佐藤直方

佐藤直方：普遍的な理を求めた江戸時代の儒学者

佐藤直方（さとう なおかた）は、慶安3年（1650年）に生まれ、享保4年（1719年）に没した江戸時代の儒学者です。幼名を彦七といい、通称は五郎左衛門、三郎左衛門と称しました。備後福山藩士の家に生まれ、稲葉迂斎や跡部良顕といった門人を育てました。

学問への志と山崎闇斎との決別

学問を志し京に上った佐藤直方は、山崎闇斎の門下に入り、その知識を深めました。浅見絅斎、三宅尚斎と並び、崎門の三傑と称されるほどに台頭しましたが、闇斎が唱えた垂加神道に批判的な立場を取ったため、袂を分かつこととなりました。その後、江戸へ移り住み、福山藩や厩橋藩主酒井忠挙などに招聘され、講釈に励みました。

晩年は、享保3年（1718年）に致仕し、神田紺屋町に居を構えます。翌年、唐津藩主土井利実に講釈を行うため赴く道中、病に倒れ、そのまま亡くなりました。墓所は赤羽橋の瑠璃光寺にあり、戒名は一貫了道居士です。

普遍的な理の探求

佐藤直方の思想は、日本の神々のみを中心とする考え方に反対し、普遍的な宇宙の理（天理・公理）に基づいて物事を考えるべきだと説きました。彼は、「自分が生まれた国や父母を、薬売りのようにわがままに自慢するのでは、天下の公理とはいえない」と述べ、国家や民族を超えた普遍性を重視しました。

また、天皇についても、神秘的な見地からの崇拝を排除し、儒教的な徳を失えば、天皇といえども天によって罰せられるべきであるという、朱子学原理主義的な見地から批評を行いました。この思想は、垂加神道を唱えた師・山崎闇斎との大きな違いとなりました。

赤穂浪士への批判

赤穂事件が起こった際、大衆や多くの知識人が仇討ちを義挙と礼賛する中で、佐藤直方は幕府を顧みない愚挙に踏み切った逆臣であるとして赤穂浪士を弾劾しました。この議論は、著書「四十六士論」にまとめられています。同書には、三宅尚斎が送った質問状に佐藤直方が回答する「重固問目＜先生朱批＞」という項も含まれています。

人となりとエピソード

佐藤直方は、豪放磊落な人柄で、清貧な生活を好んだと伝えられています。江戸に在住していた際には困窮していた生活を送っていたことを示すエピソードも残されています。

著書

四十六士論 - 赤穂浪士批判
中国論 - 弟子によってまとめられたもの
華夷論断


参考文献
『江戸文人辞典』 東京堂出版、ISBN 4-490-10427-8
* 山本七平『現人神の創作者たち』（上下、ちくま文庫）

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