一条信能

一条信能（いちじょう のぶよし）

一条信能は、鎌倉時代初期に活躍した公卿です。建久元年（1190年）に生まれ、承久3年7月5日（1221年7月25日）に処刑されました。藤原北家頼宗流の出身で、権中納言である一条能保を父に持ちます。母は江口の遊女であった慈氏です。信能には、忠俊という息子がおり、異母兄弟には高能、実雅、尊長がいました。

生涯

信能は、建久4年（1193年）に叙爵し、後鳥羽上皇の近臣として仕えました。建暦元年（1211年）には左近衛中将に任じられ、建保7年（1219年）には蔵人頭、承久2年（1220年）には参議へと昇進しました。後鳥羽上皇からの信頼も厚く、側近として重用されていたことが伺えます。

承久の乱と最期

後鳥羽上皇が源実朝暗殺事件後も鎌倉に留まる信能の解官を検討しているという噂が流れました。信能は北条政子に帰京の是非を相談しましたが、結局帰京し、上皇の側近としての地位を取り戻しました。その後、鎌倉幕府打倒の陰謀に加わり、承久3年（1221年）の承久の乱では、京方の軍勢を率いて、兄弟である尊長と共に芋洗方面の守備を担当し、幕府軍と戦いました。

しかし、京方は敗北し、信能は京へ戻った後、武家からの申請により京都守護に捕縛されました。本来であれば京で処刑されるはずでしたが、北条義時の指示により、遠山景朝に身柄を預けられ鎌倉へ護送されることになりました。護送中の7月5日、遠山景朝の領地である美濃国遠山荘の岩村に到着し、8月4日に斬首されました。処刑の際、信能は「種々法門皆解脱、無過念仏往西方。上尽一形至十念。三念五念仏来迎。乃至一念無疑心。」という念仏を三度唱えてから、刑に処されたと伝えられています。

終焉の地と顕彰

信能が処刑された場所である岐阜県恵那市岩村町には、『一条信能終焉の地』の史跡が残されています。また、同地にある巖邨神社（岩村神社）は、信能の墓を弔うために建てられた若宮社が起源となっています。

明治13年（1880年）には、明治天皇が山梨・三重・京都への巡幸の際、中山道を通った際に侍従の片岡源馬を岩村へ派遣し、信能の墓を視察させました。その結果、三條實美によって、信能の忠烈を称える文書と祭粢料10円が岐阜県に贈られました。翌明治14年（1881年）には、若宮社が巖邨神社（岩村神社）へと改称されました。さらに昭和3年（1928年）には、正三位が贈位されています。

現在、静岡県御殿場市にある藍澤五卿神社では、承久の乱で処刑された一条信能、源有雅、葉室宗行、藤原光親、藤原範茂が祀られています。

系譜

父：一条能保（1147-1197）
母：江口の遊女慈氏
妻：不詳
男子：一条忠俊

参考文献

岩村町史
恵那郡史. 恵那郡教育会. (1926). https://books.google.co.jp/books?id=uV2E5SkDPOMC (参照 2022-01-17)


信能は、鎌倉幕府との対立の中で非業の死を遂げましたが、その忠義は後世にまで語り継がれています。

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