交響曲第3番 (コープランド)

アーロン・コープランドの《交響曲 第3番》は、作曲家が生涯で最後に完成させた交響曲です。第二次世界大戦の終盤にあたる1944年に作曲が開始され、戦後の1946年に完成しました。この作品は時代の空気を反映して強い愛国的な性格を持ち、著名な指揮者セルゲイ・クーセヴィツキーの亡き妻、ナターリヤに献呈されました。

音楽的背景と特徴

コープランドは戦間期に、《アパラチアの春》のような素朴で抒情的な音楽、《ロデオ》や《ビリー・ザ・キッド》に見られる開拓時代の活気、《エル・サロン・メヒコ》のようなラテン・アメリカ音楽のリズム感など、「音楽版アメリカニズム」と称される独自の作曲様式を築き上げました。この交響曲では、そうした多様なスタイルを純粋な器楽形式である交響曲の中に統合し、広大なアメリカの風景や精神性を壮大に描き出しています。特に作品の象徴となっているのが、彼の独立した吹奏楽作品《庶民のためのファンファーレ》が終楽章の序奏で引用されている点です。このファンファーレは作品全体において重要な主題として扱われます。

初演と評価

作品の初演は、献呈先であるクーセヴィツキーが指揮するボストン交響楽団によって、1948年10月にボストンで行われました。その後のニューヨークでの演奏会で評価を確立し、現在ではコープランドの最も重要な管弦楽作品の一つとして認識されています。

楽器編成

この交響曲は3管編成を基本とした大規模なオーケストラのために書かれています。管楽器はフルート（ピッコロ持ち替え含む）、ピッコロ、オーボエ、イングリッシュホルン、クラリネット、バスクラリネット、ファゴット、コントラファゴットがそれぞれ充実した数で用いられます。金管楽器もホルン4、トランペット4、トロンボーン3、テューバと手厚く、ティンパニ4個に加え、大太鼓、小太鼓、様々なシンバル、ウッドブロック、クラベス、シロフォン、グロッケンシュピール、チューブラー・ベルズ、かなとこなど、多岐にわたる打楽器群が効果的に使われます。さらにハープ2台、チェレスタ、ピアノも加わります。これらの編成は、マーラーやリヒャルト・シュトラウスといった後期ロマン派の大規模なオーケストラを想起させ、特にフィナーレにおける祝祭的で壮麗な響きに貢献しています。

演奏時間

全曲の演奏時間は約45分です。各楽章の目安時間は、第1楽章約11分、第2楽章約9分、第3楽章約11分、第4楽章約13分とされています。

楽曲構成

楽曲は伝統的な4楽章構成ですが、それぞれの楽章は比較的自由に構成されており、特に奇数楽章では厳格な楽式を追うことが容易でない部分もあります。全体としては「緩－急－緩－急」という速度の対比による構成をとっています。

• - 第1楽章: ホ長調。穏やかな木管楽器の主題で静かに始まり、オーケストラ全体による発展を経て、金管のファンファーレ（《庶民のためのファンファーレ》を思わせる）で力強い頂点を迎えます。平和な雰囲気で閉じられますが、ティンパニの一撃で断ち切られ、第2楽章へ直接移行します。
• - 第2楽章: ハ長調。荒々しいスケルツォで、プロコフィエフの打楽器法に影響されたともいわれる騒々しい主題が特徴です。対照的に穏やかな中間部を持ちますが、最終的には弾けるような喜びの中で楽章を終えます。
• - 第3楽章: ゆっくりと瞑想的な雰囲気。コープランド特有の薄く曖昧な響きが見られます。やがて、どこかラテン・アメリカ風のリズムとエネルギーを持つ、はじけるような舞曲部分へと変化します。
• - 第4楽章: 第3楽章から切れ目なく続きます。序奏で、それまで断片的に現れていた《庶民のためのファンファーレ》が、 сначала 素朴に、やがて輝かしい響きで登場します。ファンファーレの力強い終結に続き、木管による賑やかな主部が開始され、弦楽器のフガート風の動きなどが展開されます。ファンファーレが再び現れ、新たな主題を導くなど、多様な要素が組み合わされています。ロンド・ソナタ形式と見なすこともできますが、大部分はファンファーレ主題の壮大な展開に費やされ、全曲のクライマックスを形成します。

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