中澤桂

中澤桂（なかざわ かつら）：日本のソプラノ歌手、音楽教育者

中澤桂（1933年11月23日 - 2016年1月10日）は、日本を代表する声楽家（ソプラノ）であり、優れた音楽教育者としても知られています。東京二期会の理事、東京音楽大学の名誉教授を歴任し、日本の音楽界に多大な貢献をしました。

プロフィール

満洲（中国東北部）のハルビン市で生まれ、新潟県立長岡女子高等学校を卒業後、東京芸術大学に進学するも中退。その後、二期会研修所を修了し、声楽家としての道を歩み始めました。城多又兵衛、柴田睦陸、長門美保といった著名な指導者に師事し、声楽家としての基礎を築きました。

オペラ歌手としての活躍

1959年、長門美保歌劇団によるドヴォルザークのオペラ『ルサルカ』の日本初演で主役のルサルカ役を演じ、オペラ歌手としてデビューを果たしました。翌1960年には、横浜労音によるヴェルディのオペラ『リゴレット』でジルダ役を好演し、その名が広く知られるようになりました。その後、二期会を中心に数多くのオペラに出演し、モーツァルトの『魔笛』夜の女王役や『ドン・ジョヴァンニ』ドンナ・アンナ役、マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』サントゥッツァ役など、幅広い役柄を歌い上げました。

また、日本のオペラにも積極的に取り組み、清水脩の『修禅寺物語』楓役、三木稔の『春琴抄』鵙屋春琴役などを繰り返し演じました。特に、團伊玖磨の『夕鶴』つう役は彼女の当たり役として知られ、日本を代表するソプラノ歌手として国際的にも高い評価を得ました。

コンサートシンガー、教育者としての活動

コンサートシンガーとしても、全国各地でリサイタルを開催し、ベートーヴェンの『第九』やヘンデルの『メサイア』など、オーケストラとの共演も多数行いました。オラトリオや宗教曲の分野でも、その美しい歌声で人々を魅了し、一時代を築きました。レコーディング活動にも熱心で、歌曲を中心に多数の録音を残しています。

音楽教育にも力を注ぎ、東京音楽大学教授として、後進の育成に尽力しました。東京音楽大学の声楽専攻では、学生全員が3年次に「日本歌曲試演会」で成果を発表する伝統がありますが、これは中澤が「日本人として日本語による歌を歌えないと」と提唱したことがきっかけです。また、「長岡が誇る世界的歌手」として、故郷の音楽文化振興にも貢献しました。

晩年と死

2016年1月10日、急性呼吸不全のため82歳で死去。告別式は新潟市で執り行われました。喪主は養女で、国立音楽大学新潟県同調会会長、国際ソロプチミストアメリカ東リジョンのガバナーを務めた石本陽子が務めました。

受賞歴

1960年：プラハの春国際音楽コンクール3位
1976年：チェコスロヴァキア共和国スメタナ賞
1977年：ウィンナーワルド・オペラ賞大賞
1992年：第22回モービル音楽賞

その他

中澤桂は、声楽家としての活動だけでなく、音楽コンクールや合唱大会の審査員を務めるなど、日本の音楽文化の発展に広く貢献しました。彼女の残した数々の録音は、今もなお多くの人々に愛され続けています。

ディスコグラフィー（一部）

CD 『日本抒情歌曲集』（1996年）
CD2枚組 『歌劇「沖縄」』（2015年）
CD 『落葉松－小林秀雄:歌曲/ピアノ曲集』（2003年）
CD 『日本の名歌を歌う － 椰子の実/浜辺の歌』（1988年）
CD 『決定版 日本の歌曲』（1988年）
CD 『決定版 世界の愛唱歌』（1987年）
CD 『信時潔歌曲集』（1995年）
CD2枚組 『山田耕筰 歌曲集』（1994年）

その他多数のCDをリリース。

外部リンク

* 「声楽家の中沢桂さん死去 オペラ『夕鶴』つう役」朝日新聞DIGITAL記事 2016年1月11日付

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