上西晴治

上西 晴治（うえにし はるじ）

日本の小説家、上西晴治は、1925年1月7日に北海道十勝郡浦幌町に生まれ、2009年11月10日にその生涯を終えました。北海道の豊かな自然と歴史、特にアイヌ民族の文化を主題とした作品を数多く発表し、数々の文学賞を受賞しました。

生涯と教育

上西氏は浦幌高等小学校を卒業後、教育者の道を志し、札幌師範学校に附設された小学校准訓導養成所で学びました。1941年に養成所を修了すると、西足寄町の平和国民学校で教員としての第一歩を踏み出します。

その後、小樽市にあった北海道青年学校水産教員臨時養成所でも学び、1945年3月にここを卒業しました。塩谷村立青年学校に勤務しましたが、間もなく召集を受け出征します。同年9月に復員すると、増毛町の青年学校・中学校、札幌第四中学校、銭函中学校と、北海道内の学校で再び教壇に立ちました。

文学への道

教員として働く傍ら、文学への情熱を抱き、札幌文科専門学院の夜間部で学びました。ここで講師を務めていた新間進一から大きな影響を受け、その文学に対する熱意はさらに高まります。本格的な文学研究を目指し、大東文化大学文政学部日本文学科に3年次から編入し、1953年に卒業しました。大学での卒業論文では有島武郎を取り上げ、その研究のために岩内町に住んでいた画家の木田金次郎を訪ねています。

また、作家八木義徳の小説『漁夫画家』に深く感銘を受け、これがきっかけとなり、自らも小説を書き始めました。

作家活動と受賞

大学卒業後も北海道札幌工業高等学校で国語教師を続けながら、文学の師と仰ぐ八木義徳に師事し、創作活動に励みました。地道な執筆活動が実を結び、1964年には「玉風の吹く頃」で読売新聞短編小説賞を受賞し、作家としての地歩を固めます。

1977年には、「オコシップの遺品」が芥川龍之介賞の候補に、また「ニシパの歌」が直木三十五賞の候補となるなど、その文学的手腕が広く認められるようになりました。1980年には、アイヌ民族と和人の歴史的な衝突を描いた力作『コシャマインの末裔』で北海道新聞文学賞を受賞します。さらに、1993年には、故郷である十勝平野を舞台にした壮大な作品『十勝平野』が伊藤整文学賞を受賞し、作家としての評価を不動のものとしました。

上西晴治の作品には、北海道の風土に深く根差し、特にアイヌ民族の文化や歴史、そして彼らと自然との関係性をテーマにしたものが多く見られます。多作な作家ではありませんでしたが、一つ一つの作品に深い洞察と温かい眼差しが込められており、寡作ながらもその文学世界は高く評価されています。

主要著書

ポロヌイ峠（風濤社、1971年）
コシャマインの末裔（筑摩書房、1979年）
原野のまつり（河出書房新社、1982年）
トカプチの神子たち（潮出版社、1982年）
パウンペと鮭の口合戦（貝原浩画、風涛社、1986年）
虹を駈ける羆（風濤社、1987年）
十勝平野（筑摩書房、1993年）
上西晴治短編全集 ポロヌイ峠（風濤社、2003年）

教育者として働きながら、北海道という大地に根差した独自の文学世界を切り開き、後世に多くの示唆に富む作品を残しました。

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