世界水システム遺産

世界水システム遺産の概要

世界水システム遺産（World Water System Heritage）は、水資源の管理や保全に関連する有形無形の遺産を認識するための国際的な制度です。この制度は、世界水会議と国際かんがい排水委員会の協力によって創設されました。初めての登録は2016年11月にフランスのマルセイユで予定されていましたが、審査方法が未確定だったため、2018年まで延期されました。

目的と意図

この制度は、2015年に国連で採択された持続可能な開発目標の一環として、水の可用性と持続可能な管理を確保することを目的としています。具体的な活動としては、以下のような点が挙げられます。

• - 水の遺産から得られる教訓を広めること
• - 伝統的な知恵を活かし、新しいアイデアを生み出すこと
• - 現代社会に適応した水の遺産を守り育てること

これらの活動は、水資源の持続可能な利用を推進することを重視しています。

対象となる遺産

水システム遺産は、自然環境と共生している様々な水管理システムが対象です。具体的には、以下のようなものがあります。

• - 飲料水供給システム（井戸や上水道など）
• - 農業におけるかんがいシステム
• - 漁業用の漁場
• - 工業用水や廃水処理に関わる産業用システム
• - 発電のためのダムや洪水防止施設

選定基準

遺産として登録されるためには、以下の基準を満たす必要があります。

一次基準

1. 世代を超えた継続性：少なくとも百年以上の歴史を有すること。
2. 地域コミュニティの知恵：地域社会の習慣や規則に基づいたシステムであること。
3. 多様な関与者の参加：様々なステークホルダーが関与していること。
4. 社会経済への貢献：地域社会の発展に寄与していること。

二次基準

更に、以下の基準のいずれかを満たす必要があります。

• - 優れた歴史的背景を持つこと。
• - 文化的価値や生物多様性を維持していること。
• - 自然災害や人為的な水質劣化を克服してきたこと。
• - 人類全体に対する卓越した普遍的な価値を有していること。

登録の歴史

2018年3月、ブラジルのブラジリアで初めての世界水システム遺産が選定されました。具体的な例としては以下の3つが挙げられます。

• - 源兵衛川の灌漑運河システム（静岡県三島市）
• - 関川水系土地改良区（新潟県上越市・妙高市）
• - シェイク・バハエイの水分配システム（イラン）

支援と国際的な取り組み

水システム遺産の保護には、ユネスコも大きな役割を果たしています。2012年の国連持続可能な開発会議（リオ＋20）以降、ユネスコは水と文化に関連するプログラムを立ち上げ、国際水文学計画を通じた水資源管理の推進に取り組んでいます。また、世界水会議に合わせて「水と遺産のための未来会議」も開催されました。

日本国内の関連例

日本国内では、滋賀県の琵琶湖周囲において重要文化的景観として指定されている場所があり、これらは「水遺産」として日本遺産にも認定されています。具体例としては、近江八幡の水郷や高島市の水辺景観などが挙げられ、琵琶湖を中心にした農業遺産の登録も目指されています。

水システム遺産は、単なる文化的遺産に留まらず、持続可能な未来を考えるための重要な資源となっています。

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