三宅尚斎

三宅尚斎

三宅尚斎（みやけ しょうさい）は、寛文2年（1662年）に生まれ、元文6年（1741年）に没した江戸時代前期の儒学者です。名は重固、字は儀左衛門のちに丹治と改めました。佐藤直方、浅見絅斎と共に、山崎闇斎門下の三傑として知られています。

生涯

播磨国（現在の兵庫県）にて、丹波篠山藩家臣・平出重直の三男として生を受けました。幼少の頃、父の意向により医術を学びましたが、19歳で山崎闇斎に入門し儒学を志します。この時、姓を「三宅」に改めました。

元禄2年（1689年）に江戸へ出て、翌年には武蔵忍藩（現在の埼玉県行田市）の藩主、阿部正武に仕官しました。10年間忠実に職務をこなし、主君に諫言することも度々ありましたが、その意見が容れられないことを憂い、病を理由に三度も辞職を願い出ます。

宝永4年（1707年）には、主君の怒りを買い忍城に幽閉されるという憂き目に遭います。友人である三輪執斎や細井広沢らが赦免を嘆願しましたが叶わず、3年後、五代将軍徳川綱吉の逝去に伴う大赦によってようやく釈放されました。宝永7年（1710年）に京都へ移り住み、儒学の教授を開始します。

享保18年（1733年）には、中国の小学・大学に倣い、教育機関である培根堂・達支堂を設立しました。多くの諸侯から講義を依頼され、特に土佐藩からは世子の教育係として迎えられました。墓所は京都市の金戒光明寺にあります。

尚斎の門下からは、久米訂斎、井沢灌園、石王塞軒、多田東渓、留守希斎、蘆野東山、蟹養斎、玉田黙斎、菅野兼山、山宮雪楼など、多くの儒学者が輩出されました。

学問

尚斎の学問は、朱子学の厳守に重きを置いており、独創性という点では特筆すべきものはありません。同門の三輪執斎が王陽明の学説、三宅石庵が陸象山の学説、玉木葦斎が神道に傾倒したことを批判しましたが、彼らとの交友関係を絶つことはなく、温厚な人格者として周囲から敬意を集めました。

しかしながら、尚斎は易に基づく占筮に長けており、独自の神秘主義的な思想を持っていたことが窺えます。その学問は多岐にわたり、単なる朱子学者としてのみ捉えることはできません。

著作

『狼疐録（ろうちろく）』3巻
『默識録』
『氏族弁証附録』
『同姓為後称呼説』
『尚斎語録』

参考文献

伴蒿蹊『近世畸人伝』巻2
* 原念斎『先哲叢談』巻の5

三宅尚斎は、山崎闇斎門下の俊英として、また教育者として、江戸時代の学問に大きな影響を与えた人物です。彼の学問に対する真摯な姿勢と、温厚な人柄は、多くの人々に感銘を与え、今もなお語り継がれています。

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