中根正盛

中根正盛（なかね まさもり）

中根正盛は、江戸幕府の旗本であり、御側、大目付を歴任した人物です。徳川秀忠の小姓として仕え始め、その後、徳川家光の側近として重用されました。その生涯は、幕府の要職を歴任し、情報収集と監視活動に大きく貢献しました。

略歴

中根正盛は、徳川秀忠の小姓として幕府に出仕しました。その後、大番組を経て、徳川家光の時代には小納戸役を務めました。寛永9年（1632年）には小納戸を拝命し、寛永11年（1634年）には御側（後の側用人）に任じられ、22騎の与力を配下に付けられました。寛永12年（1635年）頃には、家光の命により、幕閣との取次役として、通常の監察機構とは別に監察権限を与えられ、幕藩体制社会全般の動向を把握する役割を担いました。また、評定所にも出座し、幕府行政の監察も行いました。さらに、久能山や日光山の巡視、御家人の宅地査察、京・大坂・堺の巡察など、多岐にわたる監察業務を遂行しました。

寛永14年（1637年）に勃発した島原の乱では、配下の者を派遣し、反乱軍の動きを詳細に調べさせました。松平信綱配下の甲賀忍者が原城に潜入し、城内の兵糧が残り少ないことを確認したという記録があります。これは忍者が合戦で活躍した最後の例とされています。寛永15年（1638年）には、堀田正盛が老中から家光の御側に回り、中根正盛と共に家光のブレーンとして活躍しました。中根の監察に加え、堀田の近侍としての政務参与は、家光の独裁政治を支える重要な要素となりました。これにより、土井利勝や酒井忠勝といった譜代大名は重要ポストから外され、中根と堀田を中心とする体制が確立されました。同年、中根は従五位下壱岐守に叙任され、寛永17年（1640年）には5000石の知行を領しました。寛永18年（1641年）には、オランダ商館が長崎の出島に移され、幕府による管理貿易が開始され、鎖国体制が完成しました。

寛永20年（1643年）には、福岡藩が藩領内の大島でキリスト教の布教を目的とした異国船を発見し、乗組員を捕らえました。この藩の迅速な対応を賞賛するため、中根は老中奉書を携え、筑前へと赴きました。また、自身もこの功績を称える書状をしたためました。島原の乱以降、キリスト教徒の摘発と処罰はより厳重に行われるようになりました。同年10月には、後光明天皇の即位を祝う使者として京に赴き、大坂城中や住吉天王寺の周辺を巡視しました。

慶安4年（1651年）には、由井正雪らを首謀者とする慶安の変が勃発しました。この事件は、幕府の政治に対する不満と浪人の救済を目的とした謀反とされています。中根は配下の者を各地に派遣し、事件の背景を徹底的に調べました。特に紀州藩の動きを注視し、事前に正雪の学塾に潜入させていた密告者からの情報により、事件の計画が露見しました。正雪の遺品からは紀州藩主・徳川頼宣の書状が見つかり、頼宣が事件に関与している疑いを持たれましたが、後にこの書状は偽造であったと判明しました。しかし、頼宣は武功派の盟主であったため、中根と松平信綱の策略によって幕政批判の首謀者とされ、10年間江戸に滞在させられることになりました。頼宣の失脚により、武功派勢力は一掃されました。

活躍

中根正盛は、諸大名や旗本と将軍との取次ぎ役として、各地の情報を集め、配下の与力を使って情報収集を行いました。諸国の監視、評定所への出座、将軍家寺社の管理などを担当し、隠密機関の元締めとしても活動しました。その活動は、近代的側近の先駆けであるとされています。

人物

中根は、家光からの信任が厚く、大きな権威を持っていました。その権勢は、老中が中根に敬意を払うほどであったと伝えられています。また、自分の意見を曲げない強固な意志を持っていたとされ、家光の意見にも反論することがあったといわれています。さらに、能書家としても知られていました。

公儀隠密の元締説

中根は、家光の意向を背景に権勢を振るい、配下の廻国者で組織した隠密機関を幕府組織に組み込み、情報網を構築し掌握しました。老中や諸大名の監察を任され、諜報活動によって功績を上げました。また、キリシタン弾圧を推し進めた重臣の一人でもありました。これらのことから、中根は公儀隠密の元締めとして、小説や漫画に描かれるようになりました。

脚注

注釈

出典

参考文献

北原章男「家光政権の確立をめぐって-下-」（『歴史地理』91巻3号、1966年11月) ISSN 03869180 pp.19-27.

関連項目

隠密
忍者
側衆
編笠十兵衛
カムイ伝 第二部
* 神田和泉町

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