一木清直

一木清直：ガダルカナルで散った陸軍将校

一木 清直（いちき きよなお）は、1892年（明治25年）に生まれ、1942年（昭和17年）に戦死した大日本帝国陸軍の軍人です。最終階級は陸軍少将。陸軍士官学校を卒業（28期）後、歩兵将校としてキャリアを積み重ね、最終的にはガダルカナル島の戦いでその生涯を閉じました。

生い立ちと初期の軍歴

一木清直は、長野県下伊那郡市田村（現在の高森町）で、旧飯田藩の御典医を務めた加藤家の次男として生まれました。当初は加藤姓でしたが、後に一木修平の娘と結婚し、一木姓を名乗るようになります。1916年（大正5年）に陸軍士官学校を卒業し、陸軍歩兵少尉に任官。歩兵第57連隊に配属されました。その後、順調に昇進を重ね、1934年（昭和9年）には陸軍歩兵少佐、1941年には陸軍大佐に昇進します。

盧溝橋事件と中国での活動

1936年（昭和11年）には、支那駐屯歩兵第1連隊第3大隊長に就任し、中国戦線に投入されます。1937年（昭和12年）に勃発した盧溝橋事件では、牟田口廉也連隊長の指揮下で中国軍陣地への発砲命令を受けました。この際、彼は「本当に発砲しろという命令ですね」と確認の記録を残しており、慎重な性格が伺えます。

ミッドウェー作戦とガダルカナル島の戦い

1942年（昭和17年）、一木清直はミッドウェー作戦において、ミッドウェー島占領部隊の「一木支隊」支隊長に任命されます。しかし、ミッドウェー海戦での敗北により作戦は頓挫。その後、連合軍がガダルカナル島に上陸すると、一木支隊はガダルカナル島奪回作戦に投入されることになりました。

一木支隊の編成

一木支隊は、歩兵第28連隊を主力とし、工兵、速射砲隊、通信隊、衛生隊、輜重隊などが含まれた約2,400名の部隊でした。

歩兵第28連隊 本部
歩兵第28連隊 第1大隊
歩兵第28連隊 連隊砲第1中隊
歩兵第28連隊 速射砲中隊
工兵第7連隊 第1中隊
独立速射砲第8中隊
その他、通信隊、衛生隊、輜重隊

ガダルカナル島への投入

一木支隊はグアム島からトラック泊地へ輸送され、ここで先遣隊916名と後続部隊（第二梯団）約1500名に分割されました。一木大佐は先遣隊を率いて駆逐艦6隻に分乗し、1942年8月16日にトラック泊地を出撃。8月18日深夜にガダルカナル島タイボ岬に上陸しました。

イル川渡河戦（テナルの戦い）での壊滅

一木支隊先遣隊は、上陸後、ヘンダーソン飛行場奪回を目指して西進。8月20日夜にアメリカ海兵隊が守備するイル川西岸陣地への夜襲を敢行しましたが、アメリカ軍の迫撃砲や榴弾砲の集中射撃により大損害を受けます。さらに、アメリカ軍の戦車部隊の投入により包囲され、壊滅状態となりました。一木大佐も督戦中に戦死しました。この戦いは、アメリカ軍側では「テナルの戦い」として知られています。

一木大佐の最期

一木大佐の死因については、日本側の戦闘詳報では「連隊旗を奉焼し自決」とされていますが、実際に自決したかどうかは不明です。アメリカ側の記録では「戦死」とされており、正確な状況はわかっていません。

その後の評価

1943年（昭和18年）7月、陸軍省は一木大佐の少将進級を公表しました。一木支隊の全滅は、日本軍のガダルカナル島での敗戦を象徴する出来事として、その後の戦局に大きな影響を与えました。

エピソード

一木大佐の妻の親戚には、一木喜徳郎がおり、二・二六事件に際しては、喜徳郎の要請で軍事情勢に明るい臨時秘書として助言にあたっています。
盧溝橋事件当時、牟田口廉也連隊長の指揮下で中国軍陣地への発砲命令を受けた際、「本当に発砲しろという命令ですね」と確認の記録を残しています。この記録は、彼の慎重な性格を物語るものとして知られています。
ミッドウェー作戦では、辻政信によれば、海軍独力でのミッドウェー島占領は無理だろうと考え、応援に派遣された陸軍部隊であるという。

参考文献

阿川弘之『高松宮と海軍』中央公論新社
生出寿『悪魔的作戦参謀辻政信』光人社
倉橋友二郎『駆逐艦隊悲劇の記録』徳間書店
関口高史『誰が一木支隊を全滅させたのか：ガダルカナル戦と大本営の迷走』芙蓉書房
高松宮宣仁親王『高松宮日記』中央公論社
秦郁彦 編著『日本陸海軍総合事典』東京大学出版会
C・W・ニミッツ、E・B・ポッター『ニミッツの太平洋海戦史』恒文社
平塚柾雄『太平洋戦争裏面史』ビジネス社
「辻政信著「ガダルカナル」」『完本・太平洋戦争（上）』文藝春秋
防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書』朝雲新聞社
歴史群像編集部編『ミッドウェー海戦』学習研究社
歴史群像編集部編『ソロモン海戦』学習研究社

関連項目

盧溝橋事件
ガダルカナル島の戦い

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