三野村利左衛門

三野村利左衛門：三井財閥中興の祖

三野村利左衛門（みのむら りざえもん、1821年12月4日 - 1877年2月21日）は、幕末から明治時代初期にかけて活躍した三井組の大番頭であり、三井財閥の中興の祖として知られています。元名は利八といいました。

生い立ちと初期の活躍

三野村利左衛門の出自については、正確な史料は残されていません。本人の口述によると、文政4年（1821年）に庄内藩士である関口彦右衛門為芳の三男として生まれたとされています。しかし、文政10年（1827年）に父が浪人となったため、苦難の少年時代を送りました。天保10年（1839年）に江戸へ出て、深川の干鰯問屋で奉公した後、小栗忠高の中間（ちゅうげん）となりました。弘化2年（1845年）には、菜種油や砂糖を販売する紀ノ国屋の美野川利八の婿養子となり、利八の名を継ぎました。その後、地道に資金を蓄え、安政2年（1855年）には両替株を買って両替商となりました。

三井家との関わりと功績

万延元年（1860年）、旧知の小栗忠順から小判吹替の情報を事前に得て、天保小判の買い占めによって巨利を得ました。この情報を三井両替店にも売り込み、「紀ノ利」として重宝されたといいます。後に、三井家は勘定奉行である小栗との繋がりを見込み、幕府から命じられた御用金50万両の減免交渉を三野村に依頼しました。その結果、返済額を18万両とし、3年に渡る分納とすることに成功しました。この功績により、慶応2年（1866年）に三井家に雇われ、小栗と三井の間のパイプ役として「通勤支配」（取締役）に任命され、三野村利左衛門と改名しました。この新しい姓は、三井の「三」、紀ノ国屋の姓である美野川の「野」、そして亡父の養家の姓である木村の「村」から取られたと言われています。

慶応4年（1868年）1月、小栗忠順が失脚すると、幕府の命運を察知し、新政府への資金援助を開始するよう三井組に働きかけ、動乱を乗り切ることに成功しました。これには小栗本人の助言があったとする説もありますが、真偽は定かではありません。

明治6年（1873年）には小野組と共に第一国立銀行を設立し、明治7年（1874年）に小野組が経営破綻により銀行経営から手を引くと、明治9年（1876年）には日本初の民間銀行である三井銀行の設立を実現しました。

死去とその後

明治10年（1877年）に胃癌のため57歳で亡くなりました。墓所は杉並区真盛寺にあります。利左衛門の死後、婿養子の三野村利助（1843－1901）が三井銀行の実質的な経営者となり、その事業を引き継ぎました。大正4年（1915年）、従五位を追贈されました。

人物像

幼少時代に諸国を流浪したため、読み書きは得意ではありませんでしたが、時局を見抜く力、行動力、組織をまとめる能力に長けていました。渋沢栄一は三野村を「無学の偉人」と称賛しました。

鳥羽・伏見の戦い後、江戸城における評定で新政府軍との交戦継続を主張して罷免された小栗忠順に対し、罷免後に身の危険が迫っていると察し、米国への亡命を勧めたとされています。戊辰戦争中に小栗忠順が捕縛され処刑された後、三野村は小栗の家族を日本橋浜町の別邸に匿い、明治10年（1877年）に亡くなるまで終生、小栗の家族の面倒を見続けました。小栗家は忠順の遺児である国子が成人するまで、駒井朝温の三男で忠道の弟である忠祥が継ぎました。三野村利左衛門の死後も、三野村家が母子の面倒を見ていましたが、明治18年（1885年）に道子が亡くなると、国子は親族である大隈重信に引き取られました。大隈の勧めにより矢野龍渓の弟である貞雄を婿に迎え、小栗家を再興しました。

親族

田村利七（娘婿）

登場作品

テレビドラマ
勝海舟（1990年、日本テレビ年末時代劇スペシャル、演：東野英心）
青天を衝け（大河ドラマ、NHK、2021年、演：イッセー尾形）
舞台
『猛き黄金の国 -士魂商才!岩崎彌太郎の青春-』（宝塚歌劇団雪組公演、演：成瀬こうき・玲有希）
漫画
本宮ひろ志『猛き黄金の国』

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