不受不施義

不受不施義について

不受不施義（ふじゅふせぎ）は、日蓮が提唱した宗教的な思想であり、特に法華経の信者にとっての重要な原則とされています。この概念には二つの側面があります。一つは「不受」で、これは法華経に従っていない人々から布施を受けることを拒否することを指します。もう一つは「不施」で、法華経を信じない者に対して供養を行わないことを意味します。

日蓮の信念はその時代背景の中で様々に影響を受けてきました。特に室町時代には、日蓮宗は他の宗派との相互作用で勢力を拡大していきましたが、その過程において、他宗派との妥協や信者からの施しを受け入れる状況が生まれました。こうした現実を受けて、日蓮の思想を厳格に守る「鍋かむりの日親」という呼び名で知られる日親が、この不受不施義を再び主張しました。

さらに時代が進むと、日蓮宗は安土桃山時代にさしかかります。この時期、豊臣秀吉の指導の下に方広寺（京の大仏）の千僧供養に参加するか否かという問題が背景にあり、宗派内部が大きく二つに分裂しました。一方は受不施派、もう一方は日奥をはじめとした不受不施派です。この分裂はその後の歴史に多くの影響を与えることになります。

残念ながら、不受不施派は江戸時代において「邪宗門」と位置付けられ、一定の禁圧を受けました。この結果、彼らは地下に潜伏せざるを得ない状況となり、信仰を保ち続けるための厳しい道を選ぶことになりました。そのような困難な状況でも、派内での内紛は絶えず続きました。

明治の時代になると、日蓮宗は再び活発化します。不受不施派は日堯らの導師派と、日講らの不導師派（講門派）という二つの系統に分かれました。その後も、幾つかの派が生まれ、宗派の多様性を増すこととなります。

このように、不受不施義は日蓮宗の歴史の中で重要な役割を果たし、その考え方や実践が時間とともにどのように変遷してきたかを示しています。特に他宗派との関わりや内部の動きが、日蓮宗のアイデンティティ形成に大きな影響を与えたことが理解できます。

参考文献

• - 根岸鎮衛　『耳嚢』全3冊　長谷川強校注、岩波書店〈岩波文庫〉、1991年

この文献は、江戸時代の随筆であり、不受不施に関する逸話を収めており、信者たちの思いを知る手がかりとなります。

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