三善為康

三善為康

三善為康（みよし の ためやす）は、平安時代後期の貴族であり、算道に優れた人物です。主税権助・三善為長の養子となり、三善氏を継ぎました。官位は正五位下・諸陵頭にまで昇り、算博士としても活躍しました。また、『朝野群載』や『懐中歴』、『掌中歴』など、多くの著作を著したことでも知られています。

生涯

越中国射水郡の豪族、射水氏の出身です。治暦3年（1067年）に上洛し、三善為長に算道を学び、その才能を認められて養子となりました。当時の貴族社会では、地方出身者が中央の官僚となるためには、特定の氏姓を得る必要がありました。そのため、養子縁組は、後継者を求める師匠と、中央での活躍を目指す弟子との思惑が合致した結果として行われたと考えられています。

為康は紀伝道も修めましたが、省試に何度も落第しました。後に、大学寮の紀伝道教育が漢詩を弄ぶだけのものになっていると批判しています。康和2年（1100年）には少内記に任官し、堀河天皇の時代には算博士・諸陵頭を兼任しました。永久4年（1116年）には『朝野群載』を著し、永久5年（1117年）には予報された月食を否定し、的中させたことで知られています。

地方官としては、尾張介や越後介を歴任しました。大治4年（1129年）には81歳で正五位下に叙せられました。また、暦道家が唱えた退閏（改暦）に対し、宿曜道の隆算を用いて反論しました。晩年には阿弥陀信仰を深め、大江匡房の『続本朝往生伝』を引き継ぐ形で『拾遺往生伝』を著し、さらに『続拾遺往生伝』も執筆しました。保延5年（1139年）8月4日、91歳で亡くなりました。臨終の際には、阿弥陀如来に引接を願いながら往生を遂げたと言われています。

人物と業績

為康は官歴には恵まれなかったものの、博識であり、晩年まで多くの著作を著しました。代表的なものには、『朝野群載』（28巻）、『懐中歴』（10巻）、『掌中歴』（4巻）などがあります。『懐中歴』と『掌中歴』は散逸しましたが、鎌倉時代に編纂された『二中歴』として、その一部が残っています。また、児童向けの啓蒙書として『続千字文』や『童蒙頌韻』を著し、数学書『三元九紫法』も執筆しましたが、こちらは散逸しています。

若い頃から観音菩薩を信仰し、後に浄土教に帰依しました。仏教に関する著作も多く、『拾遺往生伝』、『続拾遺往生伝』のほか、『仏法感験記』、『六波羅蜜寺縁起』、『叡山根本大師伝』、『世俗往生決疑』（散逸）、『金剛般若験記』（散逸）などがあります。

官歴

康和2年（1100年）：正六位上、少内記
日付不詳：算博士
永久5年（1117年）：尾張介
保安2年（1121年）：尾張介を去る（任期満了）
天治元年（1124年）：越後介
日付不詳：諸陵頭
天治2年（1125年）：諸陵頭、算博士、越後介
大治4年（1129年）：正五位下
大治5年（1130年）：越前権介
保延5年（1139年）：卒去

系譜

父：不詳
母：不詳
養父：三善為長
妻：不詳
養子：三善行康

参考文献

竹内理三「古文書学からみた『朝野群載』」（『新訂増補国史大系月報』9）
弥永貞三「朝野群載」（『国史大系書目解題』上巻）
木本好信「『朝野群載』と三善為康」（『平安朝日記と逸文の研究』、おうふう、1987年）
宮崎康充編『国司補任 第五』続群書類従完成会、1990年

関連項目

四天王寺
* 将棋

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