上赤塚交番襲撃事件

上赤塚交番襲撃事件

1970年（昭和45年）12月18日未明、東京都板橋区赤塚の上赤塚交番が、3人組の男によって襲撃された事件。

事件の概要

この事件は、京浜安保共闘（日本共産党（革命左派）神奈川県委員会）のメンバーによるもので、逮捕された革命左派指導者の川島豪奪還計画の一環として実行されました。川島は獄中から奪還を指示し、獄外指導部は護送車襲撃を計画。その際、銃器が必要となり、交番襲撃による拳銃強奪が企てられました。

午前1時頃、柴野春彦（横浜国立大学生）、渡辺正則（横浜国立大学生）、佐藤隆信（神奈川県立川崎高等学校生）の3人が上赤塚交番を襲撃。巡査に対し「自動車が故障した」と偽り、近づいた巡査にビニールホース入りの鉛パイプで襲いかかりました。物音に気づいた巡査長が駆けつけると、柴野が拳銃保管箱に手を伸ばしたため、巡査長は警告の上、柴野に向けて発砲。柴野はその場で死亡し、他の2名も重傷を負い逮捕されました。巡査の発砲した拳銃からも弾が1発発射されていましたが、これは乱闘中の暴発とみられています。

事件の影響

拳銃奪取に失敗した革命左派は、翌年2月に真岡銃砲店襲撃事件を起こします。また、事件後には柴野の祥月命日前後に警察機関への爆破テロが頻発し、新左翼過激派による報復とされました。この連続テロは、1972年のあさま山荘事件で警察が生け捕り方針を選択する一因になったとも言われています。

事件後、警視庁の佐々淳行警務課長（当時）が警察官の拳銃使用の正当性を主張したことが、過激派グループの怒りを買い、事件から1年後の1971年12月18日、佐々ではなく土田国保警務部長邸に爆弾入りの小包が送りつけられ、土田の妻が死亡、四男が重傷を負うという悲劇を生みました（土田・日石・ピース缶爆弾事件）。

京浜安保共闘が赤軍派と統合した連合赤軍は、1971年12月28日、山岳ベースにおいて事件に参加しなかったメンバーに対し、事件を再現した格闘訓練を行いました。この訓練後、あるメンバーが幹部の永田洋子から暴行を受け、山岳ベース事件における最初の犠牲者となりました。

事件の背景

本事件は一般的に「京浜安保共闘」の犯行とされますが、正確にはその上部団体である「革命左派」によるものです。この点は、革命左派内部では重要な意味を持っており、柴野の一周忌集会においても主催者名が「革命左派」に変更されたことが、山岳ベース事件における総括開始のきっかけとなっています。

川島豪は後に、奪還を指示した事実はないと述べていますが、実際には面会者への示唆や暗号文の送付など、奪還を促す行動を取っていました。

上赤塚交番襲撃事件は、日本の左翼運動における過激化の一つの象徴として、その後の社会に大きな影響を与えました。

参考文献

警備研究会『わかりやすい極左・右翼・日本共産党用語集』 五訂、立花書房、2017年2月1日。ISBN 9784803715415。
永田洋子『十六の墓標(上)』 彩流社、1982年
坂口弘『あさま山荘1972(上)』 彩流社、1993年

関連項目

明治公園爆弾事件
* 朝霞自衛官殺害事件

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