上毛野国造

上毛野国造（かみつけぬのくにのみやつこ）

上毛野国造は、古代の日本において上毛野国（現在の群馬県）を支配した地方豪族です。その起源は、毛野国造が仁徳天皇朝から孝徳天皇朝にかけて上毛野国造と下毛野国造に分裂したことに遡ります。

概要

上毛野国造は、『古事記』では上毛野君、『日本書紀』や『先代旧事本紀』「国造本紀」では上毛野国造と表記されています。

祖先

『古事記』では、豊木入日子命が上毛野・下毛野君の祖とされています。

『日本書紀』によれば、崇神天皇の皇子である豊城入彦命が東国統治を命じられ、上毛野国造や下毛野国造などの祖先になったとされています。また、その孫の彦狭嶋王が景行天皇朝に東山道十五国都督に任じられ、その子である御諸別王も引き続き善政を行ったと伝えられています。

『先代旧事本紀』「国造本紀」では、崇神朝の皇子・豊城入彦命の孫である彦狭嶋命が、初めて東方の十二国を治め平らげて国造に封ぜられたとされています。

氏族

上毛野氏は、姓を君と称し、天武天皇13年（684年）に朝臣を賜りました。東国統治を担当し、しばしば蝦夷と交戦しました。

古代、香取海に注ぐ毛野川流域には、大和から派遣された、崇神天皇の皇子である豊城入彦命を祖とし、出雲神を祀る一大豪族が毛野国を形成しました。その後、毛野国は上毛野国と下毛野国に分割されました。上毛野国は古来より江戸湾に注ぐ古利根川流域でしたが、利根川東遷事業により毛野川を合わせ、大海・太平洋に注ぐ利根川流域地域となりました。その領域は、現在の群馬県とほぼ同じです。

本拠

国造の本拠は、山田郡、新田郡周辺と見られています。これらの地域には、大型古墳が多数築造されており、それらは国造の奥津城と考えられています。

支配領域

国造の支配領域は、当時上毛野国と呼ばれた地域で、後の律令国家における上野国、現在の群馬県にあたります。

氏神

国造の奉斎社は、群馬県前橋市に鎮座する上野国二宮の赤城神社と考えられています。祭神は、国造の祖である大己貴命と豊城入彦命です。

墓

上毛野国造に関係する主な古墳として、以下のようなものが挙げられます。

藤本観音山古墳: 栃木県足利市にある全長117メートルの前方後方墳で、4世紀中頃の築造。被葬者は御諸別王と考えられています。
朝子塚古墳: 群馬県太田市にある全長123メートルの前方後円墳で、4世紀末から5世紀初頭の築造。被葬者は御諸別王の妻と考えられています。
別所茶臼山古墳: 群馬県太田市にある全長164メートルの前方後円墳で、4世紀末から5世紀初頭の築造。被葬者は荒田別と考えられています。
太田天神山古墳: 群馬県太田市にある全長210メートルの前方後円墳で、5世紀前半から中頃の築造。被葬者は竹葉瀬と考えられています。

人物

上毛野国造に関わる主な人物として、以下のような人々が挙げられます。

御諸別王（みもろわけのみこ）: 古墳時代の官人で、景行天皇朝に毛野へ赴きました。
大荒田別命（おおあらたわけのみこと）: 古墳時代の武人で、神功皇后摂政期に活躍しました。
竹葉瀬（たかはせ）: 古墳時代の武人で、仁徳天皇朝の遣新羅使。白鹿を発見して天皇に献上したとされています。
上毛野田道（かみつけののたぢ）: 古墳時代の武人で、仁徳天皇朝の将軍。新羅を討つが、蝦夷に敗死したとされています。竹葉瀬の弟で下毛野国造の祖です。
上毛野小熊（かみつけののおぐま）: 古墳時代の武人で、安閑天皇朝の国造。関東地方に覇をなし、武蔵国造家の内紛に介入したとされています。

子孫

上毛野国造の子孫には、以下のような人々がいます。

上毛野形名: 飛鳥時代の武人で、舒明天皇朝の将軍。一度は蝦夷に敗れましたが、妻の機転で巻き返したとされています。
上毛野稚子: 飛鳥時代の武人で、天智天皇朝の将軍。阿倍比羅夫らとともに新羅の城を落としたとされています。
上毛野三千: 飛鳥時代の官人で、天武天皇朝の学者。川嶋皇子らと史書編纂に携わりました。
上毛野穎人: 平安時代の官人で、遣唐録司、東宮学士。薬子の変で上皇側の情報を密告しました。
上毛野滋子: 平安時代の女官で、典侍、従三位。藤原良房家の人でした。
上毛野永世: 平安時代の官人で、尾張介、従四位下。貞観格編纂に参加しました。

関連項目

国造の一覧

参考文献

『國史大辭典』(吉川弘文館)
坂本太郎・平野邦雄『日本古代氏族人名辞典』(吉川弘文館)
『日本史広辞典』(山川出版社)
『神道大辞典』(臨川書店)

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