一柳宣高

一柳宣高：美濃の武将、一柳氏の始祖

一柳宣高（ひとつやなぎ のぶたか）は、戦国時代の美濃国（現在の岐阜県）で活躍した武将であり、江戸時代に大名として名を残す一柳氏の始祖とされる人物です。彼は伊予河野氏の一族であると伝えられていますが、その正確な系譜関係は明らかになっていません。

生涯

『寛政重修諸家譜』（以下『寛政譜』）によると、宣高は伊予国の河野通直（弾正少弼）の子として生まれました。大永年間（1521年 - 1528年）に父が亡くなった後、伊予国を離れ、美濃国厚見郡西野村（現在の岐阜県岐阜市西野町）に移り住み、この地を領しました。

「一柳」姓の由来

宣高は、身分が衰退したことを恥じ、河野氏に代わる新たな称号を求めていました。ある時、「土岐の郡司」に謁見した際、その人物から古い名家であることを敬われました。宣高が称号を請うと、「土岐の郡司」は、庭の柳が鮮やかであることから「一柳」の姓を提案し、宣高はこれを喜んで受け入れたと伝えられています。

没年、享年、法名、葬地については記録がありません。ただし、『寛永諸家系図伝』（以下『寛永譜』）では、「土岐の郡司」を土岐氏とし、法名として「浄珍」が記されています。

系譜に関する異説と考証

江戸時代初期に編纂された『一柳家記』では、伊予から美濃に移住し、土岐氏との対話から一柳を名乗った人物を、宣高の祖父にあたる「通信」としています。この書には、通信－弾正直高－太郎左衛門宣高－又右衛門尉（又助）直高－直末、という系譜が記されています。

しかし、この時期の伊予河野家の家譜は錯綜しており、一柳氏の末裔である一柳貞吉も、一柳家に伝わる家譜と伊予河野家の系図との間に矛盾があることを認めています。貞吉の家譜では、宣高の父は弾正少弼通直ではなく、その父である刑部大輔通宣であるとされています。貞吉は、『一柳家記』にある「河野通信」を称した人物は時代が異なり、「通宣」の誤りであると考証しています。

貞吉は、河野氏研究者や西条藩史研究者の見解も検討しましたが、自家の伝承を尊重する姿勢を示しています。

事績

『一柳家記』によれば、太郎左衛門宣高は西野村を領し、後に浄珍と名乗りました。『美濃明細記』では、厚見郡今泉村・日野村、方県郡則武村の300貫を領有し、今泉村のうち西野村に住んでいたとされています。

『一柳家史紀要』では、「一柳」姓の由来に関する逸話は宣高と土岐頼芸の間の出来事としており、宣高は蹴鞠を得意としていたとされています。その後、宣高は土岐頼芸と行動を共にし、頼芸が大桑城に退くと、宣高も池田郡（または揖斐郡）に移ったと伝えられています。没年、享年、葬地は不明ですが、「浄伯」または「浄珍」という法名が伝わっています。

家族・親族

『寛政譜』には、子の一柳直高のみが記載されています。直高の子である一柳直末・一柳直盛兄弟は、豊臣秀吉に仕え、大名へと発展しました。

その他に、宣高の弟や子孫を称する家もあります。『美濃明細記』によれば、宣高には弟に三郎左衛門通方があり、兄と共に土岐頼芸に仕えて一柳と改称しました。その後、根尾板所村（現在の本巣市根尾板所）に定着し、その子孫は織田信長から根尾代官（根尾所司）に任じられたと伝えられています。

快川紹喜の弟子で妙心寺住持となった南化玄興も、宣高の子とする系図があります。豊臣政権下で大名となった一柳右近（右近将監、可遊）は、宣高の子である藤兵衛の子であるという系図も存在します。

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