九条良輔

九条良輔

九条良輔（くじょう よしすけ）は、鎌倉時代前期に活躍した公卿です。関白・九条兼実の四男として生まれ、八条という号を持ちました。最終的な官位は従一位・左大臣にまで昇りつめました。

経歴

母が八条院暲子内親王に仕えていた縁から、幼少の頃より八条院の猶子となりました。建久5年（1194年）に元服し、正五位下に叙せられて官吏としての道を歩み始めます。侍従、右近衛少将、右近衛中将といった役職を経て、正治2年（1200年）には従三位に叙せられ、公卿の仲間入りを果たしました。

その後も順調に昇進を重ね、建仁3年（1203年）に権中納言、元久2年（1205年）には正二位・権大納言となります。長兄の良通、次兄で摂政であった良経が相次いで亡くなったため、庶子であったにも関わらず、九条家における中心的な存在となっていきます。承元2年（1208年）には内大臣、承元3年（1209年）には右大臣、建暦元年（1211年）には左大臣へと昇進し、嫡流であった甥の道家を凌ぐほどの勢いを見せましたが、疱瘡により34歳という若さで急逝しました。跡継ぎとして、道家の実弟である教家を養子に迎えました。

人物

九条良輔は学問を非常に愛好した人物として知られています。菅原為長らに儒学を学び、病床にあっても経書や史書を手放さなかったと言われています。大叔父である慈円からは、「漢才古今に比類なし」「日本国古今たぐひなき学生」と称賛されるほどでした。

樋口健太郎は、九条兼実の『玉葉』における良輔の生母に関する記述から、兼実にとって彼女はあくまで政治的な交渉相手であり、妻妾とする考えはなかったと指摘しています。兼実から見れば、ライバル関係にある女性が生んだ男子の扱いに困り、八条院の猶子として出家させることを考えていたものの、既に猶子であった二条天皇や以仁王を亡くしていた八条院が、彼を貴族として立身させることを望んだとされています。実際に、権大納言であった良輔が徳大寺公継と右大将の地位を争って敗れた後、八条院が後鳥羽天皇に抗議したことで、代わりに内大臣に任ぜられたという逸話が残っています（『明月記』承元2年5月30日条）。

このような経緯から、八条院は良輔の子孫に九条家とは別に一流を立てさせ、自身の没後の所領や仏事の一端を担わせることを考えていたのではないかと推測されています。樋口はこれらの見解に基づき、良輔は厳密には「九条家の一員」とは言い難く、「八条良輔」と表記するのが適切であるという見解を示しています。

官歴

正治3年（1200年）10月26日：従三位
承元3年（1209年）：右大臣
建暦元年（1211年）：左大臣

系譜

父：九条兼実
母：八条院女房三位局 - 高階盛章の娘
妻：坊門信清の娘
妻：藤原経家の娘
男子：良瑜
妻：玄季の娘
男子：道宝（1214-1281）
* 養子：九条教家（1194-1255） - 九条良経の次男

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