丸屋小兵衛

丸屋小兵衛について

江戸時代に活動していた丸屋小兵衛（まるや こへえ）は、地本問屋として知られる商人で、豊仙堂、豊僊堂、丸小などの名義で作品を刊行しました。彼の姓は山本で、主に江戸の大伝馬町3丁目に店を構えていたとされます。後には通油町に移転した可能性があります。なお、彼は丸屋九左衛門との関係が疑われており、この点についても興味深い歴史があります。

出版活動と作品

丸屋小兵衛は一枚絵だけでなく、青本や黄表紙と呼ばれるジャンルの作品も手がけており、元禄年間から浄瑠璃本を出版しました。また、宝暦年間には2代鳥居清信、2代鳥居清倍、鳥居清満、鳥居清広、山本藤信といった著名な絵師たちの紅摺絵を手がけ、多様な表現を持つ作品を市場に送り出しました。特に、彼の店では一筆斎文調の作品や勝川春章、北尾重政による錦絵も多く出版されました。これらの作品は今でも貴重な文化遺産とされています。

丸屋小兵衛の業績は、彼が出版したいくつかの代表的な作品によっても際立っています。たとえば、2代目鳥居清倍が描いた『佐野川市松の五郎と生嶋大吉の少将』や、同じく清倍の『惶弓勢源氏』などがあります。これらの絵は紅摺絵の技法が施されており、その美しさは当時の人々に愛されました。

その他にも、各絵師の協力によって次のような作品が制作されました:

• - 2代目鳥居清信による『市村亀蔵の曽我五郎時致』
• - 鳥居清満による『将棋・碁・双六』
• - 鳥居清広の『高砂の尉と姥の見立狂言』
• - 山本藤信による『つちや梅川』
• - 一筆斎文調の『二代目嵐三五郎の烏帽子折大太郎実は源頼朝と二代目瀬川菊之丞の雪女』

さらに勝川春章の『初世中村歌右衛門の板額御前と五世市川団十郎のあさりの与一』や、北尾重政の無款作品『品川君姿八景』など、丸屋小兵衛の店舗での刊行物は多岐にわたり、多くの人々に親しまれました。

影響とその後

丸屋小兵衛の商売は後に蔦屋重三郎に引き継がれ、彼は天明3年9月にその跡地に移転しました。このように、丸屋小兵衛が築いた基盤は、後の浮世絵文化にも多大な影響を及ぼしたと言えるでしょう。彼の作品は現在も評価されており、浮世絵コレクターや研究者にとって重要な資料となっています。

参考文献

• - 日本浮世絵協会編『原色浮世絵大百科事典』第3巻 大修館書店、1982年
• - 吉田漱『浮世絵の基礎知識』雄山閣、1987年
• - 小林忠 大久保純一『浮世絵の鑑賞基礎知識』至文堂、1994年

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