三笠 (戦艦)

戦艦「三笠」：歴史と保存の軌跡

概要

「三笠」は、敷島型戦艦の四番艦として、イギリスのヴィッカース社で建造され、1902年（明治35年）に竣工しました。艦名は奈良県の三笠山（春日山）に由来します。日露戦争（1904年-1905年）では連合艦隊旗艦として活躍し、東郷平八郎司令長官が座乗、日本海海戦を勝利に導きました。佐世保港での爆沈事故、関東大震災での着底を経て、ワシントン海軍軍縮条約により除籍されましたが、その功績を記念し、横須賀で記念艦として保存されることになりました。現在は防衛省が所管し、三笠公園に静態保存されています。

建造

日清戦争後、ロシア帝国に対抗するため、日本海軍は軍拡を進めました。「三笠」は、その一環である『六六艦隊計画』の最終艦として、イギリスのヴィッカース社に発注されました。

1899年（明治32年）1月24日に起工し、1900年（明治33年）11月8日に進水。1902年（明治35年）3月1日に日本海軍へ引き渡されました。建造費用は船体88万ポンド、兵器32万ポンドでした。回航員には、後の真珠湾攻撃時の駐米大使、野村吉三郎も含まれていました。

戦歴

1903年（明治36年）12月28日、「三笠」は連合艦隊旗艦となりました。日露戦争では、旅順口攻撃や黄海海戦に参加。黄海海戦では、後部砲塔で爆発事故が発生し、伏見宮博恭王も負傷しました。

1905年（明治38年）5月27-28日の日本海海戦では、連合艦隊は敵前T字戦法を採用し、バルチック艦隊を撃破。「三笠」艦上から東郷平八郎司令長官がZ旗を掲げ、「皇国の興廃此の一戦に在り、各員一層奮励努力せよ」と訓示し、全艦隊の士気を高めました。この海戦で「三笠」も損傷し、多数の死傷者を出しました。

日露戦争終結直後の1905年（明治38年）9月11日、佐世保港内で後部弾薬庫の爆発事故により沈没。339名の死者を出しました。事故原因は諸説あります。

1906年（明治39年）8月14日に浮揚され、修理後、1908年（明治41年）4月24日に第一艦隊旗艦として現役復帰。

第一次世界大戦では、日本海などで警備活動に従事。シベリア出兵支援にも参加し、水上飛行機の臨時搭載も行いました。

1921年（大正10年）9月1日、海防艦に類別変更。

廃艦と保存

ワシントン軍縮条約により廃艦が決定。1923年（大正12年）9月1日、関東大震災で着底。9月20日に除籍されました。解体予定でしたが、国民の保存運動により、記念艦として保存されることになりました。

1925年（大正14年）1月に横須賀での保存が閣議決定。船体の外周部に砂が投入され、下甲板にコンクリートが注入されました。1926年（大正15年）11月12日、三笠保存記念式が行われました。

戦後の荒廃と復元

太平洋戦争後、連合国軍占領下でソ連から解体処分要求が出されましたが、アメリカ軍の尽力で免れました。しかし、金属やチーク材の盗難が相次ぎ、荒廃が進みました。艦上に娯楽施設「キャバレー・トーゴー」が開設されたり、水族館が設置されたりしました。

惨状を見たイギリス人、ジョン・S・ルービンの投書や、東郷平八郎を敬愛するニミッツ元帥の寄付などにより、国内外で復元保存運動が盛り上がりを見せました。

1959年に復元工事が始まり、1961年5月27日に復元記念式が挙行されました。アメリカ海軍からのテーブルなどの返還や、チリ海軍からの部品寄贈もありました。

現在

「三笠」は世界で唯一現存する前弩級戦艦です。複製された部分も多いですが、一部に当時のチーク材や鋲接構造が残っています。艦内は資料展示室や上映室として利用されています。

防衛省が所有する行政財産として、海上自衛隊横須賀地方総監部が管理しています。自衛隊員の研修や清掃活動も行われています。

その他

三笠刀: 黄海海戦で破壊された主砲の残鉄で作られた刀。
マリンクロノメーター: 1918年製で、天賞堂が修理し返還。
* イギリスとの友誼: ヴィッカース社は「金剛」建造時に技術供与。

「三笠」は、日本の近代史における重要な遺産であり、平和の象徴として、その姿を今に伝えています。

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