三室戸家

三室戸家：名家から子爵家へ、そして教育への貢献

三室戸家は、由緒ある公家・華族の家系です。その起源は、藤原北家日野流柳原家の庶流に遡り、権中納言三室戸誠光を祖として江戸時代前期に創設されました。公家としての家格は名家とされ、江戸時代の家禄は130石でした。家紋は鶴丸を用いていました。

明治維新後の華族制度成立に伴い、三室戸家も華族に列せられました。明治17年（1884年）の華族令施行により五爵制が導入されると、旧堂上家として三室戸雄光が子爵位を授けられました。雄光は四帝に仕えた老臣として知られ、宮中杖を賜り、従一位に叙せられました。

2代当主の和光は伊勢神宮大宮司を務め、その息子である3代当主の敬光は宮内省官僚を経て、貴族院の子爵議員に当選しました。貴族院では、右派議員として知られ、昭和9年（1934年）には、貴族院本会議で中島久万吉商工相の「足利尊氏論」を批判し、中島の辞職に追い込むなど、政治的にも影響力を持つ存在でした。また、岡田内閣に国体明徴声明を出させるなど、積極的な政治姿勢を見せています。

敬光は政治活動のみならず、教育事業にも尽力しました。東京高等音楽学院の院長を務め、昭和9年には同学院大塚分教場の創設にも携わりました。

昭和13年（1938年）、敬光の息子である為光は、大塚分教場を継承し、独立して東邦音楽学校を設立しました。これは後に東邦音楽大学・東邦音楽短期大学へと発展し、さらに東邦音楽大学附属東邦中学校・高等学校の設立にも繋がっています。現在も、為光の息子である東光が東邦音楽大学の学長を務めており、三室戸家の教育への貢献は現代まで続いています。

このように、三室戸家は、華族としての歴史だけでなく、教育分野への貢献という側面も持ち合わせています。公家としての伝統と、近代日本の政治・教育に影響を与えた家系としての側面を併せ持つ、非常に興味深い家系と言えるでしょう。 その歴史は、単なる家系の歴史にとどまらず、日本の近代史を理解する上で重要な要素となっています。

参考文献

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』リブロポート、1994年
太田亮 著「国立国会図書館デジタルコレクション 三室戸　ミムロド」、上田萬年、三上参次 監修 編『姓氏家系大辞典』 第1巻、姓氏家系大辞典刊行会、1934年
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社〈中公新書1836〉、2006年
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター〈日本人物誌叢書7〉、1990年

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