中島久万吉

中島久万吉：激動の時代を駆け抜けた政治家・実業家

中島久万吉は、1873年（明治6年）に生まれ、1960年（昭和35年）に没した日本の政治家、実業家であり、男爵の爵位を持つ人物です。彼は、内閣総理大臣秘書官、古河電気工業社長、商工大臣、東京地下鉄道社長、国際電信電話会長、文化放送会長など、多岐にわたる要職を歴任し、日本の近代化と発展に大きく貢献しました。

生い立ちと教育

中島の父は、土佐藩を脱藩した尊王の志士で、後に初代衆議院議長、イタリア公使を務めた中島信行です。母は陸奥宗光の妹で、継母には女流民権活動家・文学者の岸田俊子という、著名な血筋と文化的な環境の中で育ちました。11歳で慶應義塾幼稚舎に入学し、明治学院では島崎藤村と文学雑誌『菫草』を主宰し、島崎が文学者になるきっかけを作りました。また、高度な英語力とキリスト教的な霊性を身につけました。

その後、慶應義塾本科に進むも、勉学よりも遊びに熱中して除籍処分を受けましたが、帰郷後に再度上京し、高等商業学校（現一橋大学）を卒業しました。卒業後は、東京株式取引所理事長秘書役、三井物産専務理事秘書役などを経て、内閣総理大臣秘書官として長く務めました。

実業家としての活躍

中島は、古河コンツェルンに入り、その多角化を推進しました。古河電気工業や横浜護謨などの設立に尽力し、財閥外でも日本工業倶楽部の設立に関わるなど、財界人として独自の地位を築きました。戦後には、日本貿易会会長に就任し、GHQの政策に対し多くの提言を行いました。また、日本青年連盟会長、日本外政学会会長、日本工業倶楽部評議会会長、如水会理事など、幅広い分野で活躍しました。

文化人としての側面

中島は、俳句や漢詩を嗜み、水泳、野球、登山を趣味とするなど、多彩な才能を持っていました。彼の文化的な側面は、単なる実業家や政治家としての顔だけではない、人間的な魅力を感じさせます。

商工大臣辞任と足利尊氏論

1934年（昭和9年）、中島は斎藤実内閣の商工大臣に就任しましたが、製鉄合同問題や台湾銀行所有株券譲渡問題に加え、足利尊氏論を巡る批判を受け、辞任に追い込まれました。この足利尊氏論とは、中島が過去に発表した足利尊氏に対する再評価を求める内容が、皇国史観を重んじる当時の軍部や右翼から攻撃を受けたものです。この騒動は、政治に対する軍部の介入と右翼の台頭を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。また、帝人事件に連座して起訴されたものの、後に無罪が確定しています。

その他の活動

中島は、東京地下鉄道社長を務めるなど、インフラ整備にも貢献しました。また、明治天皇御生誕百年記念国民大会委員長、国際電信電話会長、明治学院大学名誉学長、文化放送会長など、様々な分野で活躍しました。その功績から、1960年（昭和35年）に死後、勲一等旭日大綬章を授与されました。

まとめ

中島久万吉は、激動の時代を駆け抜けた政治家であり、実業家であり、文化人でした。彼の多岐にわたる活動は、日本の近代化と発展に大きく貢献し、その足跡は今もなお、多くの人々に影響を与え続けています。彼の生涯は、日本の近現代史を語る上で欠かすことのできない重要な要素となっています。

略歴

1873年（明治6年） - 横浜で出生。
1884年（明治17年）頃 - 慶應義塾幼稚舎入学。
1886年（明治19年）頃 - 東京一致英和学校予備門入学、耕余塾在籍。
1887年（明治20年） - 明治学院普通学部本科入学（第一期、同期に島崎藤村ら）。
1890年（明治23年）頃 - 明治学院中退。
1891年（明治24年）頃 - 慶應義塾本科（現・慶應義塾大学）除籍。
1892年（明治25年） - 高等商業学校予備門進学、高等商業学校（現・一橋大学）予科入学。
1894年（明治27年） - 高等商業学校本科入学。
1897年（明治30年） - 高等商業学校本科卒業、東京株式取引所入社（大江卓秘書役）。
1899年（明治32年） - 三井物産入社（益田孝秘書役）、男爵受爵。
1900年（明治33年） - 京釜鉄道調査員。
1901年（明治34年） - 第1次桂内閣内閣総理大臣秘書官。
1904年（明治37年） - 貴族院男爵議員（ - 1911年）。
1906年（明治39年） - 第1次西園寺内閣内閣総理大臣秘書官。
1908年（明治41年） - 横濱電線製造常務、天竜運輸取締役。
1911年（明治44年） - 横濱電線製造社長。
1917年（大正6年） - 横濱電線製造会長、橫濱護謨製造会長、古河合名理事、日本工業倶楽部設立、同専務理事。
1918年（大正7年） - 学校法人城西学園創立（現：城西大学附属城西中学校・高等学校、城西放射線専門学校）。
1919年（大正8年） - 貴族院議員、日本運送社長。
1920年（大正9年） - 古河電気工業、横浜護謨工業、富士電機等の古河コンツェルンを創立、古河電気工業社長。
1923年（大正12年） - 国際運送会長。
1926年（大正15年） - 国際運送会長、合同運送社長。
1927年（昭和2年） - 池上電気鉄道社長。
1931年（昭和6年） - 秩父セメント取締役。
1932年（昭和7年） - 商工大臣（斎藤実内閣）。
1934年（昭和9年） - 足利尊氏論で商工大臣辞任、帝人事件にて起訴、収監。
1937年（昭和12年） - 同無罪判決。
1939年（昭和14年） - 貴族院議員任期満了。
1940年（昭和15年） - 東京地下鉄道社長。
1947年（昭和22年） - 日本貿易会会長。
1952年（昭和27年） - 明治天皇御生誕百年記念国民大会委員長。
1953年（昭和28年） - 国際電信電話会長、明治学院大学名誉学長、日本外政学会会長。
1955年（昭和30年） - 文化放送会長。
1960年（昭和35年） - 葉山町の自宅にて老衰のため死去。

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