土田・日石・ピース缶爆弾事件

土田・日石・ピース缶爆弾事件とは

土田・日石・ピース缶爆弾事件は、1969年（昭和44年）から1971年（昭和46年）にかけて、東京都内で発生した4件の爆破・殺傷事件の総称です。この事件では、ピース（たばこ）の缶を模した爆弾と、小包爆弾が使用され、それぞれ異なる犯行グループによるものとする見方もあります。一連の事件で18名が逮捕・起訴されましたが、全員が無罪となり、現在も未解決の事件が残っています。また、一部の事件については、時効後に真犯人を名乗り出る書籍が出版されています。

事件の概要

事件はすべて東京都内で発生しました。

警視庁機動隊庁舎ピース缶爆弾未遂事件

1969年10月24日、新宿区若松町の警視庁第8・第9機動隊庁舎に、ピースの缶に偽装した爆弾が投げ込まれました。幸いにも不発だったため、犠牲者は出ませんでした。

アメリカ文化センターピース缶爆弾事件

1969年11月1日、千代田区永田町のアメリカ文化センターに、ピース缶を使用した爆弾が仕掛けられた段ボール箱が配達されました。この爆弾は時限式で、爆発によりアメリカ文化センターの職員1名が負傷しました。

日石本館地下郵便局爆破事件

1971年10月18日、港区西新橋の日本石油（現ENEOS）本社ビル地下の郵便局で、小包爆弾が爆発しました。事務員姿の女性が持ち込んだ小包が、郵便局員によって郵袋に入れられた直後に爆発し、郵便局員1名が火傷を負いました。この小包爆弾は、警察庁長官と新東京国際空港公団総裁宛てに送付される予定でした。

土田邸小包爆弾事件

1971年12月18日、豊島区雑司ヶ谷の土田國保（当時警視庁警務部長）宅で、お歳暮に偽装した郵便爆弾が爆発しました。この爆発により、土田の妻が死亡し、四男が重傷を負いました。

捜査の状況

当時の社会情勢としては、新左翼運動が活発化しており、特にピース缶爆弾は新左翼特有の犯行と見られていました。そのため、警察は新左翼を中心に捜査を進めました。

被疑者の逮捕

警視庁公安部は、18名を被疑者として逮捕しました。逮捕されたのは、赤軍派活動家の増淵利行をはじめ、その他17名でした。

裁判の経過と結果

各事件ごとに起訴された被告人は以下の通りです。

爆弾製造: 増淵利行、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K
警視庁機動隊庁舎ピース缶爆弾未遂事件: 増淵、B、D、E、F、G
アメリカ文化センターピース缶爆弾事件: 増淵、B、C、D
日石本館地下郵便局爆破事件: 増淵、E、H、I、L、Q、R
土田邸小包爆弾事件: 増淵、E、H、I、L、M、N、O、P、Q

被告人全員は、取り調べでの拷問による虚偽の供述を強いられたこと、そして事件への関与を否定しました。当初は分離公判でしたが、途中から統一公判となりました。

無罪判決

裁判では、検察側の主張が覆され、18名全員に無罪判決が言い渡されました。主な経過は以下の通りです。

1976年1月29日：Rに無罪判決。検察側は控訴を断念。
1977年4月25日：L、Qが保釈。
1983年3月24日：Mに無罪判決。検察側は控訴を断念。
1983年5月19日：増淵、E、H、I、L、N、O、P、Qの9名に無罪判決。検察側は控訴を断念。

損害賠償請求

無罪となった増淵利行、E、H、I、Lは、不当な身柄拘束に対し、国と東京都を相手に損害賠償訴訟を起こしましたが、東京地裁は訴えをすべて却下しました。東京高裁はEに対する100万円の損害賠償のみを認めました。

未解決の謎と真犯人の告白

事件の真相は未だ不明な点が多く、特に以下のような疑問点が残っています。

B、C、D、F、G、J、Kの無罪判決日、および検察側の控訴の有無
* 増淵、L、Qを除く被告人の保釈時期

しかし、時効成立後、真犯人を名乗る人物が現れ、事件の真相を語っています。

警視庁機動隊庁舎ピース缶爆弾未遂事件

この事件では、牧田吉明、三潴末雄が資金を提供し、桂木行人が爆弾を製造、大村寿雄、田辺繁治が運搬、若宮正則が実行したとされています。

アメリカ文化センターピース缶爆弾事件

この事件は、被疑者不明のまま公訴時効が成立しました。牧田吉明は、よど号ハイジャック事件に関与した赤軍派の小西隆裕らが実行した可能性を指摘しています。

日石本館地下郵便局爆破事件・土田邸小包爆弾事件

これらの事件も被疑者不明のまま公訴時効が成立しています。牧田吉明は、これらの事件とピース缶爆弾事件は別グループによるものと述べています。また、共産主義者同盟戦旗派（戦旗派）の関係者からの情報として、慶應義塾大学の戦旗派グループがこれらの事件を実行したという証言があります。2011年には、戦旗派の元活動家が、戦旗派の「非公然部門」に所属する6人グループが事件に関与したとする書籍を出版しました。土田邸の事件は、上赤塚交番襲撃事件後に土田が犯人を射殺した警察官を正当防衛と発言したことへの怒りが動機とされています。

まとめ

土田・日石・ピース缶爆弾事件は、昭和後期に発生した未解決事件の一つとして、多くの謎を残したままです。冤罪事件としても注目され、日本の刑事司法制度に大きな課題を投げかけました。時効成立後に真犯人を名乗る書籍が出版されるなど、事件は今もなお、社会に波紋を広げています。

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