万年通宝

万年通宝（まんねんつうほう）とは

万年通宝は、760年（天平宝字4年）に日本で鋳造・発行された銭貨であり、皇朝十二銭の2番目に位置づけられます。この銭貨は、当時の社会経済における重要な役割を担うべく登場しましたが、その流通は困難を極めました。

発行の背景

万年通宝は、和同開珎に続く新たな貨幣として導入されました。当時の日本では、銭貨の私鋳や偽造が横行しており、貨幣制度の安定が求められていました。こうした状況を打開するため、淳仁天皇の時代に、藤原仲麻呂（恵美押勝）によって、金貨の開基勝宝、銀貨の大平元宝とともに万年通宝が発行されました。

銭貨の仕様

独立行政法人造幣局の資料によれば、万年通宝は銅を主成分とし、量目は約3.75グラム、直径は約25.5～25.8ミリメートルです。銅の含有率は約77.98%であり、「萬年通寳」の銭文は、吉備真備が書いたと伝えられています。この銭文は、永遠に価値が保たれるようにとの願いが込められていたと考えられます。

流通の実態と課題

『続日本紀』によると、万年通宝は和同開珎の10倍の価値を持つとされました。具体的には、金貨：銀貨：銅銭の換算率が1：10：100と定められ、万年通宝1枚が和同開珎10枚と交換される予定でした。しかし、実際にはその価値が十分に浸透せず、新旧の銭貨が併存する状況となりました。また、万年通宝を模倣した私鋳銭が大量に作られ、市場の混乱を招きました。

鋳造期間の短さ

万年通宝の鋳造期間はわずか5年であり、古代銭貨の中では最も短い期間で鋳造が中止されました。これは、定められた価値で流通せず、私鋳銭の横行を食い止められなかったことが大きな要因です。市場の混乱を収拾することが困難であったため、政府は短期間で鋳造を中止せざるを得なかったと考えられます。

まとめ

万年通宝は、貨幣制度の安定を目指して発行されましたが、その理想とは裏腹に流通が安定せず、短期間でその役割を終えました。この銭貨の歴史は、当時の経済状況や貨幣制度の課題を映し出す鏡として、後世に教訓を与えています。

関連項目

開基勝宝
大平元宝

もう一度検索