中国における論理学

中国における論理学の歴史

概要

中国の論理学は、古代から続く多様な思想体系の中で発展してきました。一般的に「中国論理学」と言われる分野は、諸子百家によって論じられた「名」の思想を指します。これには、名学や名弁と呼ばれる概念が含まれており、特に御名家、墨家、荀子の思想が重要な位置を占めています。さらに、本稿ではインドから伝わった因明や西洋の論理学の受容についても取り上げます。

古代中国と言語

古代中国では、Logicに相当する用語が存在しなかったため、現代の「論理学」という語は明治時代に創出された言葉です。現在の中国語で「論理」を表現する際には、音訳された「邏輯」（ルオジー）が用いられています。このように、古代中国における論理の学問は明確には整備されていませんでしたが、諸子百家の名の思想が論理的な思考を促すものとして研究されています。

桑木厳翼の影響

明治時代、日本の哲学者桑木厳翼は、諸子百家の名の思想を「論理学」として再評価し、章炳麟や王国維といった清末の知識人たちにも影響を与えました。これにより、名学が論理学として認識されるようになり、特に民国初期の胡適などの研究が注目されました。胡適の論理学観は、コロンビア大学で学んだジョン・デューイの影響を受け、プラグマティズムの観点が反映されています。

諸子百家と論理

中国の論理学を語る上では、諸子百家たちの著作は不可欠です。『荘子』の天下篇や『荀子』の正名篇、『墨子』の墨弁などが、それに該当します。これらの文献は、中国の論理的思考方法や名の思想を探求する上で基礎資料となります。

因明の伝来

因明は、インドから伝わる論理学であり、仏教の伝来と共に中国にも取り入れられました。因明は中国を経由し、朝鮮や日本にも伝わりましたが、中国と朝鮮では早々に衰退しました。一方、日本では長い間研究が続けられました。近代においても、章炳麟は因明に関心をもち、民国初期の諸子百家の再評価の流れとともに再び注目を集めました。

西洋論理学の影響

西洋論理学の受容は、明末の1631年に李之藻とフランシスコ・フルタドによるアリストテレス論理学の注解書の翻訳ともに始まります。以降、1886年にはジョゼフ・エドキンズが《弁学啓蒙》を刊行し、さらなる西洋の論理学の普及に寄与しました。続いて、香港出身の厳復が上海で行った論理学の講演会は、中国における論理学の重要な転換点となりました。彼は、諸子百家を念頭に新たな概念「名学」を使用しましたが、これは日本人が作った「論理学」という言葉に対する批判からの選択でした。

現代における研究

民国初期、特に1930年代には清華大学で金岳霖や沈有鼎といった研究者たちが論理学を探求しました。彼らはラッセルの影響を強く受け、論理学の重要性を訴えました。その後、1950年代から1970年代にかけて中国では弁証法論理学が重視される一方、記号論理学は一時停滞しました。1979年に設立された中国論理学会は、記号論理学の研究を復活させ、現在に至るまで中国の論理学は多様な形で進化を続けています。

結論

中国の論理学は、古代からの名の思想やインド・西洋の影響を受けながら、独自の発展を遂げてきました。これらの要因は、中国哲学の枠組みの中で重要な役割を果たし、現代の論理学研究にもその影響が及んでいます。

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