阿部正武

阿部正武は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した大名であり、老中を務めた人物です。武蔵忍藩の第3代藩主として、藩政を担う一方で、幕府の要職である老中として、数々の重要政策に関与しました。

生涯

1677年、父である阿部正能の隠居に伴い家督を相続し、忍藩8万石の藩主となりました。この際、弟たちに領地を分与しています。1680年には奏者番兼寺社奉行に任じられ、翌年には老中に抜擢されました。老中としては、越後騒動における将軍徳川綱吉の親裁を補佐し、その功績から綱吉の信任を得て、幕府の重要政策を担うことになります。具体的には、武家諸法度天和令の作成、貨幣改鋳、湯島聖堂の建設などに関わりました。また、赤穂事件にも関与するなど、多岐にわたる分野でその手腕を発揮しました。藩政においては、儒学者である三宅尚斎を招き、藩の学問の発展に貢献しました。また、忍城の修築にも着手し、櫓を築造するなど、藩の城郭の強化にも尽力しました。

27年間の藩主在任後、1704年に56歳で亡くなりました。跡を継いだのは嫡男の阿部正喬です。

人物・逸話

阿部正武は、その人柄と能力から、当時の人物評である『土芥寇讎記』において、「善人の良将」と評されるなど、高く評価されていました。また、学問を好んだ人物としても知られており、家臣に古記録類の収集を命じ、自らも『武徳大成記』という書物を著しました。将軍綱吉も度々阿部正武の邸宅を訪れて講義を交わしたという逸話が残されており、その学識の深さが伺えます。

略歴

1649年（慶安2年）：誕生
1677年（延宝5年）：家督相続
1680年（延宝8年）：奏者番兼寺社奉行に就任
1681年（天和元年）：老中に就任
1684年（貞享元年）：江戸城内にて発生した大老堀田正俊殺害事件で、大久保忠朝、戸田忠昌と共に稲葉正休を討つ
1686年（貞享3年）：1万石加増により9万石を領有
1694年（元禄7年）：1万石加増により10万石を領有
1704年（宝永元年）：死去

官位および位階

1663年（寛文3年）：従五位下・美作守
1681年（天和元年）：豊後守、従四位下・侍従

系譜

父：阿部正能
母：牧野信成の娘
正室：井伊直澄の養女（井伊直縄の娘）
側室：林氏
子女：
阿部正喬（長男） - 正室の子
阿部金助（次男）
阿部正晴（三男） - 側室の子
阿部正府（四男）
竹姫 - 松平正容室
戸田光煕室

阿部正武を演じた俳優

阿部正武は、数々の時代劇で描かれており、以下の俳優が演じました。

永田光男（テレビドラマ『水戸黄門 第1部』、1969年）
有馬昌彦（テレビドラマ『水戸黄門 第4部』、1973年）
志摩靖彦（テレビドラマ『水戸黄門 第5部』、1974年）
森塚敏（テレビドラマ『元禄太平記』、1975年）
坂口祐三郎（テレビドラマ『水戸黄門 第11部』、1980年）
可知靖之（テレビドラマ『元禄繚乱』、1999年、テレビドラマ『水戸黄門 第29部』、2001年）
有川博（テレビドラマ『水戸黄門 第31部』、2002年）
* 大竹修造（テレビドラマ『水戸黄門 第42部』、2010年）



阿部正武は、藩主として、また老中として、江戸時代前期の政治に大きな影響を与えた人物であり、その功績は今日まで語り継がれています。

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