下瀬頼郷

下瀬頼郷

下瀬頼郷（しもせ よりさと）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将であり、石見国の国人・吉見氏の家臣でした。下瀬氏は代々下瀬城を拠点としており、頼郷は6代目の当主にあたります。

生涯

明応5年（1496年）、吉見氏の庶流である下瀬頼里の子として石見国に生まれました。大永6年（1526年）に父が亡くなると家督を継ぎ、下瀬氏の当主となりました。当初は頼種（よりたね）または頼興（よりおき）と名乗っていましたが、後に頼郷と改名しています。また、下瀬山の麓である脇本に屋敷を構えていたことから、脇本（わいもと）を фамилияとする事もありました。

頼郷は並外れた勇猛さを持っており、常に大刀を帯びていたと伝えられています。その武勇は、吉見氏を守る上で大いに役立つこととなります。

三本松城の戦い

天文23年（1554年）3月から8月にかけて、大内義長、陶晴賢、益田藤兼らが吉見氏の本拠である三本松城を 공격する大規模な戦い（三本松城の戦い）が勃発しました。この時、頼郷は三本松城の支城である下瀬城に籠り、益田軍 противに果敢に戦いました。

頼郷の子である頼定は、当初波多野滋信・秀信親子が守る賀年城に吉見範弘と共に援兵として入っていましたが、吉見氏家臣の田中次郎兵衛が陶軍に内応したため賀年城は落城。頼定は三本松城に戻り、吉見正頼に従って本城に籠城しました。その間、下瀬城には益田軍が押し寄せましたが、頼郷は城を堅守し、敵の侵攻を許しませんでした。

益田軍は様々な調略を試みました。同年3月23日には、益田兼順、寺戸兼勝、神護院祐陽、益田兼任らが連署した書状が下瀬城内の下瀬頼郷、須子伊豆守、板垣甲斐守、大庭景治らに送られ、益田氏への協力を求めました。さらに同年4月26日には陶氏家臣の伊香賀家明が下瀬城の板垣甲斐守と田村平兵衛尉に、5月10日には寺戸兼勝が下瀬城内の吉見頼明、水津与四郎、水津藤四郎、水津五郎左衛門、岡小二郎、弘中弥四郎、野口衆、中間衆等に対し調略の書状を送っていますが、いずれも成功しませんでした。

正頼は同年5月1日、三本松城の守りを頼定に任せ、密かに本陣を下瀬城に移して抗戦を続けました。これに対し、毛利元就は家臣の二宮右忠や伊藤某らを派遣して吉見氏を支援すると共に、5月12日に陶晴賢討伐を表明し、安芸国の大内方の諸城を次々と攻略しました。元就の動きを受け、晴賢は三本松城の攻略が難航していること、そして城内の糧食不足から兵士の士気が低下していることを憂慮し、同年8月下旬に正頼との和平に応じました。正頼の子・亀王丸（後の吉見広頼）を人質とすることで、三本松城と下瀬城の包囲は解かれました。

正頼からの信頼

頼郷は、主君である吉見正頼から非常に厚い信頼を受けていました。正頼が毛利元就から受け取った秘蔵の書状を、肌身離さず所持していましたが、頼郷に預けたというエピソードが残っています。この時、正頼は頼郷が下瀬城を堅固に守っていることを賞賛し、自身と頼郷は一体であるとして書状を託したため、頼郷も辞退できずに受け取ったとされています。この書状は、以後下瀬家に代々伝来し、『閥閲録』巻148「下瀬七兵衛」に収録されています。このことからも、頼郷がいかに正頼から信頼されていたかが窺えます。

天正13年（1585年）、頼郷は90歳という長寿を全うし、この世を去りました。

下瀬頼郷は、戦国時代の動乱期において、吉見氏のために忠義を尽くした武将として、その名を歴史に刻んでいます。

脚注

出典

『萩藩閥閲録』巻148「下瀬七兵衛」
岡部忠夫『萩藩諸家系譜』（マツノ書店、1999年復刻）

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