二本松氏

二本松氏：奥州に興亡した戦国大名

二本松氏は、陸奥国安達郡二本松城を拠点とした戦国大名で、二本松畠山氏、奥州畠山氏とも呼ばれます。清和源氏の流れを汲む足利氏の支流で、室町幕府の三管領の一つである畠山金吾家の兄系にあたります。元々は畠山氏の嫡流筋でした。

勃興と衰退

1345年、畠山高国と吉良貞家が奥州管領に任ぜられ陸奥国に入ります。しかし、観応の擾乱が勃発すると、直義派の吉良貞家と尊氏派の高国・国氏父子が対立し、高国父子が敗死。畠山一族の多くも討ち死にする中、国氏の子・二本松国詮は安達郡二本松に逃れて奥州管領を自称し、南朝方の北畠顕信と手を組み一時国府を奪回しますが、貞家の反撃に遭い再び奪い返されます。

その後、前奥州総大将石塔義房の子・義憲も奥州管領を自称し、中央から派遣された斯波家兼も加わり、四人の奥州管領が争う事態となります。最終的に斯波氏が勝利し、高国系畠山氏の勢力は衰退しました。奥州では格式面で厚遇を受け、名字は畠山のままでしたが、二本松城を拠点とした国詮の子・満泰は、中央においては奥州在地の一国人として扱われるようになります。1460年の足利義政御内書では「二本松七郎」とされており、1514年成立の『余目氏旧記』にも「二本松殿」と記されていることから、この頃に苗字を二本松としたと考えられます。

戦国時代に入っても二本松氏は勢力を盛り返すことはできず、周囲の伊達氏や蘆名氏などの有力な国人に圧迫されます。10代当主・義国の頃には、古記録に「二本松畠山家、次第に衰微して、ようやく安達半郡、安積半郡を知行せられ、この節、会津の蘆名盛氏の武威輝かしかば、彼の風下にぞ属せられける」と記されるほど衰退していました。

滅亡とその後

1585年、義国の子・義継は伊達輝宗拉致事件（粟之巣の変事）を起こし、伊達政宗に殺害されます。翌年、二本松城は無血開城し、二本松氏の嫡流は滅亡しました。義継の子・義綱は蘆名氏を頼りましたが、蘆名氏が政宗に滅ぼされた際に、蘆名義広に同行して佐竹氏の下に逃れた後、義広に殺害されました。義綱には遺児がいたとされますが詳細は不明です。

一方、義綱の弟・義孝は会津に逃れ、子孫は水野忠善流の水野家に仕えました。また、二本松氏は4代満泰以来、時宗に深く帰依しており、5人の遊行上人を輩出しています。

二本松氏歴代当主

畠山高国
畠山国氏
二本松国詮
二本松満泰
二本松持重
二本松政国
二本松村国
二本松家泰
二本松義氏
二本松義国
二本松義継
二本松義綱

※当主の諱および代数は『山口道斎物語』所載「本系図」による

血統的には畠山氏の嫡流にあたるため、畠山氏初代の義純から泰国・時国の3人までを二本松畠山氏の歴代に含める場合もあります。

一門・家臣団

新城村尚（盛継）
新城直継（家昌・国常）
新城信常（家国・盛継）
本宮宗頼
本宮直頼
高玉常頼
鹿子田国胤
鹿子田継胤
遊佐重勝
小国義操
小田辺勝成
石川実光
畠山満重 - 右京亮、義綱の子？
二本松義孝 - 国次、義綱の弟。水野氏家老二本松氏初代。

庶流

二本松氏の庶流には、本宮（大井田）氏・鹿子田（杉田）氏・新城（椚山）氏・高倉氏・高玉氏・早川氏・水野家家老二本松氏などがあります。

本宮氏

4代国詮の子・満国が本宮城によって本宮氏を称しました。戦国時代の当主・本宮宗頼は、天文の乱で伊達晴宗方につき、伊達稙宗方についた宗家と対立して討たれました。宗頼の子・直頼は岩城氏の下に逃れて返り咲きを狙いましたが、直頼の子・頼重は伊達政宗に仕えて仙台藩士となり、準一家の家格を与えられました（後に改易）。

高倉氏

5代満泰の長男・満盛の遺児・政泰が、安積郡高倉城によって高倉氏を称しました。高倉氏は江戸時代には弘前藩士となり、代々家老職を務めました。10代藩主・津軽信順を死をもって諫めた高倉盛隆が知られています。

高倉氏歴代当主

高倉政泰
高倉満国
高倉実詮
高倉晴賢
高倉氏詮
高倉盛次
高倉為盛
高倉盛保
高倉直盛
高倉盛任
高倉盛宥
高倉盛有
高倉盛之
高倉盛隆
高倉盛儀
高倉盛徳
高倉盛治
高倉盛古
高倉盛秀

水野家家老二本松氏

1589年に12代義綱が蘆名義広に殺害された際、その弟・義孝は会津に逃れました。義孝は上杉景勝・蒲生秀行・加藤嘉明ら歴代の会津領主の客分を経て、1648年に徳川氏譜代の岡崎藩主・水野忠善に仕えました。以後、二本松氏は水野家の重臣となり、家老格八家の一つに数えられるに至りました。6代義廉は藩財政の再建および藩校・経誼館の設立に尽力しましたが、後に水野忠邦を諫めるため自害しています。義廉は遠祖・二本氏の供養を行っており、1808年に義廉が寄贈した畠山義国（二本松義国）の位牌が二本松市より文化財指定を受けています。二本松氏は岡崎・唐津・浜松・山形と水野家の転封に従って居を移し、大正時代の当主が医学を修めて山形に病院を開設し、今日に至っています。

水野家家老二本松氏歴代当主

二本松義孝
二本松義張
二本松義陳
二本松義知
二本松義元
二本松義廉
二本松義綏
二本松義方
二本松義達

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