交響曲第4番 (スクリャービン)

交響曲第4番『法悦の詩』作品54

アレクサンドル・スクリャービンが1905年から1908年にかけて作曲した交響曲第4番『法悦の詩』（フランス語: Le Poème de l'extase、英語: The Poem of Ecstasy）作品54は、彼の後期を代表する重要な作品です。この作品は、スクリャービンが神秘主義に傾倒していた時期に書かれ、神智学協会との関わりも深かったとされています。しばしば、スクリャービン自身が本作を『交響曲第4番』と呼んでいたことから、交響曲として扱われていますが、その音楽的性質から交響詩としての側面も持ち合わせており、現在では両方のジャンルで語られます。

概要

邦題の「法悦の詩」は英語タイトルを翻訳したものですが、「法悦」という言葉はやや意訳であり、原語の「エクスタシー」として解釈するのが一般的です。この「エクスタシー」という言葉には、性的な絶頂や宗教的な喜びといった多様な解釈が含まれており、作品の多面的な魅力を表しています。

初演前、スクリャービンが本作をリムスキー＝コルサコフにピアノで披露した際、リムスキー＝コルサコフは作品の主題性から「卑猥だ」と酷評したという逸話も残っています。初演は1908年12月10日、モデスト・アルトシュラー指揮、ロシア国立交響楽団によってニューヨークで行われました。当初はサンクトペテルブルクでの開催が予定されていましたが、リハーサルが難航したため延期されました。

楽器編成

本作は、大規模なオーケストラ編成が用いられています。具体的には、ピッコロ1、フルート3、オーボエ3、イングリッシュホルン1、クラリネット（B♭管）3、バスクラリネット1、ファゴット3、ホルン8、トランペット5、トロンボーン3、バスチューバ1、ティンパニ、トライアングル、シンバル、バスドラム、タムタム、鐘、グロッケンシュピール、チェレスタ、ハープ2、オルガン（またはハーモニウム）、そして弦五部（第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）です。

曲の構成

単一楽章構成で、拡張されたソナタ形式を採用しています。調性は便宜的に「ハ長調」と表記されることもありますが、明確な調性を持たない点が特徴です。その代わりに、スクリャービンが神秘主義に傾倒して以降の作品で多用する「神秘和音」が重要な役割を果たしています。演奏時間はおよそ20分です。

楽曲は、弦楽器のトレモロと木管楽器によって始まり、フルートが憂鬱な主題を提示します。この主題は、独奏ヴァイオリンやピッコロへと引き継がれ、やがてクラリネットによってゆったりとした旋律が奏でられるなど、序奏が展開されます。主部に入ると、フルートが序奏で使われた2つの動機をモチーフとした主題を提示します。その後、音楽は大きくうねるように盛り上がり、金管楽器のトランペットが頂点を幾度となく繰り返します。

関連事項

神原泰の油彩画『スクリアビンの『エクスタシーの詩』に題す』（1922年）は、本作をテーマとしており、東京国立近代美術館に所蔵されています。

参考文献

菅野浩和『最新名曲解説全集3 交響曲II』音楽之友社、1979年
属啓成『名曲事典』音楽之友社、1981年

外部リンク

* 法悦の詩（交響曲第4番）作品54の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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