事力

事力の概要

事力（じりき/じりょく）とは、律令制度における日本の大宰府や地方官庁（国衙）に属する官人の補助役として指定された正丁のことを指します。この役職は、官人が職分田と呼ばれる田畑から得る収入の管理や労働を代わりに行う者たちで構成されています。

官人と職分田

大宰府や国衙の官人には、職分田（職田や公廨田）が支給され、彼らの給与はこの田畑からの収入によって成り立っていました。ただし、これらの官人が直接田を耕作することはなく、業務を効率的に行うために事力が雇われていました。事力の数は、官人の地位によって異なり、例えば、大宰帥の場合20名、大国国守の場合は8名が通常の配置人数でした。最も少ない事力を持つのは、大宰府および諸国の史生で、2名程度です。このように、事力はその役割に応じて数が定められたのです。

厳格な制度

690年代の和銅元年（708年）には新たに設けられた傔仗にも事力が支給され、779年には国博士や国医師も事力の権限を持つようになりました。また、759年以後は鎮守府の官人にも事力が与えられるようになりました。この制度は、職分田の耕作に基づいて人員が割り当てられ、職分田が存在しない場合には事力もないという規定が設けられていました。例えば、志摩国には職分田が存在しなかったため、事力も置かれませんでした。さらに、任命を受けても長期間現地に赴かない国司に対しても、特別な理由がない限りは職分田と事力が与えられませんでした。

賦役令とその影響

軍防令によれば、事力は上等戸に属する正丁の者から選ばれ、交替制で1年ごとに更新され、その間は庸が免除されるという仕組みがありました。しかし、賦役令では事力期間中も課役が免除されるという記述があり、制度の間には矛盾点も見受けられました。このような事力の義務は職分田の耕作のみならず、多種多様な命令に従事していたため、その負担は非常に重いものでした。

事力制度の改革と変遷

律令法では、事力の者が官人に金品を支払って労働を免れる行為は禁じられていましたが、実際には多くの例が存在しました。これを受けて、朝廷は事力制度の改善に乗り出し、709年には大宰府の事力を一律半減し、代わりに綿を支給する方針が打ち出されました。しかし、供給の問題からわずか7年後には元の制度に戻りました。その後も、797年には畿内の職分田と事力の廃止が決定されましたが、数年内に再設置されました。

823年には事力の補助要員として副丁が導入され、833年には事力の免除が雑徭として扱われるようになり、断続的に各地で実施されていきました。868年には副丁を増員するなどの施策がとられましたが、これらの取り組みでも状況は改善されず、10世紀になると事力制度は十分に機能しないか、雑徭制度に吸収される道を辿ることになります。

事力の人数

事力の人数は、軍防令およびその後の法令によって以下のように定められていました。

• - 20名: 大宰府…帥
• - 14名: 大宰府…大弐
• - 10名: 大宰府…少弐
• - 8名: 国衙…大国守、鎮守府…将軍
• - 7名: 国衙…上国守・大国介
• - 6名: 大宰府…大監・少監・大判事、国衙…中国守・上国介
• - 5名: 大宰府…大工・少判事・大典・防人正・主神・博士
• - 4名: 大宰府…少典・陰陽師・医師・少工・算師・主船・主厨・防人佐
• - 3名: 大宰府…諸令史、国衙…中国目・下国目
• - 2名: 大宰府…史生、国衙…史生・傔仗・博士・医師

このように、事力制度は日本古代の政権運営において重要な役割を果たしていましたが、次第にその存在意義が薄れ、最終的には制度としては消滅していったのです。

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