越水城

越水城の歴史

越水城（こしみずじょう）は、現在の兵庫県西宮市にあった日本の城です。その跡地は、現在の西宮市立大社小学校とその周辺に位置しており、案内看板や石碑が建てられています。

築城と瓦林氏、三好氏の争い

越水城は、永正13年（1516年）に瓦林正頼によって築かれました。しかし、城の歴史は安定とは程遠く、築城から間もない永正16年（1519年）には、細川澄元と三好之長の軍勢によって落城。その後も、瓦林氏と三好氏の間で激しい争奪戦が繰り広げられました。特に、大永7年（1527年）には細川晴元と三好元長が上洛した際に三好氏の手に渡り、享禄5年（1532年）には一向一揆の攻撃を受けますが、天文2年（1533年）に瓦林氏が奪還に成功します。しかし、その直後に三好伊賀守によって再び奪い返されるなど、城の所有者はめまぐるしく変わりました。

三好政権下の越水城

越水城は、三好氏が阿波と畿内を結ぶ上で重要な拠点と見なされ、天文8年（1539年）には三好元長の子である三好長慶が居城としました。天文10年（1541年）には伊丹親興の攻撃を撃退するなど、軍事的な要衝としての役割を担いました。

六角義賢の書状と松永久秀

天文21年（1552年）には、近江の六角義賢が三好長慶に宛てた書状の中で、越水城に関する記述が見られます。この書状は、細川晴元との和解を仲介した義賢が、晴元の後継者である聡明丸の処遇を長慶に相談したもので、その中で「越水帰陣」という言葉が使われています。その後、聡明丸は実際に越水城に移ったとされています。天文22年（1553年）には、長慶は居城を芥川山城に移し、越水城には松永久秀を配置しました。松永久秀はその後、滝山城を改修し、長慶を招いています。

三好氏の衰退と篠原長房の拠点

三好長慶の死後、芥川山城に入った三好長逸と松永久秀は対立。永禄9年（1566年）には、東大寺大仏殿の戦いで松永方の瓦林三河守が越水城主となりますが、同年に三好氏の重臣である篠原長房によって落城。その後、足利義栄が入城するなど、城の支配者は目まぐるしく変わりました。篠原長房は、越水城を拠点に各地を転戦しますが、永禄11年（1568年）に織田信長が上洛すると、越水城を放棄して阿波に逃れました。その後、足利義昭が入城し、近江の和田惟政が守備を担当しました。

再び篠原長房、そして廃城へ

元亀元年（1570年）には、篠原長房が再び越水城を奪還しますが、織田信長との和議成立後、阿波に退却。その後、荒木村重が城を奪ったと推測されていますが、詳細は不明です。最終的に、西宮衆の要望と信長の命によって越水城は廃城となり、西宮は商業都市として発展することになります。

越水城の構造と特徴

越水城の跡地は、現在のニテコ池の南東に位置し、城山、桜谷町、満池谷町、清水町にまたがっており、その範囲は南北200メートル、東西100メートルと推定されています。

城郭の構造

記録によれば、越水城は堀、壁、土居、矢倉を備えた堅固な城郭でした。小清水の丘に本城と外城が築かれ、外城には城主の家族や家臣が居住していました。また、城の南に位置する西宮町とは、城下町のような関係がありました。

天守閣の可能性

越水城には、天守閣があった可能性も指摘されています。近くの伊丹城に天守があったことから、越水城にも同様の構造があったのではないかと考えられています。関西学院大学の永島福太郎名誉教授は、「伊丹城に天守があったのなら、越水城にもあったといえようし、むしろ日本の最古の天守閣の初見は越水城といえそうである」と述べています。

越水井戸

「越水」という名前は、「小清水」の当て字であり、この地域には古くから良質な水が湧き出ていました。その源となるのが「越水井戸」であり、西国街道を旅する人々を潤してきました。現在、井戸は3箇所確認されており、そのうち2箇所は現存しています。阪神淡路大震災時には、周辺住民にとって重要な水源となりました。この井戸が城の井戸である可能性も指摘されています。

越水山遺跡

越水城が築かれた場所には、「越水山」という小丘陵があり、かつては石積み遺構や曲輪が見られました。しかし、宅地化によって遺構は失われており、発掘調査は十分には行われていません。それでも、西宮市教育委員会による発掘調査で、弥生時代から古墳時代の竪穴建物や土器が発見され、「越水山遺跡」としても知られています。

現在の城跡へのアクセス

越水城跡へのアクセスは、車の場合は阪神高速道路神戸線武庫川出口から国道43号、国道171号を経由します。ただし、近隣に駐車場はありません。公共交通機関を利用する場合は、阪急電車神戸線夙川駅から徒歩15分です。

まとめ

越水城は、戦国時代を通じて幾度もその支配者が変わった歴史ある城です。その城郭は、瓦林氏、三好氏、篠原氏などの武将たちによって利用され、時に要塞、時に拠点として機能しました。現在はその遺構の多くが失われてしまいましたが、地域の歴史を語る上で重要な場所であり、その痕跡は石碑や地名、そして井戸として今も残っています。

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