中里斉

中里斉（なかざと ひとし、1936年3月15日 - 2010年7月18日）は、日本の画家であり、その生涯を通じて国際的な活躍を見せたアーティストです。東京都に生まれ、幼少期から美術への関心を抱き、後にその才能を開花させました。

生い立ちと美術への道

1936年、中里斉は東京府南多摩郡忠生村（現在の東京都町田市）で誕生しました。1948年に桜美林中学校に入学し、その後、桜美林高等学校を卒業。1956年には多摩美術大学美術学部絵画科（油画）に進学し、大沢昌助らに師事しました。1960年に同大学を卒業後、短期間『北海タイムス』で美術記者として勤務、その後、母校である桜美林学園の専任講師となります。

アメリカへの渡航と美術探求

1962年、中里は更なる美術の探求のためアメリカに渡り、ウィスコンシン大学大学院（絵画専攻、版画副専攻）に入学。1964年にはミルウォーキーのセント・ジェームス・ギャラリーで初の個展を開催しました。同年、ペンシルベニア大学美術大学院へ進み、ピエロ・ドラツィオ、ニール・ウエリバーらに学び、絵画表現の幅を広げました。1966年にはロックフェラーⅢ世基金奨学金を受け、ニューヨークへと活動拠点を移しました。

美術教育者としての側面

1968年、中里は多摩美術大学の専任講師として日本に一時帰国しますが、1971年には再びアメリカへと渡り、ペンシルベニア大学美術大学院で版画の専任講師に就任しました。後にペンシルベニア大学美術学部長を歴任するなど、教育者としても重要な役割を果たしました。中里は、後進の育成にも力を注ぎ、その指導は多くの学生に影響を与えました。

受賞と評価

中里の才能は早くから評価され、1970年には第5回ジャパン・アート・フェスティバルで優秀賞（文部大臣賞）を受賞。同年、第14回シェル美術賞展でも佳作賞を受賞するなど、その実力が広く認められました。彼の作品は、色彩と構成への深い洞察に基づき、独自のスタイルを確立しています。抽象的な要素と具体的な表現を融合させ、見る者に深い感動を与える作品を多く生み出しました。

晩年と急逝

長年にわたりニューヨークを拠点に制作活動を続けた中里でしたが、2010年7月15日、自宅スタジオでの作業中に脚立から転落し、頭部を強打するという不慮の事故に見舞われました。病院に搬送されたものの意識が戻ることはなく、7月17日午後11時31分に死去。74歳でした。

主な個展とグループ展

中里は数多くの個展を開催しており、代表的なものとして、原美術館（東京、1987年）、東京画廊（東京、1993/1997年）、ギャラリー・クラヌキ（大阪、1992/1998年）、ギャラリー・ジュリエット（トリエステ、イタリア、1999年）、村松画廊（1996/2000年）、エリクソン画廊（フィラデルフィア、1999/2001年）、モントピリアー文化芸術センター（ワシントンDC、2002年）、町田市国際版画美術館（東京、2010年）などがあります。

また、「アスペクト、1979 - 1994」（原現代美術館、群馬、1994年）、「絵画の構造―現代日本のストライプ」（文房堂画廊、東京、1994年）、「矩型の森―思考するグリット」（埼玉県立近代美術館、浦和、1995年）、「東京芸術シリーズNO.7、線について、不在のモダニズム/不可視のリアリズム」（板橋区立美術館、東京、1995年）、「60, 70, 80年代の日本の絵画」（村松画廊、東京、2000年）など、数多くのグループ展にも参加しています。

壁画制作とパブリックコレクション

中里は、壁画制作にも取り組み、1970年には日本万国博覧会の古河パビリオン、1987年には原美術館、1988年には武蔵丘陵娯楽部（建築設計：磯崎新）に壁画を制作しています。

彼の作品は、ニューヨーク近代美術館、フィラデルフィア美術館、京都国立近代美術館、ペンシルベニア美術アカデミー、兵庫県立近代美術館、ブルックリン美術館、ナショナル・ギャラリー・オブ・アート、国立国際美術館、東京都美術館、栃木県立美術館、原美術館、高松市立美術館、静岡県立美術館、国際交流基金、大原美術館、バーミングハム美術館、岡山県立美術館、ティコティン日本美術館、世田谷美術館、和歌山県立近代美術館、町田市立国際版画美術館など、世界中の主要な美術館に収蔵されており、その作品は今も多くの人々に感動を与え続けています。

中里斉は、その才能と情熱、そして国際的な視野で、美術の世界に大きな足跡を残した画家でした。

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