賀年城

賀年城（かねじょう）

賀年城は、長門国阿武郡嘉年（現在の山口県山口市阿東嘉年下）の勝山（標高516メートル）に位置する日本の山城です。別名、勝山城とも呼ばれています。

概要

阿東嘉年の勝山に築かれた連郭式の山城で、築城年代は鎌倉時代末期と推定されていますが、詳細は不明です。少なくとも南北朝時代には存在していたと考えられています。正中元年（1324年）に吉見氏によって築城された三本松城（津和野城）の西方約8.5キロメートルに位置し、同城の支城としての役割を担っていました。

山頂の本丸と東側の二の丸というシンプルな構造ですが、山の急斜面を巧みに利用した堅固な要害であり、現在も堀切が残っています。また、勝山の北北東に位置する物見ヶ岳には狼煙台が設置され、賀年城と三本松城との通信手段として活用されていました。

歴史

南北朝時代

長門益田家文書に収録されている「虫追政國軍忠状」によると、建武4年（1337年）5月には南朝の軍勢が城に攻め寄せたと記録されています。石見国長野庄の惣政所であった虫追政國が、北朝方の軍勢を率いて賀年城に籠城し、負傷しながらも大手門から討って出て南朝軍の旗を奪ったと伝えられています。

室町・戦国時代

文明3年（1471年）には、大内氏第14代当主である大内政弘に対して謀反を起こした大内教幸（道頓）を討伐するため、周防守護代の陶弘護が賀年に攻め込み、賀年城を攻略しました（大内道頓の乱）。

大寧寺の変によって大内氏第18代大内義隆が滅ぼされると、義隆の姉を妻としていた吉見正頼は、謀反人である陶晴賢と対立しました。天文23年（1554年）に陶晴賢討伐を掲げて正頼が挙兵すると、大内義長を総大将とする晴賢も出陣しました（三本松城の戦い）。賀年城には、波多野滋信・波多野秀信親子と援軍の吉見範弘・下瀬頼定が300余名の兵を率いて籠城し、勝山から少し離れた場所には吉賀頼貞親子が100人の手勢を率いて陣を構えました。しかし、3月2日に攻め寄せた陶軍は4,500人以上の兵力で賀年城を包囲しました。籠城軍は、その堅固な地形を利用して善戦したと伝えられていますが、家臣である田中次郎兵衛が陶軍に内応したため、翌日には落城しました。波多野親子、吉見範弘らが討ち死にし、下瀬頼定や吉賀頼貞は敗走しました。

天文24年（1555年）の厳島の戦いで勝利した毛利元就が周防・長門へ侵攻すると（防長経略）、吉見正頼も呼応して出陣し、賀年城を含む大内方に奪われていた城を奪還しました。

周辺情報

和田山城: 勝山の北東にある小山に位置する城。賀年城攻めの際、三浦房清が兵500を率いて在陣し、吉見方の援軍を阻止しました。現在は和田山城址公園となっています。
陶寄せ陣: 賀年城の南に位置する山で、陶晴賢の本陣が置かれたことから、その名が付けられました。
茶臼山: 北側にある山で、陶方の弘中隆兼が陣を張った場所です。八幡山とも呼ばれます。
姥ヶ迫: 落城を逃れてきた乳母と若者がホラ貝を吹いたものの、その音が味方ではなく敵に聞こえてしまったという伝説が残る場所です。

脚注

関連項目

勝山城

外部リンク

長門・賀年城 - 城郭放浪記
嘉年城 - 西国の山城
防長風土注進案 勝山合戦乃記 - 嘉年波多野家 波多野姓の館

もう一度検索