三浦徹 (牧師)

三浦 徹

三浦 徹（みうら とおる、嘉永3年9月17日（1850年10月22日） - 大正14年（1925年）9月30日）は、明治という激動の時代に日本のキリスト教界で重要な役割を果たした牧師です。日本基督教会の働き人として、伝道と教会形成に生涯を捧げました。また、彼の血縁からは、音楽家の納所弁次郎（義兄）、文部大臣を務めた永井道雄（孫）、政治家の鮫島宗明（曽孫）といった、各界で活躍する人物が出ています。

生涯の始まりと信仰への導き

1850年、沼津藩士であった三浦千尋の子として江戸に生まれました。若い頃はフランス兵法を学びましたが、次第に英学へと関心を移し、米国長老教会の宣教師クリストファー・カロザースと交流を持つようになります。これが、三浦がキリスト教と出会う最初のきっかけとなりました。

その後、スコットランド一致長老教会の宣教師ロバート・デイヴィッドスンに日本語を教える機会を得ました。デイヴィッドスンとの同居を始めてわずか10日という異例の早さで、彼はデイヴィッドスンから洗礼を受け、キリスト教徒となりました。この出来事は、三浦にとって人生の大きな転換点となります。

入信後、三浦は積極的に教会活動に関わるようになります。1874年（明治7年）には、同じスコットランド一致長老教会の宣教師ヘンリー・フォールズが築地に設立を計画していた病院（後の築地病院）のために、自身の南小田原町にあった自宅をその敷地として提供しました。翌1875年には、スコットランド一致長老教会によって設立された女学校（通称：三浦女学校）において、日本人として初めて校主を務めました。

1876年（明治9年）には、宣教師たちが設立した東京一致神学校に第一期生として入学し、牧師となるための専門的な学びを深めました。明治維新を経て、三浦の旧主である水野忠敬が上総菊間に転封された際、デイヴィッドスンや重富柳太郎と共に、千葉県の房総方面への伝道旅行にも出かけ、地方におけるキリスト教伝道の可能性を探りました。

牧師としての働き

東京一致神学校を卒業した1879年（明治12年）、三浦は大きな責任を担うことになります。それは、2年前にデイヴィッドスンによって開拓されていた両国教会の初代日本人牧師に就任することでした。この教会で、彼は日本のキリスト者たちの精神的な拠り所を築くために尽力しました。

私生活では、1880年（明治13年）11月11日に納所りうと結婚しました。りうは後の著名な作曲家となる納所弁次郎の姉にあたります。また、三浦は教界の指導者としても認められており、1883年（明治16年）5月には新栄教会で開催された第三回全国基督教信徒大親睦会に幹部の一人として参加し、日本のプロテスタント諸派間の連携強化にも貢献しました。

1888年（明治21年）、三浦は両国教会での働きを他の牧師に委ね、新たな伝道の地へと向かいます。米国長老教会のエドワード・ローゼイ・ミラー宣教師夫妻と共に、東北地方の主要都市である盛岡での伝道に乗り出しました。盛岡では、ミラー宣教師と協力してハイデルベルク信仰問答を日本語に翻訳し出版するなど、神学的教育にも力を注ぎました。

晩年

盛岡での伝道は順調に進んでいましたが、1900年（明治33年）に入ると、妻りうの肺疾が悪化し、温暖な地での転地療養が必要となりました。このため、一家は静岡県三島に移住することになり、三浦は盛岡の地を離れることになりました。

その後、三浦がかつて情熱を注いだ盛岡教会は発展を続け、1912年（大正元年）10月15日には創立25周年記念式典が開催されました。三浦も、共に働いたミラー宣教師や神学校時代の同窓である井深梶之助らと共に招かれ、盛岡での働きが実を結んだことを喜び合いました。

三浦 徹は、1925年（大正14年）9月30日にその生涯を終えました。明治期の日本において、黎明期のキリスト教界を支え、東京から東北まで広く伝道を行った彼の働きは、今日の日本におけるキリスト教の基盤を築く上で重要なものでした。

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