井口貞夫

井口 貞夫（いぐち さだお）

井口貞夫は、日本の外交官として特に知られ、外務事務次官や在アメリカ合衆国特命全権大使を歴任しました。1899年10月18日に和歌山県で生まれ、1980年5月27日に亡くなるまで、彼の生涯は日本の外交通史において重要な足跡を残しました。1969年に勲一等瑞宝章を受章し、1980年には正三位に叙されるなど、その功績が評価されました。

学歴と外交官としてのキャリア

井口は旧制の徳義中学校、続いて和歌山中学校を経て、東京商科大学に入学します。1921年に高等試験の外交科試験に合格し、翌年には大学を中退後、外務省に入省しました。彼の入省同期には、田尻愛義、安東義良、西村熊雄などの著名な外交官たちが名を連ねています。

彼はオックスフォード大学に留学した後、1940年にはアメリカ合衆国日本大使館の一等書記官に就任し、その後は参事官などの役職を担いました。しかし、1942年に太平洋戦争が勃発し、彼は交換船で日本に帰国します。戦後は、情報局での業務を経て、1945年には終戦連絡中央事務局の総務部長となり、翌年から1949年にかけて公職追放の措置を受けます。

1951年には外務事務次官に任命され、その後初代在カナダ特命全権大使を経て、1954年から1956年にかけて在アメリカ合衆国特命全権大使を務めました。退官後も、日本電波塔副社長や在中華民国特命全権大使などを歴任し、1973年には日本台湾交流協会の設立に関与しました。彼の墓所は横浜外国人墓地にあります。

「帝国政府ノ対米通牒覚書」遅延問題

戦後、井口が駐米大使館で務めていた当時、外務省から発信された「帝国政府ノ対米通牒覚書」の翻訳と提出が遅れたという指摘があり、これが大きな問題となりました。この件において、彼が館務統括者としての責任を問われることになりました。

この遅延は、駐米大使館の怠慢によるものであるとされ、本省との関係が注目されました。井口の子である井口武夫は父親が在任していたワシントンの日本大使館には問題がなく、その責任は本省および軍部にあると主張しています。

家族とその影響

井口の妻は外交官であった芳沢謙吉の娘であり、彼女の父親は五・一五事件に関与して暗殺された犬養毅の娘婿でもあります。井口はこのように、歴史的にも重要な家族関係に結びついています。息子の井口武夫は外務省官房審議官や駐ニュージーランド大使を務めた後、大学教授としても活躍しています。また、井口の孫である治夫は名古屋大学で近代日本政治外交史を教えています。

彼の家族の中には、外交や教育の分野で優れた業績を残す者が多数おり、これらの背景からも井口の影響力やその生涯の重要性が伺えます。

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