下田中城

下田中城 (兵庫県三田市)

下田中城は、現在の兵庫県三田市下田中周辺に位置していた日本の城、具体的には方形居館でした。しかし、残念ながら河川改修によって遺構は消滅し、正確な城郭の構造は分かっていません。

歴史

この地域には、神明寺と神明神社が存在し、特に神明神社は天照大神を祀り、伊勢神宮の神領地として北畠氏が治めていました。下田中城に関する史料は乏しく、築城の詳細は不明ですが、元々は北畠重政の居城であったと考えられています。

田中城の戦い

永正8年（1511年）8月、細川澄元軍と細川高国軍は船岡山合戦で激突。高国軍の勝利により、澄元軍は本拠地の阿波へ退却し、再起を図ります。永正14年（1517年）、澄元の部将である三好之長は軍を率いて淡路に侵攻、守護所であった養宜館を奪い、細川尚春を追放して淡路水軍を支配下に置きました。さらに、高国と同盟関係にあった大内義興軍が、尼子経久の勢力拡大により周防を脅かされる事態となり、永正15年（1518年）に帰国。これにより高国の影響力は低下しました。

永正16年（1519年）秋頃、四国勢と播磨国勢による上洛計画が浮上。永正5年（1508年）に戦死した池田貞正の息子である池田久宗は、失地回復を期して先陣を申し出ました。久宗は摂津有馬郡にある下田中城に籠城し、澄元軍の橋頭堡とします。

これに対し、高国軍は越水城の瓦林政頼、池田城の池田民部丞、山下城の塩川孫太郎に追討令を発令。三者は協議の上、同年10月22日夜半に夜討ちを仕掛けることに。しかし、池田民部丞の軍勢の中に久宗と内通する者がおり、事前に夜討ちが漏洩。城方は万全の備えで高国軍を待ち構えます。深夜からの雨と暗闇の中、地理不案内も重なり、高国軍は首級30余りを討ち取られ敗北。この功績により、澄元は久宗に豊嶋郡代を与えました。

この勝利を機に澄元軍は、阿波から兵庫と尼崎に上陸し、越水城の合戦へと繋がっていきます。

その後、下田中城は再び北畠氏の手に戻ったようですが、天文年間に荒木村重によって滅ぼされ、兵火により廃城となったと考えられています。永禄7年（1564年）には、下田中城の南側にある丘陵に菅原道真を祀る天満神社がありましたが、天文年間に下田中城と共に焼失。その後、山崎垣政が社殿を増築し城の鎮守としたという伝承がありますが、これは下田中城の再興ではなく、立石城のことであると考えられています。

城郭

三田市には東本庄田中と下田中の二つの「田中」という地名が存在します。『細川両家記』に記載されている田中城の戦いの舞台は、地形などを考慮すると下田中であると推定されています。また、田中城の戦いの時点では有馬氏も細川澄元寄りであったと推察されています。江戸時代までは「田中」という名称でしたが、明治時代に他の田中地区と区別するため、「下田中」に改名されました。

現在の武庫川は、昭和10年（1935年）から始まった河川改修工事によって直線化されましたが、当時は大きく蛇行し、神明神社の南側を流れていました。字名には「城の内」「城の前」という地名が残っており、現在の神明神社の北側が推定地で、方形居館が建っていたと考えられています。河川改修工事前は、曲輪や水濠も残っていたようですが、現在は完全に破壊され、城の面影を残す遺構は地上には確認できません。

城跡へのアクセス

電車: 神戸電鉄三田線三田本町駅より徒歩約10分
車: 中国自動車道神戸三田ICより兵庫県道95号、兵庫県道720号、兵庫県道17号、兵庫県道141号経由
周辺に駐車場はありません。

参考文献

今谷明『戦国三好一族　天下に号令した戦国大名』洋泉社〈MC新書14〉、2007年4月、61-63頁。ISBN 978-4-86248-135-1。 
三田市史編さん専門委員編 編『三田市史』 第3巻　古代・中世資料、三田市、2000年12月、516-517頁。 
戦国合戦史研究会 編『戦国合戦大事典 第6巻 京都・兵庫・岡山』新人物往来社、1989年2月、217-219頁。ISBN 4-404-01588-7。 
田代克己ほか 編『日本城郭大系』 第12巻 大阪・兵庫、新人物往来社、1981年3月、556頁。 
福島克彦『畿内・近国の戦国合戦』吉川弘文館〈戦争の日本史11〉、2009年7月、69頁。ISBN 978-4-642-06321-0。 
兵庫県教育委員会; 和歌山県教育庁文化財課 編『近畿地方の中世城館4 兵庫・和歌山』東洋書林〈都道府県別日本の中世城館調査報告書集成 第15巻〉、2003年4月、34頁。ISBN 4-88721-446-4。 
歴ネットさんだ・冊子編集委員会 編『三田歴史スポット100選 ふるさと三田は歴史がいっぱい』歴史文化財ネットワークさんだ、2008年6月、50頁。 

関連項目

日本の城一覧
兵庫県の城
日本の合戦一覧
細川政権 (戦国時代))
三好政権
畿内・近国の戦国時代

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