車両の導入、既存車両の更新など、近代化は着実に進められました。第二次世界大戦中の1944年には年間利用客数が史上最高の290万人に達しましたが、翌1945年 4月にはベルリン周辺での戦闘により運行が一時休止され、復旧は終戦後の7月となりました。

戦後、ヴォルタースドルフ軌道は東ドイツの公共交通網の一部となり、公営組織による運営に移行します。幾度かの組織変更を経て人民公社の管理下に入り、車両は東ドイツ各地からの譲渡車で増備されました。特に1977年以降は、東ドイツ製の2軸車、通称「ゴータカー」が導入され、ヴォルタースドルフ軌道の主力となります。また、人員不足から1969年には信用乗車方式が導入されました。

ドイツ再統一後の1991年、運営権は新たに設立されたヴォルタースドルフ軌道有限会社へ移管され、その後ヴォルタースドルフ市とオーダー＝シュプレー郡が株式を所有することになります。再統一後も車両や施設の更新が進められる一方、開業当時の車両をはじめとする旧型車両の動態保存活動も積極的に行われています。2020年からは、隣接するシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道|シェーンアイヘ_リューダースドルフ軌道を運行するSRSが、ヴォルタースドルフ軌道の運行業務を受託する形態となっています。

系統

ヴォルタースドルフ軌道は、2022年現在、ベルリン Sバーンのラーンスドルフ駅とヴォルタースドルフを結ぶ全長5.6キロメートルの路線です。ベルリン・ブランデンブルク運輸連合（VBB）に加盟しており、「87号線」として案内されています。

車両

ヴォルタースドルフ軌道では、営業用車両のほか、歴史的な動態保存車両などが活躍しています。

営業用車両

2025年 3月以降、定期列車の主力となっているのは、ポーランドのモダトランス社製超低床電車「モデルス・ガンマ（Moderus Gamma）」です。ヴォルタースドルフ軌道に導入された「LF 10 AC BD」型は、1両単独で運行可能な両運転台ボギー車で、車内全体が低床構造のバリアフリー対応です。車椅子やベビーカー、自転車用のフリースペースを備え、回生ブレーキによる省エネ、充電池による架線なし走行も可能です。州などの支援で2022年に導入契約、2024年に完成・お披露目され、2025年1月に定期運行開始、3月には全定期運用を担うようになりました。

過去の車両・予備車両

「モデルス・ガンマ」に置き換えられるまで主力だったのは、他都市からの譲渡車である2軸車でした。多くは更新済でしたが、バリアフリー非対応だったことが新型導入の一因です。置き換え後、大半は売却されましたが、一部車両は予備車として残されています。

動態保存車両

開業時や東ドイツ時代の貴重な車両が複数、動態保存されています。

2号車: 開業時車両（1913年製）を動態復元。
7号車: KSW試作車（1943年製）、動態保存。
22号車: KSW付随車（1944年製）、元シュトラウスベルク鉄道、動態復元。
24号車: 開業時付随車（1913年製）、唯一現存、動態保存。
* 218号車: 元ベルリン市電（1913年製）、動態復元。

その他

営業用以外に、高所作業車や雪かき車などの事業用車両も複数在籍しています。うち19号車は元ベルリン市電の車両です。

ヴォルタースドルフ軌道は、最新車両による快適なサービスを提供しつつ、歴史的な車両群を大切に守り伝える、地域に根差した個性的な路面電車です。

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