万寿寺 (大分市)

万寿寺の歴史と文化

万寿寺は、大分県大分市金池町にある臨済宗妙心寺派の寺院で、山号を蔣山と称します。本尊には釈迦三尊像が祀られ、萬壽興聖禅寺とも呼ばれています。

伝説と創建

万寿寺の創建には、次のような伝説が語り継がれています。平安時代初期、この地域の有力者であった百合若大臣が不在の間に反乱が起こり、家臣の娘である万寿姫が妃の身代わりとして蔣ヶ池に沈められました。その万寿姫の菩提を弔うために建立されたのが万寿寺であると伝えられています。また、現在の山号である蔣山も、この蔣ヶ池に由来するとされています。

歴史的な変遷

実際には、1306年（徳治元年）に大友氏第5代当主の大友貞親が、足利泰氏の子で博多の承天寺住職であった直翁智侃和尚を開山として迎え、現在の元町に開かれたとされています。室町時代初期には十刹に列せられ、第6代当主大友貞宗の時代には、雪村友梅、天境霊致、中巌円月といった名僧が訪れました。

南北朝時代には、南朝方の菊池氏らがこの寺を本拠とし、高崎山城に拠点を置く北朝方と対峙しました。

万寿寺は、過去に何度も兵火や火災によって焼失しています。記録に残るだけでも、1486年（文明18年）、1492年（明応元年）、1514年（永正11年）、1586年（天正14年）の4度にわたる大火に見舞われました。特に1586年（天正14年）には、島津軍の豊後侵入によって府内の街とともに焼失し、その後長らく再建されることはありませんでした。

また、江戸時代の軍記物である『両豊記』によると、1570年（元亀元年）正月に、大友家の家臣をかくまったために大友義鎮（宗麟）によって焼き払われたとも伝えられています。

発掘調査と文化財

中世の府内中心部に位置する大友氏館跡および旧万寿寺跡では、近年発掘調査が進められています。旧万寿寺の遺構からは、「紅地金襴手宝相華文碗」や「褐釉陶器水注」など、貴重な陶磁器が発掘されており、これらの出土品は当時の文化や交流を知る上で重要な資料となっています。

2005年（平成17年）には、すでに国の史跡に指定されていた大友氏館跡に、万寿寺跡が追加指定され、史跡の名称も大友氏遺跡に変更されました。

現在の万寿寺

江戸時代に入ると、玉英という僧が府内藩初代藩主の竹中重利の許可を得て、現在の地に草庵を営みました。これを継いだ丹山が、第2代藩主竹中重義（重興）の援助を受けて、寛永年間（1624年-1644年）に堂宇を再建し、中興の祖とされています。

境内墓地には、かつて瀧廉太郎の墓や記念碑がありましたが、2011年（平成23年）3月に、親族の意向を受けて、瀧家の菩提寺である大分県速見郡日出町の龍泉寺に移設されました。

文化財と別院

万寿寺には、大分市登録有形文化財である万寿寺石造国東塔があります。

また、ニホンザルの餌付けで知られる高崎山自然動物園には、当寺の別院があります。この別院は、1936年（昭和11年）に、当時万寿寺の居士であった実業家・蔵内次郎兵衛が建設し、寄進したのが始まりです。

1952年（昭和27年）には、別院の大西真応和尚が当時大分市長であった上田保に協力して、別院境内でニホンザルの餌付けを開始しました。翌1953年（昭和28年）には、高崎山自然動物園が開園しました。1954年（昭和29年）には、本堂建設のため万寿寺別院からサル寄せ場の移転が申し入れられましたが、協議の結果、サル寄せ場を継続する代わりに、年間総売上の20%の寄進を受けることで合意しました。

大分市出身の建築家、磯崎新が大学在学中の1958年（昭和33年）に、上田保から万寿寺別院本堂の設計を依頼されたものの、実現には至りませんでした。

万寿寺は、その長い歴史の中で、多くの人々の信仰と文化に支えられてきました。現在も、地域の人々に大切にされ、その歴史を伝えています。

もう一度検索